
はじめに
介護事業者がデイサービスの利用者の方を、ご自宅と施設の間を送迎している途中で、交通事故を起こしてしまう、あるいは予期せぬ事故に巻き込まれてしまう場合があろうかと思います。
この場合、交通事故の相手方は通常自動車の任意保険に加入していると思いますが、場合により自賠責保険にしか加入していないこともあります。任意保険に加入しているかどうかで、利用者・利用者のご家族による対応が必要になるか異なってきます。
また保険による対応とは別に、利用者・利用者のご家族としては、怪我をした場合などは今後の治療費などがどのようになるか不安を持っていると思います。
介護事業者としてはこのような場合、どういった対応をすればよいでしょうか。
介護事業者が利用者の方に対して負っている義務とは?
介護事業者は利用者に対し、サービス利用契約に基づき、利用者を安全に送り迎えしたり、施設内で対応しなければならない、安全配慮義務を負っています。
ですから、施設がサービス利用者を送り迎えする際に利用者の方が交通事故に巻き込まれ、怪我をした場合は、治療費や慰謝料等について債務不履行責任を負います。
また、施設の従業員である運転手が過失により起こした事故(これ自体は不法行為となります)について、使用者としての責任も負うことになります。
事故に巻き込まれた場合、介護事業者としてはどういった対応を取るべき?
交通事故の責任について、相手方の過失の方が大きいときは、相手方加入の任意保険を使って、利用者の方の治療費等を負担してもらうのが通常です。通常は運転手に何らかの過失があったとして、任意保険を使った示談代行サービスを利用することが多いでしょう。その場合には保険会社の担当者が示談について進めてくれることが一般的です。
ただし事故が全く巻き込まれたものである場合には運転者に責任がないため、示談代行サービスが使えないことがあります。この場合は、介護事業者についても債務不履行責任や使用者責任を追及することが難しくなるため、利用者・あるいは利用者のご家族が事故を起こした側(保険会社の担当者も含む)と話をするなどして、利用者の状況に応じた対応を求める必要が出て来ます。そのため、利用者や利用者のご家族が事故への対応をしなければならなくなる、負担が出て来ることになります。
また、相手方が任意保険に加入しておらず、自賠責保険のみの加入であると保険の限度額(傷害の場合は120万円まで)を超える部分の話について、利用者ないし利用者のご家族が、交通事故の相手方と別途付ける必要があります。
施設の方で介護事業者向けの賠償責任保険に加入をしていれば、その保険が使えることもありますので使えるかどうか確認する必要があります。
治療費自体は相手方が加入している任意保険・自動車賠償責任保険での対応によるにしても、利用者やご家族は突然遭った交通事故で、心身への負担を受けていますので、まずはお見舞いをする心づかいが必要でしょう。
また、利用者の方やご家族のまず一番の心配事は、治療費など交通事故でかかる費用をだれが負担してくれるかどうかだと思いますので、その点がどのようになるかを、施設側で把握している範囲で、利用者の方やご家族に対して丁寧に説明することが必要です。以後も、刑事での手続きなどで利用者やご家族のご協力が必要になってくる場面もあると思いますので、状況説明などを、適宜行うことが必要になってきます。