従業員が利用者の訪問介護従事中に、誤って利用者宅の物を壊してしまう、ということが起こり得ます。この場合、従業員は業務を行っているときに利用者に損害を生じることをしていますので、訪問介護サービスを提供している会社がサービス利用者の方に対して損害賠償責任を負うことになります。
会社が賠償責任を果たしたかどうかによらず、粗相をした従業員に対して損害賠償額相当の支払いを求めるにあたり、給与から差し引きをすると、法律上賃金の全額払いの原則に反するため、当然には出来ません。もっとも、従業員の同意を得て行う場合であれば、控除について従業員の自由な意思で行ったと認められる合理的な理由が客観的にあれば、可能とされています。そのため、賠償額について事業者と従業員で話し合い、負担割合を決め、月当たりでいくらなら支払えるか合意して行うのであれば出来るということになります。
なお、この場合でも、合意が出来た段階で、従業員代表との間で差し引きに関する労使協定を結んでおく必要があります。