「専門型」裁量労働制とは?
専門型裁量労働制とは,仕事の性質ややり方上その従業員の方の裁量に大きくゆだねる点があるために,その方に仕事のやり方や時間配分の決定などについて会社が指示するのが困難である仕事(業務)に適用されるものです。どういった仕事(業務)が当てはまるかは法令で定められています。こうした仕事(業務)にあてはまる場合に,一定の条件のもとに実際の勤務時間にかかわらず一定の時間勤務したものとして扱うというのが,この制度になります。
法令上は,①新商品や技術の開発研究などの業務②情報処理システムの分析や設計③新聞・出版の記事の取材編集,放送番組制作のための取材編集④衣服や室内装飾・工業製品。広告などのデザイン考案④放送番組・映画などのプロデユーサー等⑥「厚生労働大臣の指定する」業務,が挙げられています。⑥については,士業(弁護士や税理士等)・大学教授・証券アナリスト・コピーライター・ソフトウェア開発等が該当します。
実際の導入には,法律で定められた手続きをとる必要がありますが,どの業務が対象になるのかなどの点を事業場ごと(会社ごとではありません)に労使協定を作り,その事業場ごとの労働基準監督署長に届け出る必要があります。
実際に適用対象かどうかが問題になったケース
これまでいくつかのケースで,この制度の適用対象になるのかどうか・この制度を定めるうえでの手続き条件を満たしているのかどうかが問題になったものはいくつかあります。
比較的最近のケースでは,絵画制作等を営んでいた個人事業主の方に雇用されていた方が,残業代その他の請求をしたものです。争点は多くありますが,専門型裁量労働制の適用があれば,実際の勤務時間がどこまで長くても(実際には短くても)一定時間働いたものとみなされる(つまり,残業があっても残業代は出ない・勤務時間が少なくても目いっぱい給料の支払い義務がある)ことになります。このケースでは,対象となった方が,法令で定められた上記の④衣服や室内装飾・工業製品。広告などのデザイン考案,を行うかどうか・そもそも法令で要求された手続き条件を満たすかどうかが問題になりました。
結論から言えば,手続き条件を満たしていないということで,請求が一部認められています。これは,実際の勤務時間に応じて残業があれば残業代が生じるという形になります。
これまで,こうした手続き上の問題のほかに,似たような争いについて,先ほどうえで挙げた①から⑥の中に該当となった業務が含まれるのかどうか問題になったものはいくつかあります。仮に導入を考えていくのであれば,手続き上の問題のほかに,こうした実際に業務が該当するのかどうか問題になったケースをよく検討していく必要があるでしょう。