どういったトラブルがありうるのでしょうか?
起こり得るトラブルの種類としては
①利用者同士のトラブル②利用者と事業所のトラブルが考えられます。
このうち,②には個別の利用者と個別の職員との間のトラブル(虐待行為の可能性や逆に利用者からのセクハラ・カスハラ行為の存在などから,事実関係がどうなのかの確認や対応をどうするのかを考えないといけないものがあります。②には利用者の親族・家族との間のトラブルもありうるところです。
①は離職につながる問題や問題社員,採用にかかわる問題など様々ありうるところです。トラブル対応だけでなく,今後の採用にも関わる可能性もありうる点かと思われます。
①については,利用者同士の個人的なとラブルのほかに,事実確認と対応を取らないことで契約上の義務を履行してくれないその他で,事業所側にもクレームが入るその他賠償請求等の問題が出てくることがあります。②については,職員の方にとってストレスなどから休職その他になった場合には労災の問題(賠償請求等を含む)が出てくる可能性もあります。離職や採用難につながることもあり,法的問題以外にも問題が生じるおそれもありえます。利用者側には仮に契約解除をする場合にも,解除が有効なのかなどの問題が出てくる場合もありえます。
利用者との間のトラブル等は,これに対するクレームとして,監督などを行う行政に対しても行われる可能性があります。行政自体が利用契約の有効性の判断や介入を直接行えるわけではありませんが,適法なサービス提供や不正がないかどうか等の調査を行われる場合はあります。この調査には応じる必要があります。調査に対応できるだけの状況にしておく必要はあります。
対応とその注意点とは?
①ですが,利用者同士のトラブルの場合にも,ご本人の話を聞くことはもちろんですが,対応している職員を含め事実確認をしてみる必要があります。喧嘩などの大きなトラブルの場合はともかく,当人同士が会わないように工夫をするという方法もありますが,一方が特に問題行動をしている場合には,契約解除の可能性も示しながら,態度の是正を求めることがありえます。
利用契約書の書式には契約解除事由(一方的な契約解除の原因)を書いていますが,一般的な書式では契約解除事由をかなり制限しているように思われます。この事情に該当する場合はかなり限定されます。福祉サービスは長期的な契約で,契約条項に含まれていなくても信頼関係が破壊されるような言動があれば解除はありえます。ただし,信頼関係の破壊になるような事情は様々な出来事の積み重ねですし,個別の事柄があったか・なかったかが水掛け論で争いにならないように,事実を確認し・是正を含めてやり取りは記録に取っておく・是正の機会はそれが犯罪行為になるような場合を除き求めておくことは重要です。事故・事件について,事業者には監督の責任を問われる可能性もあるので,問題事情や行動・障がい特性などの把握は重要です。こちらは,個別の利用計画作成の段階や業務の報告などで把握していることが多いとは思いますが,訪問か施設系なのかなどによって異なる点はありますが,対応策もきちんと決めて対応しておくことが重要です。
今述べたのは一方的な契約解除の場合の話です。信頼関係の破壊に加え,そうなるだろう契約解除の事由を契約書上記載をしておくのも対応方法ではあります。
こうした一方的な解除以外に,合意で契約解除するということもありえます。利用者の特性を考えると,合意解除が本当になされたのか・有効になされたのかが問題になることはありえます。理解ができていたのかどうか・真意とは言いにくい場合がありえます。記録などがない場合には事実として合意があったのかが問題になります。理解していたといえるかは障がい区分や特性その他ややり取り内容によって変わってきます。理解が難しい場合にはそもそも合意が無効になることもありえます。ここへの対応(合意解除が可能かどうか・記録で合意の事実が残してあるのかどうか)も必要にはなります。
①と同様の事実把握は②の場合もありえます。職員については何が虐待で行ってはいけないのかの徹底とともに,いざ問題の可能性があるときには事実確認をして対応をしておく必要があります。利用者からの問題行動がありうる場合にも,事実確認と是正を求めたことの記録化等,最悪契約解除や退去を求める際に足元が救われないようにしておく必要があります。そのうえで,話し合いが可能なのか・可能だとして是正などの点で調整がつくのか・契約解除等も必要なのかを注意しおく必要があります。