法律のいろは

2018年1月8日 更新損害賠償請求のご相談

従業員からの突然の退職申し入れに対して,損害賠償請求はできるのでしょうか(裁判例紹介)?

従業員からの退職申し入れに関する法律の定め

 人手不足が言われている昨今,突然に従業員からの退職したいとの申し出がなされれば,会社にとってのダメージは大きいのではないかと思われます。就業規則がある場合には,そこで定めているという「安心感」があるかもしれません。今回は,こう言った点についての法律の定めと就業規則に規定は置いていたもののその有効性が問題になった最近の裁判例について触れていきます。

 

 まず,法律では民法という法律に定めが置かれています。それによると,雇用期間の定めがない場合には退職日の14日前が原則であること・雇用期間の定めがある場合には,やむを得ない事情がない限り,途中での退職申し出はできないとさだめられています。期間の定めがない場合でも,月給制(欠勤控除など無し)の場合には例外的に退職日の前月の前半に申し入れる必要がある・年棒制の場合も例外とされています。

 

 会社からの退職を一方的にさせる意思表示(解雇)については,労働基準法という法律で期間について別に定められていて一定の強制的な意味合いをもっていますが,従業員側からの申し入れについては特に決まりが別にはありません。

突然の退職に損害賠償を求められるのか?

 裁判例の中には,先ほどの14日の期間を置くことなく突然に退職したいとの申し出がなされたケースについて,従業員側に損害賠償責任を認めた裁判例があります。ただし,会社側が違約金を定めることは雇用関係では法律上できませんので,損害が生じたことと金額の立証が必要になります。

 

 それでは,就業規則でうえで触れた民法の期間よりも長く定めているにもかかわらず,従業員が民法の基準はクリアしている期間での退職を申し出てきた場合はどうなるのでしょうか?最近の裁判例でそういったてんを判断したものがありますので,紹介しておきます。

 

 問題となったケースでは,エステ事業などを行う会社を退職した従業員に対して,会社側が就業規則で定めた3か月の期間よりも短い期間で退職したことで被った損害等を理由に損害賠償請求をしたものです。就業規則の規定が有効であれば,退職申し出から3か月間は就労する義務がありますから,退職ということで年次有給休暇を用いでもしない限りは欠勤ということになります。

 このケースでは,就業規則の3か月という規定の有効性の他に,別途その従業員の方と会社側で「○月○日」まで勤務するという合意をしたものの,その後に「○月○日」よりも前に退職の申し出を従業員側からしても問題はないかという点も問題になりました。

 

 裁判所の判断として,法律上民法の定めを一部強制的に修正している労働基準法という法律では,会社側からの違約金などを制限して従業員側の雇用契約からの離脱を保障するとともに,雇用期間についての修正は会社からの解雇の際に延長を一部儲けているのみであることを理由として,会社側の都合に応じた民法上の期間の延長ができないと判断をしています。

 この考え方に立った場合には就業規則で退職申し出期間を延ばしても無効ということになります。もっとも,この判断は最高裁などで固まったものではありませんが,こうした判断が出るリスクがあること自体は頭に置いておいた方がいいように思われます。

 

 

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