法律のいろは

2021年5月8日 更新介護・福祉施設の問題

従業員が新型コロナウィルス感染の恐れ、会社としてどう対応すべき?

    令和33月頃より新型コロナウィルス(以下、「新型コロナ」といいます。)の変異株への感染が増加し、同年5月の時点で第4波ではないかと言われています。そんな中、これまで必ずしも感染とは関係ない生活を送っておられた方でも、行先のお店や取引先などで新型コロナに感染した方との接点が生じた、というケースが増えてきているのではないでしょうか。

 今回は、従業員の方が新型コロナに感染した疑いがある・また実際に感染が判明したときに会社としてどのように対応すべきかについて、改めて取り上げたいと思います。

従業員の方が濃厚接触者でないが、新型コロナに感染したか不明なときは?

従業員の方が外食に出かけたり、知人と会う中で、外食先の従業員や知人の方の新型コロナの感染が判明した場合、その従業員に対して会社がどう対応すべきかについてまず触れます。

 従業員の方が濃厚接触者でないときは、一旦その従業員の方には自宅待機をしてもらい、様子を見ることにします。ここでいう「濃厚接触者」は、国立感染症研究所の定義によると、新型コロナと診断された患者の方と、同居あるいは長時間の接触(車内等の場合も含まれます)があった方・手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、患者の方と15分以上の接触があった場合(周辺の環境や接触の状況など個々の状況周辺の環境や接触の状況など、個々の状況から感染するかどうか総合的に判断)などとされています。ただ、この定義づけはこれまでの第三波までのものを踏まえています。第四波でまん延している新型コロナは、これまでと比べて感染力が強くなっているとのことですから、今後濃厚接触者の定義が変更する可能性がありますから、注意が必要です。

 できればPCR検査を受けてもらい、陰性であることが確認できれば良いですが、現状地方自治体の感染状況によっては、PCR検査自体の受診が難しいこともあります。こういった濃厚接触者に従業員の方があたらないのであれば、従業員の健康状態を確認した上で特に症状がないのであれば職場に復帰してもらってもよいでしょう。

 この場合、自宅待機期間の給与をどのようにすればよいかが問題になりますが、従業員が年次有給休暇を取得できる要件を満たしているからといって、会社側が一方的に取得させることはできません。原則として従業員の請求する時季に与えなければならないとされていますので、従業員が年次有給休暇の消化で対処することを希望しているのであれば、年次有給休暇取得で構いませんが、従業員が希望しないときは、新型コロナに感染しているか不明な段階で自宅待機をしてもらうということになります。そのため、一般的には「使用者の責めに帰すべき事由による休業」にあたり、休業手当を支払わなければならなくなるので注意しましょう。

 また、発熱などの風邪の症状がある、発熱がなくても体調不良の様子がみられるときには、症状が続くようであればかかりつけ医などに相談してもらうなどして、PCR検査を実施してもらうのが良いでしょう。その結果陰性だったときは、発症後、少なくとも8日が経過しているか、各種薬剤の投与を受けておらず、せき・のどの痛みや全身のだるさ、発熱などの症状がなくなって少なくとも3日が経過していれば職場復帰してもらってもよいとされています。

従業員の方が新型コロナ感染者の濃厚接触者であることが判明したときは?

   保健所が実施する調査により、従業員の方が新型コロナの濃厚接触者と判断されたときは、保健所の指示により感染防止の措置を取る必要があり、14日間の健康観察をする必要が出てきます。

 この場合、特に症状が出ていないものの、会社が独自にその従業員の方に自宅待機などを命じた場合には、上記(濃厚接触者でないが、新型コロナに感染したか不明なとき)と同様、基本的には「使用者の責めに帰すべき事由による休業」にあたり、休業手当の支払いをすることになります。発熱などの症状がある場合にも、上記と同様の対応を取ることになります。

 また、従業員の方には濃厚接触者であると判明するまでの行動歴を思い出してもらい、最低でも判明前直近23日については特に細かく思い出すよう依頼することが必要でしょう。電話での簡易な聞き取りであれば感染拡大を防ぐことができてよいですが、聞いている側が情報を聞き漏らしてしまう可能性があるため、できればメールなど文字で残るもので知らせてもらった方がいいと思われます。

 さらに従業員の中に濃厚接触者にあたる方がいるのであれば、症状の有無によらず、その従業員の方にも最終的に接触した日から起算して14日以内の自宅待機を指示しなければならないこともあります。

従業員の方が濃厚接触者などで新型コロナに感染したことが判明したときは?

従業員の方が新型コロナに感染した人と濃厚接触するなどして、その結果新型コロナに感染していることが判明したときは、感染症法に基づく入院が必要になります。ただし、これについても地方自治体によっては感染の拡大により早期に入院できるとは限らず、保健所等の指示を待つ必要があります。

 また、事業場内の消毒を行う必要が出てきます。消毒の仕方については保健所の方からアドバイスがあるようですので、その指示に従いましょう。具体的には、感染が判明した従業員の机や椅子などの消毒(半径2メートル程度、トイレ等の使用があれば該当箇所の消毒も行う)、消毒の際にはマスク、手袋等の着用を行うなどとなります。

 感染が確認された従業員については、都道府県知事が行う就労制限による休業になるので、会社には賃金の支払義務はありません。その場合でも、健康保険の傷病手当金の支給がされることがあります(療養のために仕事に就けなくなった日から3日を経過した日から、直近12か月の平均の標準報酬日額の3分の2相当が支給される場合があります)。また業務または通勤に起因して発症したと認められるときは、労災保険による給付対象になることもあります。ただし、感染ルートがある程度はっきりしないと難しい場合があるので、実際のところ通勤に起因した場合に認められるケースは考えにくいです。職場内で複数の感染者が確認されたり、業務との関係で新型コロナに感染した人(客など)と直接接触する機会がある・接触が多いことが必要になると思われます。

 感染した従業員の方の職場復帰については、症状が治まったときに、従業員の体調や社内での感染状況などを見て決めることになります。目安としては発症から14日経過、症状が完全になくなって72時間の経過が考えられますが、一時期一旦陰性となっていた方が再度陽性と診断されることもありましたので、在宅勤務ができるようであれば当面在宅勤務にして様子をみる、自宅待機の期間を延長するなど、慎重に検討する必要があるでしょう。

 一時期、職場復帰にあたり陰性証明を求める会社があると報道されていたことがありますが、厚生労働省の「新型コロナウィルスに関するQ&A(企業の方向け)」では、「国内での感染者数が増える中で、医療機関や保健所への各種証明書の請求についてはお控えいただくよう、お願いします」とされており、実際のところ証明書発行は難しいのが現状だと考えられます。そのため、従業員の方の体調等を踏まえて上記のような形で職場復帰の時期を見定めていくことになると思います。

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