法律のいろは

2021年3月5日 更新介護・福祉施設の問題

福祉作業所・就労支援施設で利用者の問題や配慮すべき事項とはどの程度のものがあるのでしょうか?

合理的配慮・安全配慮義務とは?

 障がい者福祉支援事業のサービスの対象となる方は,それぞれに生活あるいは就労を継続的に行うことについてのハンデイを持った方になり,そのために必要な規制を法令上設けられ,順守などのチェック(指導や監査)を受けることになっています。生活介護その他の支援であれ,就労支援(実際に雇用となるA型か機能訓練となる他のものかはともかく)であっても,サービス利用や就労について格別に配慮が利用者の特性上必要となってきます。

 利用契約書上でも安全配慮義務等の文言を入れていらっしゃる事業者の方もおられるでしょうけれども,ケガ等身体の安全にかかわる事項の問題(事故・事件)などが起きないような仕組みと運用を行うことは,障害者福祉サービスでは契約上の重要な事業者が負う義務となります。ここでの義務は,各利用者の負っている障害特性やそれに伴う危険な行動・その行動の結果事故やそれに伴うけがを予測して,対応できるだけの設備やマニュアル・日報の整備や人の配置,それを活用した運用を行うことを求めるものです。

 

 実際には何かしらの事故により利用者の方がケガその他に至った場合の損害賠償請求の責任原因(事業者側が負う安全配慮義務を怠ったことが賠償義務を負う原因)が存在するのかどうかという場面で問題となります。個別の利用者の方の障害特性や行動特性を踏まえて,対応をする義務(例えば,不合理な行動であっても予測して避けることができた場合には義務ありとされます)が出てきます。

 例えば,知的障がいを持っている利用者の方がこれまで突然外に抜け出す行動をとっていた・多動である等の事情があり,事業主側でそのことを把握していたのであれば,突然にサービス利用中に外へ抜け出すことは予見できたことになります。障がいの特性から外に出ても交通ルールの理解に支障があり事故にあう可能性もあるということも認識していたのであれば,仮にサービス利用中に目を離した際に外に出て交通事故にあったという場合でも責任が生じる可能性はあります。事故に至る可能性は予測できたという話しになり,避けるための仕組みづくりと運用をしていない場合には義務を怠ったということになるためです。

 予測できた事情に基づく対応ですので,障害特性や行動特性の把握をしていたという場合には,サービス利用中に抜け出せないようにするなどの入り口の管理や人の配置や監督を行う必要が出てきます。ここが実際にどうなっていたのかは日報その他を突き合わせていくことに事後的にはなりますが,事前には研修その他の情報共有が重要になってきます。

 利用者同士のコミュニケーション支援や環境整備のためにどこまでのことを行う必要があるのでしょうか?

 就労支援その他のサービス提供の場面では,ある利用者の方の言動を嫌だと思うがそのことを表現できない別の利用者の方がいる・ある利用者が自分の意思をうまく示すことができずそのことがトラブルの原因になりかねない等のことも想定されます。先ほどの安全配慮義務以外にも,事業者が努力義務を負うものとして社会的障壁の除去のために必要な具体的な要望が出ている場合にそれに応じるというものが存在します。合理的配慮義務(障がい者雇用で法令で定められているものとは場面が異なります。こちらは雇用されている方の能力発揮のために障害となっているものを除くために雇い主が雇用管理上負う義務です。)と呼ばれるものです。内容については厚生労働省のガイドラインも存在します。

 違反が当然に事業者がサービス利用契約上負っている義務の違反となるわけではありませんが,利用上のトラブル防止やサービスの継続利用が困難になったといえるのかどうか(信頼関係破壊事情が利用者にあるのか)などの場面では問題になる可能性はありえます。例えば,感情表現が難しい方の場合には不満の気持ちを書いたカードを渡してその時の気持ちにあったカードをあげてもらう・トラブルになりがちな方とシフトを変える等の対応もありえます。

 

 利用者同士のトラブルが生じている場合にはその仲裁を行うのはもちろん,トラブルの原因を確認する・防止策として何が適当なのかを検討して実行することは当然重要です。ここでの対応策が事業所の広さその他から限界がある場合には,トラブルを起こす同士が接触その他がないように職員を配置して注意をしてもらうという方法がありえます。職員の行動に問題があるという訴えがあった場合にも事情確認をしたうえでフィードバックする・記録を残して問題の有無などを伝えるようにしておく必要があります。

 利用者同士のケンカを無理に抑え込むのは虐待かどうかはともかく,経緯や内容・対象となる方によっては暴行その他の犯罪等法的に問題が出ることになりかねない点には注意が必要です。

 

 結局,感情表現やコミュニケーションがうまくいくような仕組みづくり・仲裁や事実確認その後のフィードバックをしておくためのルール作りと運用などが重要になってきます。問題となる場面でしていいこと・ダメなことを職員の間で共有しておくことも意味があるかと思われます。

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