昨今ちまたでも良く聞かれるようになりました「働き方改革」。
その中には,元請になることも多い大企業での勤務時間を減らすために,中小企業にしわ寄せを及ぼすのではないかという懸念もあるところです。こうしたことから,中小企業や下請企業の長時間労働を抑制すること・代金の支払い条件の改善等が行われているか調査や検討会を国が行っています。
「世耕プラン」とは?
下請企業の支払い条件の改善や取引の公正を目指した法律の改正は少し前に行われましたが,このほか国の政策として,こうした法律改正のもとになるプランとして「世耕プラン」というものが存在します。
これは,
① 不合理な納入価格を下げるよう大企業(元請け先)から言われるのを抑制する
② コストに関する不合理な負担を中小企業(下請け先)が押し付けられないようにする
③ 支払い条件の改善
を指します。③については,元請けなどからの支払いを過度に手形などでなされるのを防ぐこと等が挙げられています。
こうしたプランに基づく法律改正によって既に,①や②に反する行為などに対する対応が強化されています。①~③に関するガイドラインが定められるとともに,人手不足や最低賃金の上昇等労務コストが中小企業でも上昇したことを踏まえて,下請け先と元請け先との代金決定の協議では行うよう求められています。また,手形での支払いも可能な限り現金で,割引料を下請け先に負担をさせない,支払いサイトを最大でも120日とする等の方策がとられています。
国による調査と対応の方向
去る平成29年6月4日に中小企業庁では,こうした方策や中小企業での長時間労働につながりかねない商慣行に関する調査と検討会を開いています。
① 「世耕プラン」に基づく支払い条件や取引価格,コスト負担に関する状況がどうなっているか
② 下請けに関する法令違反を取り締まる状況について各企業の認知度はどうなっているか
③ 製造業やサービス業での無理な納期設定,広告サービス業などでの残業が当然という風習の状況がどうなっているか
こうした中で③の中には下請・元請関係に留まらない中小企業での長時間労働を生み出す原因の調査もなされています。その中では,運送業での「待機時間」・理美容での「練習,訓練の時間」・飲食業などでの「24時間営業,その他長時間の営業」が問題点として把握されています。
このほか,この調査では全国各地の中小企業の中における小さな工夫で生産性を上げたケースの紹介がなされています。「働き方改革」に基づく一連の施策の中でも生産性の向上は大きなポイントの一つとされていますし,実際人手不足の中での生産性の向上は大きな課題となっています。
法律のほかに各種施策や調査の状況が各社の経営上参考になるかもしれません。こうした情報にアンテナを張っておくのは意味があることと思われます。