退職勧奨の際のやり取りでいわゆる売り言葉に買い言葉になり,その中で相手側が退職するといったとしても,これで当然に合意が成立したといえない可能性があります。合意の意思が確定的といえるかは慎重に判断される傾向があります。
解雇と評価される勤務継続は今後難しいという話がなされている流れでは,一応応じる態度を見せても確定的な同意とはされにくい可能性があります。また,退職届を記入して提出したということは確定的に退職の意思を示したことの現れの一つにはなりますが,その前に強く退職を要求する行為があり,その録音や記録がある場合には,これで十分合意をしたとは言いにくいという可能性もあります。
仮に従業員が同意をしたというのであれば,意思確認を行ったうえで(これは勧奨をしたのとは別の方がいいでしょう)退職届出に署名としてもらう方が真意といいやすくなります。何かしらの給付が存在すれば真に合意をしたといいやすくはなります。
口頭でのやり取りは記録に残りにくいので,議事録その他で記録にしておいた方がいいでしょう。退職に消極的な相手ほどトラブルになる可能性もありえますから,どういう相手にどういったタイミングで対応をしていくかはよく考えておく必要があります。
さらに退職勧奨の場面では,拒否をはっきり示しているのに侮辱行為を受けた・スキルに比べて過小な仕事しかさせもらえない等の理由(パワーハラスメント)から慰謝料の請求をされることもありえますので注意が必要です。