法律のいろは

2020年12月24日 更新損害賠償請求のご相談

貸しているアパートで借主が孤独死していた場合に,遺族に賠償請求は可能?

賠償請求の根拠は?

 結論から言えば,孤独死をしたケースでその後ご遺体がしばらくそのままであったことによる貸家への損傷その他特に掃除が必要になった費用については遺族に請求を請求ができる場合があります。人が亡くなったことによる減収(いわゆる事故物件扱い)についても,亡くなった方が持病などによりなくなる可能性を認識できたようなケース(いわゆる突然死のようなものではない場合)や自殺のようなケースでは,義務違反が肯定できる場合があります。ただし,亡くなったこと自体による減収はすべての場合で部屋の管理義務などの義務違反を根拠に請求ができるわけではないので,経緯などをよく吟味しておく必要があるでしょう。

 

 孤独死のケースでは,亡くなってからしばらく亡くなったことが確認できないために,部屋の汚損などが進む(そのため特殊清掃が必要になることもある)ことがありえます。賃貸借契約(有償のもの)については,無料で貸す使用貸借契約とは異なり,借りている方の死亡によって部屋を貸す契約は終了しません。とはいえ,孤独死の後には部屋の遺族による利用は考えにくいので契約解除などによって契約が終了するケースが多いと思われます。

 契約終了時には,借主は契約に基づき原状回復義務(通常の自然劣化を除き借りて利用を始める時点の状況に戻す)を負います。部屋の汚損が生じた場合にそれを除去するのは原状回復義務の内容で,借りた方の相続人が負うか・保証人の方が負う形になります。自ら清掃をしないのが普通ですから,通常はかかった費用その他の損害についてのお金の支払いという形での解決が多くなるでしょう。ここでの損害はケースによっては亡くなったことの減収という話と重なる(汚損などが特に大きな場合)こともありえます。

 

 賃借人の相続人については相続放棄を行うことによりこうした現状回復義務を逃れることができます。葬儀費用その他を亡くなった借主の口座から引き出すなどしている場合には相続放棄ができないこともありえます。いわゆる孤独死の場合には遠縁の親戚(音信不通の兄弟や甥・姪等)といった相続人にはなる親族がいるかもしれません。実際に対応を求めるにしても戸籍関係の調査(こちらはご本人など以外には,法令上,正当な依頼を受けた専門士業がその依頼の範囲でかつ正当な目的以外で取り寄せることは難しいです)が必要になります。費用がかかる点や連絡を受けた遠縁の親戚が相続放棄(あるいは相続人にもならないから支払わないという回答)をする可能性も念頭に置いておく必要があるでしょう。この場合には荷物の撤去をだれの了解もなく勝手に行っていいのかという問題も出てきます。

 民法改正による保証人を売るための手続きの厳格化もあり今後は家賃保証会社に保証人を依頼することが多くなるように思われますが,以前からの賃貸物件の場合個人の方に保証人を依頼していることも多いかと存じます。こうしたケースでは保証人に支払い能力がないと大家の方が結局自らの費用負担として対応せざるを得ないという場合も出てくるかもしれません。こちらは前記の孤独死の場合にも当てはまります。

 

請求できる範囲は?

 請求できる費用としては,清掃などにかかった費用や清掃でとりきれないものがある場合の損失・清掃までに特に時間がかかり他の方に賃貸できなかったことによる損失といったものが考えられます。どこまでなのかはケースごとの部屋の汚損状況によりますが,亡くなった方の遺体発見までに時間がかかる部屋の汚損その他の状況が進んでいる(臭いその他の問題も発生している場合にはその対応なども含む)場合には費用などは大きくなる可能性があります。

 

 損失については当然に認められるわけではなく,他の方への賃貸機会については,通常賃貸借契約が終了し退去や清掃・次の方へ貸すということになるとそれなりの時間がかかります。この話と比べて特に損失が生じたといえる必要があります。また,金額についても汚損の程度や状況が判明し清掃がなされるまでの期間に応じて,その程度が大きくその後の賃貸に影響があるといえる事情があって初めて請求が認められること・確実に特に賃貸できるまでの期間が延びたといえる事情やその後の割引部分とその期間を根拠づける点をきちんとする必要があります。

 ここは因果関係や損害の範囲と呼ばれる部分ですが,請求が特に大きな場合には折り合いが難しく裁判に至ることもありえるでしょう。裁判での解決の場合には先ほどの根拠がはっきりしていることとその証拠が必要となります。

お電話でのお問い合わせ

082-569-7525

082-569-7525(クリックで発信)

電話受付 9:00〜18:00 日曜祝日休

  • オンライン・電話相談可能
  • 夜間・休日相談対応可能
  • 出張相談可能

メールでのお問い合わせ

勁草法律事務所 弁護士

早くから弁護士のサポートを得ることで解決できることがたくさんあります。
後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。

初回の打ち合わせは、有料です。
責任をもって、担当者が真剣にお話をきかせていただきます。
初回打ち合わせの目安:30分 5,500円(税込)