割増賃金(残業代)の計算基礎となる手当等と除外される手当等とは
残業代(割増賃金)の請求を受ける際に,どこまでが算定基礎となる手当等に含まれるかは大きな問題となりかねません。算定基礎となる手当等は,「1か月あたりの給与額」となります。給与明細・その他就業規則での定めでは,様々な名目の手当てを定めているケースがあろうかと思われます。
こうした手当等がここでいう「1か月あたりの給与」に含まれるかというのがここでの問題となります。法令上は,含まれない手当等を定めています。それは以下のものに限られます。
・家族手当⇒扶養家族の有無や人数に応じて支払われるもの
・通勤手当⇒通勤距離に応じて支給されるもの
・住居手当⇒住居に要する費用に応じて支払われるもの
・子女教育手当 ・臨時に支払われた給料 ・1か月を超える期間ごとに支払われた給料
各手当については名前というよりも内容が上で書かれたものになるかどうかがポイントとなります。そのため,通勤手当や家族手当名目でも,一律に支払われている場合には上記のものには該当しません。「臨時に支払われた給料」とは,突発的な事情によって支払われたものが該当します。たとえば,ケガなどをした場合の傷病手当等が該当します。
「1か月を超える期間ごとに支払われた給料」の代表例はボーナスです。このほかに,1か月を超えた期間の出勤成績に対して支払われる「精勤手当」や同じく1か月を超える期間の継続勤務に対して支払われる「勤続手当」,1か月を超える事由に対して支払われる症例手当や能率手当てが該当するとされています。注意点は,たとえば,精勤手当でも1か月の出勤成績に対して支払われるものである場合には該当しないという点です。
最近問題となった裁判例
今回取り上げるのは,運送会社に対しての残業代請求の際に,手当のいくつかが「1か月を超える期間ごとに支払われた給料」に該当するかという点などが問題となったものです。他にも争点はありますが,今回はこの点を触れていきます。
問題となったのは,車両整備などの状況に応じて奇数月に支給する「整備奨励金」・遅刻や早退などがない勤務状況に応じて偶数月に支給される「出勤奨励金」等です。従業員側の主張の概略は複雑な点もあるために簡略化すると,以前の経緯・「整備奨励金」については,日常点検は毎月行っているのだから2か月ごとの支給にする理由が存在しない・「出勤奨励金」については,欠勤等の評価が行われていないし,欠勤状況にかかわらず2か月ごとに定額が支払われているから,2か月ごとの評価は不要であるというものです。言い換えれば,1か月を超える期間の評価を踏まえた手当等ではないという言い分になります。
会社側は長年の慣行や手当の趣旨から合理性が存在するなどとして反論をしたものです。裁判所の判断は,結論として,いずれも「1か月を超える期間ごとに支払われた給料」に当たると判断しています。日常点検以外の整備を2か月に一回会社が行わさせていたことを踏まえた評価・長年の扱いや労働協約の存在,休みや勤務日数が平準化した2か月に一回の欠勤等評価を行うことの合理性などがその根拠となっています。
このように,実態や手当の趣旨から見ての合理性などから見て「1か月を超えた期間で支払われる給料」に当たるかどうかが判断されています。