サービス利用契約自体は民事上の契約です
障がい者福祉サービスの利用契約自体は民事上の準委任契約(サービスを継続的に提供する契約)です。その契約締結の際には重要事項説明書の交付義務が課されているなど法令の規制は及んではいます。ただし,民事上の契約である以上は,その有効性や説明を尽くしていないなどによって賠償請求や契約の取り消しがなされるのかは他の契約と変わりません。いわゆるA型事業所については,利用者となる方著雇用契約を締結することになりますから,契約開始だけでなくその後を含めて雇用に関する法令の規制を受けることになります。
サービスの提供にあたっての重要事項説明書の準備などは法令などで要請されているところではありますが,契約上の重要事項が記載されているので交付はもちろん説明は重要です。同意のサインがあれば説明を聞いたことにはなります。営業時間や人員体制・サービス内容・利用料金・留意事項などはサービス提供内容になるとともに,後にそもそも提供できる体制であったのかどうかという点につながるところでもあり,体制整備をしたうえでの準備が必要になります(もちろん,人員基準などは規制紗あれているところではありますが,実態との一致が不可欠であることは当然です)。また,運営規定はサービス提供のための規定種である以上,これに能登手の運用や重要事項説明書などの記載との整合性が求められることは言うまでもありません。
重要事項説明書以外の事項であっても,サービス提供において重要な前提や一定の利用希望者の方の障がい特性その他が存在するならばそのことを明示しておく必要があります。不当な差別扱いや合理的配慮の適用としても,トラブル回避としても,特性やサービス提供うえで限界があるならばきちんと説明と記録が必要です。もちろん,合理的配慮義務(令和5年7月現在今後努力義務から義務に変更予定)を果たしたといえるには,事業者の業務提供体制や能力・対応のために話し合いや努力をしたことは必要になりますが,ケースごとの事情により異なるでしょう。
契約解除の際のハードルとその後の業者の義務とは?
契約解除の場合には,利用の際の前提が崩れてしまった・利用者自体に利用契約や職員の方の指示に従わない状況が続くなどの事情があれば可能となる場合はもちろんあります。ただ,合理的配慮義務を尽くしたのかどうか・継続的な契約であることから信頼関係が崩れたといえるだけの事情があるのかは問題となりえます。この話は抽象的な話ではなく,具体的なやり取りなどの経過に照らしての話になっていきます。
雇用契約がある場合には,雇用契約上の規制(裁判例や労働契約法に基づくもの)が及ぶことになります。契約解除の有効性が問題になる場合を避けるための話し合いや工夫を探ることは必要にはなりますが,事業所において無理を強いるものではありません。どれだけの指示や改善のための方策を示したのか・注意を具体的に示したのか,話し合いをしたのかは重要な話となっていきます。
裁判例の中には,上記のやり取りなどから契約継続が困難になるといえるほどの重大な信頼関係が崩れたとは言えないとしたケースもあるようです。単に指示を聞いてくれない・話し合いをしていないというだけでは改善策を示した(信頼関係維持のための方策を尽くした)とは言えないこともありうるかと思われます。利用者の方の問題行動の内容や頻度回数等にもよって変わってきますが,記録をつけておくこと・記録をつけておくにしても,信頼関係の維持のために行動したということは重要です。職員の方の安全面の確保などは重要な問題にはなりますが,問題行動⇒即解除は相手が有効性を争う場合にはいい方法にならない可能性もありえます。
人材面での不足が直ちに該当するのかはケースによりますが,そもそも対応体制を超えるご本人の状況が後で判明した場合には,受け入れができないということはありえます。その場合に,話し合いその他受け入れの方策を考えてみても対応ができない場合には,身体関係が難しいという話にはなりやすくなる面がありますが,ケースごとの事情によるでしょう。
今までの話は一方的な契約解除の話ですが,このほかに合意解除(お互いが同意をする場合の契約解除)ということもありえます。話し合いに酔っての解決ということにはなりますが,利用者ご本人との話し合いの場合にはきちんと理解をして同意をしたのかどうかが問題になることはあります。口頭であればなおさら,そもそも合意をしたのかどうかも問題になることはありうるでしょう。トラブルになった際に行政に苦情をだされることはありますが,あくまでも民間の契約であって契約に関据える事項にそのまま行政が介入をできるものではありません。とはいえ,トラブルの可能性自体はあります。