介護サービスや福祉サービスは,要介護度その他利用している方の氏名や住所・病歴・健康状況などが載せられている可能性があります。個人を識別させる情報は「個人情報」とされ,利用目的や第三者の開示について法律で規制されています。居宅介護事業所の個人情報の取り扱いについては、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を参考にするとよいでしょう。
特に,個人の病歴や犯罪情報等を記載した情報は「要配慮情報」と呼ばれ,第三者への開示などについてかなりの規制を受けています。過去病気になった経歴,健康診断の結果・発達障害や精神障害・身体障害などの記載があるものが該当するとされています。注意点は,単に介護や処遇をした記録であれば該当しないという点です。もちろん,ここでいう「要配慮情報」とそうではない個人情報が交じり合うという形は想定されるので,取り扱いに十分注意が必要になってきます。
個人情報や要配慮情報の開示ルールについては法令で定められていますが,たとえ家族であっても法令の扱いでは「第三者」となります。そのため,利用者ご本人からの開示請求でないので,法令上の要件を満たす必要があります。
① 警察や裁判所・弁護士会から照会がある場合
② 利用者ご本人の生命や身体に関する必要がある場合でご本人の同意を得ることが困難である場合
が大きなものです。
このほか官公署からの照会(①も含まれます)や児童虐待防止などの必要がある場合もあります。①は,弁護士に依頼をしての照会の場合や民事裁判での裁判所からの照会の場合も含みますが,通常は今回触れるように事前の照会への対応をどうするのかという点が問題になるものと思われます。②は治療などのために必要だけれどもご本人の同意を得られない場合などです。
特にトラブルになりかねない場面では情報開示は必要なものの,開示自体でトラブルにならないように注意をする必要があります。介護などの契約の場面で署名代理のみで認知症の可能性が極めて高い方でも契約をご本人が行った形になっているケースもありますが,場合によっては後で大きなトラブルになる可能性もあります。
場合によっては市町村や地域包括支援センターなどの機関と相談しながら連携を取ることもすべきでしょう。