
保証人の責任はどこまで?
昨年民法の規制がされることで,今後はアパートについて保証人についての規制が変わります。そのことについては別に触れるところですが,アパートその他の賃貸借契約における保証人は,家賃の不払い・明け渡しの際の原状回復の費用負担など多くの借主の不払いのために,要求をしているオーナーが大半ではないでしょうか。
テナントを含めた賃貸借契約では,保証人の負うべき責任は契約が長期間に及ぶことから重要になってきます。この影響で,昨年の法律改正によって責任を負う限度額を契約で明記する必要があります。いわゆる家賃保証会社の場合には,この規制は及びません。しかし,保証会社も借主に自らが負担した金額を請求する際の保証人を要求し,その場合の保証人が個人である場合には,借主への請求金額に上限を明記する必要があります。こうなれば,保証会社も負担上限を要求してくることがあるでしょうから,保証会社だから上限は不要とは言い切れませんので,注意が必要でしょう。現在平成31年の時点ではこの規制変更が施行されているわけではありませんが,今後は対応に気を付けていく必要が出てくるでしょう。
いずれにしても,いわゆる孤独死があった場合の原状回復や立ち退きまでの家賃不払い・壊した部分の修理費用の負担など,保証人の負うべき負担は様々な部分に及びます。そのためか,例えば,借主が家賃を支払わずに時間が相当経過(例えば,数年を経過した場合)しても契約解除などをするわけでもなく,その後に未払い家賃や延滞金(遅延損害金)を保証人にオーナー側から請求したケースについて,権利の濫用であるなどの理由で金額を制限したものがあります。保証人と借主の人間関係が密ではないケースもありますが,家賃が支払われず明け渡しがなされないままに放置をしておくことには様々な問題が出てきかねません。
法改正によって,保証人から家賃未払いがあるかなど問い合わせがあった場合には,オーナー側には祈祷をする義務が出てきますが,延滞した金額をためても保証人の資力などの事情によっては回収が難しくなることもありえます。
自殺などのいわゆる事故物件の場合は?
借主が自殺した等いわゆる「事故物件」はその後心理的に敬遠される傾向が出てくるとされ,実際に家賃金額がしばらく下がることはありうるところです。こうした家賃が下がったことについても保証人に何かしらの支払い負担を求めることができるのかというのがここでの問題です。
結論から言えば,支払いがある程度認められることはありうるとは言えます。借主が「事故物件」の状況を作り出すことは,適切に借りている物件を管理する義務に違反していますので,その違反と「相当因果関係」のある損害を賠償する責任を借主はオーナーに負います。この損害賠償を保証人は一緒に負担をすることになるためです。特殊清掃などの費用は含まれるかと思われますが,家賃の減少もそこに含まれるとは言えるでしょう。ただし,どこまで「相当因果関係」があるといえるのかは大きな問題です。
裁判例の中には,「事故物件」となることでの家賃の減少は徐々になくなっていくものと述べるものがあり,どの程度の影響を受けうるのかは,その物件のおかれた環境や状況など様々な事情によって変わってきます。そのため,一概にどうなのかははっきりはしないものの,ある程度の期間・金額については,こうした賠償の範囲に入る可能性があります。こうした点等を踏まえて,対応を考えることになるでしょう。