先般「働き方改革関連法案」が成立しました。この概要はいずれ触れますが,多様な働き方を実現するとともに,生産性の向上を図るためとして,現在様々な国の審議会の議論が進み,セミナーもいろいろと行われています。
そうした議論の中には,今後改正した法律の適用を受けることになる業種や「小さな会社」向けの話・副業や兼業に関するものなどがあります。
一方で,ICTの活用やIT・AIを活用した多様な働き方などに関する議論もされています。今回は,こうした議論に関して少し触れていきたいと思います。

AI等のITに関する技術の進歩と雇用についてどんな議論が?
企業が不特定多数の方にオンラインプラットフォームを使って仕事を外部委託するクラウドソーシング・業務の中でICTを使う・人事労務管理についてAIやクラウドなどを活用することで業務改善を目指すというHRテック,事務系の仕事を学習させてソフトウェアに一部の仕事を担ってもらおうというRPA等様々な言葉を最近聞かれてはいないでしょうか?
主には業務効率の改善などを目指す企業のセミナーなどで聞かれたのかもしれませんが,生産性を向上していく・業務の効率化を図る・フリーランスなど多様な働き方が図られるというプラスの議論が一方ではあります。他方で,そうすることで仕事が奪われるのではないかという議論もあり,どちらが正しいのかは現在結論があるわけではありません。
厚生労働省に置かれている労働政策審議会では,副業や兼業・フリーランスについて,規制とともに・どのような現状にあるのか等を議論がされています。そこにおいても,現状こうした事実認識のもと今後どのような規制などを行うべきか等の議論がされています。
業務効率化のためにIT等を導入した場合,雇用への影響は?
先ほどの審議会での議論では,生産性向上のためのIT等の導入推進が雇用にどのような影響を与えるか断言はしていません。
一方,業務効率化のために特に事務系職種では,そこについている人の仕事の代替がなされる可能性があります。それは,クラウドソーシングという形で外注され,フリーランスの方が担う・副業兼業として会社員である方が担うのかもしれません。また,テレワークという形(在宅勤務・サテライトオフィスや移動中での情報機器を使った勤務がありえます)もありうるでしょう。
こうした代替によって他の仕事や部署への配置転換などがすすむかもしれません。ただし,配置転換や退職に関するこれまでの法律のルールが変わるわけではありませんので,配置転換や退職を求めることへの法的な問題が発生する可能性がある点には注意が必要でしょう。
また,別の会社に勤務する副業や兼業の方によって外注で仕事を担うという形やテレワークの場合には,それぞれ国によるガイドラインが設けられています。
このガイドラインが直接の規制というわけではありませんが,情報管理をどのように行うのか・労働時間の管理や各種の雇用条件をどう定めていくのかは,テレワークで問題となってきます。テレワークは現在大企業での導入が先行し中小企業ではあまり進んではいませんが,今後中小企業でも導入が進むだろうという見方もあり,中小企業でも全く無視ができるわけではないでしょう。
副業や兼業については,自社の従業員の方がしていく際に禁止ができるのか・導入する際の雇用時間管理の問題・情報管理の問題など会社が準備しておくことは何点もあると思われます。外注の際の規制は請負であれば,下請に関する法律の規制もあります。
各企業に置かれましても,人材の確保や定着を図るとともに,従業員の働き方の多様化に応じた就業規則等の定め方や管理等に関する情報を集めて対応していくことが重要になってくるでしょう。