法律のいろは

2020年11月13日 更新時事問題(法改正・最新の裁判例など)

サブリース勧誘などに関するガイドラインが制定されました。その概要は?

 空き用地をアパートその他を立てて実質は管理を行う業者に賃貸して,エンドユーザーに賃貸をする形式をサブリースといいます。一定期間の家賃収入保障を勧誘の際にうたっているケースもありますが,実際には法律上契約期間中の家賃金額の変更(多く問題になるケースは減額)があるためにトラブルになるケースが多かったものです。

 これに対する規制立法が令和2年6月になされ1215日に施行される予定です。この法律は主に行政からサブリースの勧誘や管理を行う業者に対する規制の法律であり,行政からの規制のガイドラインが制定されました。

○これまであったトラブルとは?

 簡単に言えば,建物を建てる(代金は土地の所有者から業者に支払う,代金は抵当権を設定し借りるのが通常)・オーナーは家賃収入により返済を行う・業者はエンドユーザー(部屋などの借主)から家賃を支払い,オーナーに支払う家賃と管理経費を支払う方式(家賃収入差額と建設費用が業者の収入)が多いように思われます。

 

 家主側はきちんと契約前に約束された家賃収入が想定された期間保証されればそうは損をしないはずですが(賃貸期間の間契約しています),法律上借主の権利が業者といえど守られています。これは,借地借家契約法という法律が一律借主の立場が弱く生活や事業の場・経済的価値のある建物を守るため借主の地位を守り契約が継続するよう規定しているためです。どんな契約であっても契約後の事情変更(家賃が不相当になる事情)があれば家賃の減額(増額もありえますが,アパートなど建設後時間が経過すれば何もしなければ家賃は下がる可能性がありますし,トラブルになるのは減額の場合です)を業者側から求めることができる形となっています。

 言い換えると,当初家賃が保証されているかのような話があったにもかかわらず,後で思わぬ家賃減額が生じる・これは業者側がオーナーに払う家賃を支払っていては赤字あるいはこれに近い状況になるなどの理由からで,オーナーとしては家賃を減額されると最悪の場合赤字になりローンの返済に困るなどするためにトラブル(当初の契約の取り消しなどの事情があるのか・説明義務違反があるのか)になってきました。

○改正された法律の概要とは?

 サブリースを行う業者(先ほど業者として書いた側)について,国に対し登録制として国が状況などを把握できるようにするとともに,一定の義務と違反に対するペナルテイ(内容によっては刑罰を設ける)を科すことにより,トラブル防止などを行うという法律になります。

 

 ここで問題となるのは,勧誘を受けるオーナー側に対する行為として何が規制をされるのかという話と違反があった場合にはどうなるのかという話です。また,誰が勧誘をする場合に規制を受けるのかどうかという点も問題です。いわゆるハウスメーカーのような空いている土地にアパートなどを立ててテイン貸借方式を進める場合が該当する場合は典型例ですが,こうした取引を勧誘する方は広く該当することになります。建設業者や不動産業者・他のオーナー候補に勧誘を進めるオーナー自体も該当します。

 

 規制をされる内容は

  • 誇大広告や不当勧誘の禁止
  • 契約期間中に家賃の減額となるリスクがあること・契約期間中に業者側からの申し入れで解約になる可能性があること等オーナーに不利益となる事項の説明
  • ②を含む契約上の重要事項(その書式は国土交通省のHPに記載例が載っています)を記載した書面を契約に先立って,業者側の一定の資格のある人間からオーナー側に交付すること

 

です。①は,例えば,勧誘の際に空き室がないことの保証や家賃保証をうたっている場合には,家賃の減額請求を業者側からする可能性があること・実際には定期的な家賃見直しがある場合にはそのことを述べるということになります。この規制は広告に関する一般的な規制と同じく(規制の内容自体は同様のものです),オーナーに実態とは異なる有利な契約内容であることを誤解させないために必要とされるもので,パンフなどに「家賃保証」等と記載した場合には,その横あたりにわかるように家賃減額請求などの話を書く必要があります。多く広告に関する行政方の処分がされる場合には,こうしたことがなされていないことが多いです。このほか「利回り○%」とだけ記載されている場合にも,実際にはそうではない見通しに過ぎないとの記載が必要になります。維持管理の費用負担の内容についても同様です。

 ②については,③とあいまって契約上のリスク事項等の説明義務を業者側(注意点は純粋な業者だけでなく,業者から依頼を受けたコンサルタントもするオーナーも規制を受けること)に課しています。

 

 

 最後にこれらの規制はあくまでも業者側に対して罰則(刑罰)や登録取り消しなどの行政処分を行うことで意味を持たせようというもので,この違反=契約取り消し・損害賠償請求というわけではありません。とはいえ,法律上負っている説明義務に違反をしていることは損害賠償請求の根拠とはなるものである(言い換えると,書面の交付を受けて聞いていないという言い訳は通じにくくなる)ことは言えるでしょう。

 

 今回定められたガイドラインは,こうした法律規制を行う上での行政側の方針を定めたものです。具体的に,先ほどのような話を明記したほか,法律上オーナー側からの契約申し入れには規制が大きい(正当理由+半年以上前からの解約申し入れがないと途中解約ができない)という点の説明も要求しています。この最後の点も重要です。ここでの正当理由とは,オーナー側にアパートなど以外の用途での利用の必要性が高く業者側に利用の必要性がないこと・立ち退き料等のことを指します。通常,アパートを建てておきながらほかの用途の必要が高いとはそこまでは言えないでしょうし,業者側の利用の必要性が低いこともそうはないでしょう。先ほどの家賃減額の話も踏まえると,減額リスクを抱えつつ(赤字リスクになる場合もあるでしょう)契約の継続を受け入れざるを得ないということで,オーナー側にとっての負担は大きくなる可能性があります。

 ガイドライン自体は長いものとなっていますが,これまでの裁判例や借地借家法の状況も踏まえつつ法律の規制の考え方を示しています。

 

 

 細かな点はここには書ききれないものがありますが,業者側あるいはこれから土地活用を考える際には書類や説明がどうなっているのかをきちんと確認しておくことがトラブル防止につながるでしょう。

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