どのような法律上の問題が出てくるのでしょうか?
就労支援のサービスを提供している場合には,雇用の場を提供しているとともに,障害福祉サービスの提供という側面があります(後で触れるように,A型事業所かB型事業所で差はあります)。ただ,いずれにしてもサービス提供中の事故ということであれば,サービス提供を行うにあたっての安全な環境やもめごとが起きないように,障がい特性を把握したうえでのトラブル防止を図る義務が一般論として事業者にあることから,この違反があったか問題になります。違反があれば損害賠償請求の問題が生じることもありえます。
ただ,前提として,例えば暴力行為があったのではないかとされている場合に,そうした行為があったのかどうか問題になりえます。利用者の間で暴力行為があったのか自体が問題になっている場合に,特にケガの話もなく,実際にあったとされるころに何かしら暴力の話もなかったという場合には,暴力行為の話自体問題にする必要があります。ここで安易にあったことを前提に話をすると,別にトラブルになりかねないという問題が出てきます。仮に,A型事業所で労災にあたるということが問題にされた場合には,当然事実関係は問題になるので,きちんと事実関係の把握をしたうえでの対応が必要になってきます。
そうではなく,先ほどのケースで暴力行為があった場合には,管理などがどうであったのかは問題になります。問題特性(行動面での問題や心理面の問題など)を把握していた・人間関係が悪くトラブルに至る可能性(その前から小競り合いがあったなど)の場合には,たとえ成人同士の話としても同じ現場に職員を配置するその他の対応が取れたのではないかということが問題になることもあります。ここは実際にはケースごとの状況や人員を配置するなどが可能だったのかどうかなどが重要な点となるので,業務記録でどうであったのか等の把握が重要になります。これは事後の話ですが,事前には声掛けなどの対応でトラブルが起きないように・大きくならないようにしておく必要があるでしょう。
A型事業所とB型事業所で違いが出てくるのでしょうか?
A型事業所であってもB型事業所であっても,就労支援サービスであることは同じですが,違いは前者は雇用契約で後者はそうではないという点があります。そのため,前者では労災制度の活用の可能性があります。後者はないとされています。ただし,これは雇用契約がB型事業所では存在しないとされているためです。そのためか,あくまでサービスを受けている方は訓練生であって,雇用契約での要素が存在しない必要があるとされています。
この点は,厚生労働省の通知(就労継続支援事業利用者の労働者性について)というものでも記載されています。これは,雇用契約のないA型事業所・B型事業所での利用ではサービス利用の実態が雇用契約(その主たる要素は時間や場所の拘束がある・作業量が目的に達しない場合にペナルティがないこと・あくまでも技術指導のみ)等という点が記載されています。このほかに,A型事業所では職場の安全衛生や時間管理(シフト管理)等が記載されています。これは雇用契約である場合には守るべきものであるので,事業所の職員と変わるところではないかと思われます。利用契約が実態として雇用契約の要素を満たしている場合には,実際上は雇用契約ということで労働基準法などの規制は及ぶことになります。
A型事業所での雇用に関しては労働基準監督署のほかに市町村からも行政の監督指導が及ぶ点で(特に後者において),他の場合と異なる規制がかかる点があります。