法律のいろは

2020年5月22日 更新損害賠償請求のご相談

どういった場合が名誉棄損に該当するのでしょうか?

はじめに

 SEOのみならず,インターネット上の検索時の地図表示を問題とするMEO対策や口コミサイトの重要性が集客について言われています。グーグルマイビジネスといったどの業種でも使う口コミサイトに加え,食べログなど業種ごとのターゲットがいる口コミサイトが存在します。
 そこでは肯定的な意見もあれば批判的な意見もあるところではありますが,中には実際以上に劣悪なサービスであった等の放っておけるかどうかが問題になる書き込みがされることがあります。

 内容の修正を求める・削除や訂正を求める等の行動を行うには,法律でいう「名誉棄損」に該当する必要があります。それでは,「名誉棄損」とはどのようなものでしょうか?

「名誉棄損」とは?

 名誉棄損は,民事では賠償請求や訂正・削除・謝罪などを求めることができる一方,刑事事件として刑罰のペナルティを受ける可能性があるものです。いずれであっても,具体的な話の流れから,被害を受ける方の社会的な評価を下げる表現がなされている必要があります。ここでいう社会的な評価を下げるかどうかは,社会・一般から見て,そうした評価につながると捉えられるかどうかが問題になります。

 ここでの話は抽象的になりますが,実際にはどの表現が問題となり・前後の文脈などから見てどのようにとらえられるのかが,具体的な話の中で問題になってきます。また,意見は自由に述べられるはずだけれども,その限界を超えるのはどういった範囲なのかもここでは大きく問題となります。

 ちなみに,刑事事件では被害者からの刑事告訴という処罰も求める意思が示されないと刑罰の制裁がなされません。実際には,刑事告訴をするにあたっては,どこのどのような部分がどのような理由から名誉棄損になるのかを示す必要があります。
 また,社会的な評価を下げるだけの具体的な事実を示している必要があり,実際にそう言えるのかどうかの判断は難しい場合があります。

 いずれの場合であっても,社会一般の人が知ることができるような形で,社会的な評価を下げる話が書かれている(話をされている)必要があります。法律上「公然と」というところですが,例えば,口コミサイトであれば不特定多数の方が見ることができますし,動画の場合であれば再生回数も表示されますし,実際に多くの方が視聴することができます。

具体的にはどのような場合が言えるのでしょうか?

 一番関心があるのはこうした部分ですが,結論から言うとケースごとに慎重な検討が必要で簡単には言えないという話になります。抽象的な話だと分かりにくいので,ここで簡単な例を挙げてみます。誹謗中傷や低評価の評判を立てるといっても,実際にどうかは検討が必要になってきます。

 「あのサロンでは,サービスの質が悪い。受付の人はため口で話すし,サービス自体もオーダーしたものとは違うカットをする。費用も高額で行くべきではない」

 「あの飲食店は出す食べ物の中に虫が入っているものを平気で出す。指摘しても,取り替えてくれない。料金も高いわりに味がよくなく,客を食い物にしている」

 インターネット上を含めて様々表現を行うことは許容されているのが基本で,社会的な評価を下げるということができるもののみが,民事・刑事のペナルティにさらされることになります。また,意見や論評は人格攻撃に及ぶなど表現行為として許容されるものを逸脱する場合に民事上ペナルティを受けるとされていますが,何かしらの評価を伴う言葉(たとえば,あの店の料理はおいしい・まずい。あの人の意見はおかしい)は存在し,どこまでが当てはまるのかも問題となります。

 まず,先ほどのケースがいずれもインターネット上のサイトで特定のサロン・お店について書かれたものである場合には,誰のことを書いたのかがわかります。社会的な評価を下げたといえるには,誰のことか分からないといけませんので,イニシャルその他で分からない場合には,名誉棄損とは言いにくくなるでしょう。ちなみに,ここでは誰のことか分かればいいので,本名ではなくてもその人のことだと一般にわかる名前(ペンネーム等)が書いてあれば十分です。

 次に,社会的な評価を下げると一般に言えるためには,書いた内容や前後の内容から見て,世間一般で評価を下げることと言える必要があります。そのためには,根拠となる事柄を含め具体的に書かれている必要があります(話しているのであれば,話している内容となります)。

 先ほどのケースでいえば,単に「あの店の味はまずい」レベルでは個人の意見に過ぎませんので,社会一般から見てどうかという話にはなりません。これに対して,「虫が入っている料理を出す」「対応を求めても十分にしてくれない」等の具体的な話を出した場合には,社会的な評価を下げる可能が出てきます。

 これに対して,「客を食い物にする」というのは評価になります。ただし,どこまでの話が書かれていれば社会的な評価を下げたと一般的に言うことができるかは,具体的に書いてあることや前後の流れに左右され,一概に言うことができないのが大きな問題点になります。意見が純粋に意見なのか事実を示すことを含んでいるかは程度によりますが,たとえ意見であっても中身やそのほかの事情によって民事上の請求ができる場合も出てきます。

 先ほど記載した話についても,サロンの話は従業員の対応やサービス対応が不十分という印象を与えるものですが,どこまでの話を書いているかによって異なってきますし,社会的評価を下げたものとまで言えるかも違ってくるでしょう。飲食店の話も同様です。

名誉棄損に当てはまっても,免責される場合とは?

 仮に名誉棄損に当てはまることがあっても,免責(処罰されない・損害賠償請求などが認められない)場合がありえます。刑事事件については法律で明確に書かれ,民事についても裁判例上認められています。

 それは,①社会一般の関心を集める事柄(公共的な利害のある事実)について②専ら公益を図る目的で③名誉棄損に当たる事実が真実か・真実であると信じだけの事情が存在する場合です。

 サロンや飲食店の事柄は基本的には社会一般の関心を集める事柄ではありませんが,重大な食中毒に関する事項や人の
健康面などに重大な影響を与える事項については別に考えられる可能性もあります。こうした場合の注意を促す目的なら②も満たすでしょう。これに対して,いたずら目的や報復目的は②には該当しません。③は,真実と信じた相当な根拠が何か問題になります。単にニュース報道や掲示板の書き込みを見て信じたというだけでは該当しない可能性があります。

名誉棄損に当てはまるのでは,と考えた場合にどうすればいいのでしょうか?

 一番は見通しがどうかきちんとしておくことでしょう。名誉棄損に該当する可能性が十分あるのであれば,民事の請求として①損害賠償請求②削除の請求③謝罪や非を認める旨を掲載してもらう(原状回復の請求)があります。 

 
 刑事事件は先ほども触れました刑事告訴を警察や検察庁に対して行うことになります。特に民事の請求について,①や③を行うのであれば,誰が行ったものかをはっきりさせる必要があります。こうした点を調べることになりますが,インターネット上の投稿や書き込みについては発信者情報の開示(この開示だけで誰が投稿や書き込みをしたのかが当然に特定されるわけではありません)請求を行うことも方法としては考えられます。

 発信者情報の開示請求は,認められるために必要な事柄のハードルやいつまでも情報が保存されていない等の問題もあり,対応には注意が必要です。

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