法律のいろは

2023年10月30日 更新理美容・リラクゼーション

サロン名・店名の落とし穴。商標登録がされたものと被っているという通知が来た場合どうする?

商標とは?サロンの名称とどのような関係があるのでしょうか?

 サロン名は当然お店の名前であって,商売をする際には自らの顔といえる部分かと思われます。店名やサービスを示すものは自由につけることが本来で文句を言われる理由はないはずです。ただし,法律は一定の自社のサービスを示す名前その他を「商標」登録することができるとし,かなり乱暴に言えば早い者勝ちで後で同様のサービスで利用する方に対し独占的な利用を主張できるとしています。言い換えれば,名前の変更等を求めることができるという話になります。

 

 ここでごく簡単に「商標」というものについて触れておきます。

 商標とは、自社企業の商品やサービス(お店を含め)を、ほかの企業のものと区別するための目印のことをいいます。商標権を取得しようとした場合は、特許庁に商標を出願し、商標登録を受けることで、自社の「顔」ともいえるお店の名前や商品・サービス名・ロゴが「商標権」という権利として保護されることになります。

 商標の登録にはいくつか要件があり、単なる図形や記号のようなそれだけではその記号が使用された商品・サービスがだれに提供するものか認識が難しいもの、普通名称のようなありふれたもの、他人が先に商標登録しているのと同一,類似の商標については登録できないとなっています。ここに該当するには、出願商標がすでに知れ渡っている商標と同一・類似であること、出願商標の指定商品・サービス(商標登録出願のときには商標の使用をする1ないし2以上の商品・サービスを指定する必要があります)が既に知られている商標の商品・サービスと同一・類似であること、出願商標の指定商品・サービスが周知されている商標の商品・サービスと同一・類似であることとなっています。

 そのため、商標登録をしている場合はふるいにかけられ、問題ないものとして登録に至っているとみてよいですが、実際のところ問題になるのはこういった商標登録していない場合、あとから商標登録をしたお店から使用差し止めを求められる、といったケースになります。

 商標権の効力としては,登録した商標を独占排他的に使用できるという専用権、登録した商標に類似した商標を他人が使用するのを排除する(禁止権)があります。具体的には、指定商品・サービスについて登録商標に類似する商標を使用する行為、指定商品・サービスに類似する商品・サービスについて登録商標と同一の商標を使用する行為,指定商品・サービスに類似する商品・サービスについて登録商標に類似する商標を使用する行為と、広い範囲が制限されることになります。

 そのため、後からその名称を使用したサロンであっても、この禁止権に基づいて、すでに同じサロン名で経営している店に対して名前の使用の差し止め、使用を続けた場合の損害賠償を請求しているということになります。

 

店名の変更要求などの通知が来た場合の対応は?

 なんの意識もないままに突然商標登録した名前と被っているから(同一・類似であるから),店名を変えてほしいという要求が書類で来るとなると,驚くのが普通ではないかと思われます。他に何かしらの請求がなされる場合もあるかもしれませんが,まずは相手からの要求にどう対応するかがポイントになります。

 

 商標登録が実際になされている場合には「特許情報プラットフォーム」というサイトでの検索結果で出てくるはずです。また,番号があるはずです。これらがなく何かしらの検索も存在しないということであれば,商標登録はされていないということになります。ただ,わざわざ請求をしてくる場合にここで何もないということは考え難いので,実際には登録をされているけれども何かしら反論ができるのか,反論はできない中での対応を考えていく必要が出てきます。

 反論ができるかを考えるにあたっては,法律上できる場合に該当するのかどうかを考えていくことになります。ここでは簡単に触れておきます。

 これには2つあり、1つは先使用権の抗弁にあたるとの主張です。他人の商標登録出願前から日本国内で不正競争の目的でなく、商標登録出願に関わる指定商品・指定サービスまたはこれに類似する商品・サービスについて商標またはこれに類似する商標の使用をしていて、すでにその商標が自分の業務にかかわる商標・サービスを表示するものとして広く知れ渡っているときは、先に商品・サービスを使用する権利を有している人が継続してその商標を使えるというものです。

 例えば「A」という名前のサロンが地域に長年根付いて美容院を行っており、あとから「A」と名乗るようになった別の店が全く別の地域で同じ名前で美容院をしていたとは知らなかったでしょうから、上の主張をすることができるといえます。

 もう一つは、権利濫用の抗弁というものです。これは形式的に商標権侵害にあたる場合であっても、個別具体的な事情から商標権者の商標権行使を認めると公正な市場での秩序を乱すといえるときには、商標権の趣旨から権利濫用として権利行使を認めるべきではない、というものです。これには、個別の事情を考慮して公正でない権利行使を制限するパターンと、明らかな無効理由のある商標権の行使を制限するパターンがあります。

 最初のパターンは、そもそも例えばB社が美容院とは全く無関係な事業を展開していて、「A]と名乗る美容院にいちゃもんをつけるために「A」という商標権を取得したときや、北陸でたまたま「A」という商標登録をして美容院をしていた人から、美容院を閉めるとのことだったので不正の目的で商標権を譲り受けたという場合があたります。この場合は商標権を取得する経過から権利行使するまでの事情を総合的にみて権利行使が不当かどうかを判断することになります。これにあたるとされる場合は、特許庁長官の商標登録の無効審判によらずに無効とされるべきと認められるような商標権行使の場合とされています。これについては「不正の目的」かどうかなどの証明がやや難しい可能性がありますが,商標権侵害は他の知的財産権(特許権,著作権など)の侵害の場合と比較して,権利濫用の主張を認める例が多いとされていますので,主張して認められることもありうるでしょう。

 

 商標権侵害とされてしまうと,看板やチラシ,インターネットのホームページに掲載しているとその削除など、多方面にわたり事業に影響が出て多くの費用がかかるようになります。そのため、これから新しく事業をされる場合には特に商品やサービス名やロゴなどが既に登録されている商標を侵害していないか,よく確認してから使用するようにしましょう。

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