名誉棄損に当たるのか・その他業務妨害などにあたるのかを見極める
事実に反したクレームその他誹謗中傷がインターネット上に書き込まれている場合に,反論を行う以外に法的な対応その他が取れるかどうかを考える際に,問題となるのは名誉棄損・その他業務妨害行為に当たるかどうかを考えることになります。まずは,考えることが多いかもしれない「名誉棄損」は誹謗中傷にあたるのではないかと思うことがあっても,そう簡単に認められるわけではありません。具体t的な事実を示していること・その事実が一般的にみて社会的な評価を下げるような内容である必要があります。面倒なのは,意見や論評は表現の自由の観点から高いハードルが設けられているところです。
クレームなどはどこまで社会的評価を下げるような事実なのか・一定の根拠のある相応な話であれば,なかなか名誉棄損にはなりにくいです。また,欺く方法等で業務を妨害したとも言いにくくなります。ただ,クレームの程度が度を過ぎており,根拠も乏しい,事実に反する内容で信用等を下げるといえる内容ならば,不法行為になりえますが,その線引きは簡単ではありません。
主に問題になるのは,口コミサイトその他への不当な内容の書き込みになりますが,これらの媒体の書き込みの場合には多くの方が閲覧する可能性が高く,実害を含めて影響が大きなこと・その閲覧者がどう見るかを一般的な視点から見るので,ご自身が把握している内容以外の事項で考える必要があります。
民事的な削除や賠償請求のほかに,刑事告訴も考えられますが,刑法上の名誉棄損罪は侮辱罪と異なり,具体的な事実の摘示がされている必要がありますので,どこまでそうした部分といえるかはハードルが出てくることも考えておかないといけません。
投稿の削除を求める
対応には,まずは不当な内容の削除を求める(そのことで,書かれた内容を見られないようにする)ことが考えられます。これには,サイト運営者に対して削除を求める・裁判での手続きで実現を図るという方法があります。後者は時間がかかる可能性もあり(仮処分という緊急で行う手続きがあります),弁護士などの費用がかかる形になります。
前者の場合には,運営事業者に対し,名誉棄損・その他知的財産権の侵害(著作権その他)に該当する事実(投稿内容)とその根拠を求め,削除などの対応を求めることになります。その後は,運営事業者の判断と対応次第になる(言い換えると,確実に削除になると限りません),迅速にかつ費用をかけずに対応をできる可能性があります。LINE・Instagram等で,不適切な投稿を報告することでの対応になりますが,らちが明かない場合には,前記の裁判所を使っての対応(急ぎの場合には仮処分手続きを活用)することを考えます。
ちなみに,裁判手続きで行う場合にサイト運営事業者が日本に本社がない場合には東京地方裁判所に対して申立てを行う必要があります。
発信者情報の開示とはどういった手続きでしょうか。
発信者情報の開示とは,インターネット上の投稿は誰が投稿したかはっきりしないため,それが誰かを特定するために行う手続きです。特に賠償請求をする場合には誰かを特定する必要があるので,必要な手続きになります。
発信者情報の開示請求は数年前に法改正されましたが,改正後もそのハードルは相当に高い点は変わっていません。そのハードルの高さは,名誉棄損などがあったことが明らかであることがハードルに設定されているため,先ほど触れた微妙な内容の投稿ではクリアできない可能性があることや,免責事由がないこと(真実ではないこと・そう信じるだけの理由もない,公共の利害に関する事項でない等)も明白であることを示す必要があるためです。
また,開示を求める目的(対象)は基本はアクセスした時点でのIPアドレス等の開示を求めることになりますが,その保管期間はかなり短めです。そのため急ぐ必要もありますし,証拠の保全やどのアカウントのどの投稿なのかをはっきりさせておくために,問題となる投稿内容は印刷やスクリーンショット・その他の方法で保全をしておく必要があります。ちなみに,こちらも関連会社が日本法人がいても実際には外国法人が運営しているサービスであることもあり,この場合には東京地方裁判所への申立てが必要になります。
さらには,発信者情報の開示請求はケースによっては,複数回行うことが必要になる場合も多分にありえます。費用その他もかかるところですので,削除が通報や交渉で解決する場合・裁判所を使って解決した場合に,どこまで行うかはよく考えておく必要があるでしょう。