移動時間等が勤務時間に入るかどうかで問題になる点は?
移動時間が勤務時間に入るかどうかは,時間外勤務があるのかどうかという点で問題になります。移動時間が多いとそれだけ問題になる時間は増えていきますので,この時間をどう考えるかは大きなポイントとなりかねません。ここが勤務時間に入ると,いわゆる「残業」が多くなります。
自宅から職場への通勤時間は,自宅という私生活の場から職場への移動でその時間をどう使うかは自由ですから,勤務時間に入らないように思われます。それに対し,一度職場へ出向いた後客先などへ出向く際には,いつまでに客先へ行かないといけない・前後で仕事があるなどの事情が出てきますから,話が変わってくる可能性があります。
勤務時間かどうかは,裁判例上,自由に従業員が仕事から外れられるかどうか・会社の指揮下にいないといえるかどうかがポイントとなってきます。どういうルートを通っていくか・前後に仕事があり,自由に過ごせるとはいいがたいのか・上司と一緒であればその指揮のもとにあったと言いやすくなってきます。これに対して,そうした制約がなければ,自由時間,つまり勤務時間とは言いにくくなってきます。
「直行直帰」の際の移動時間は,勤務時間でしょうか?
いわゆる「直行直帰」の形態は,自宅その他の所から客先などへと直接向かう・帰ることになります。もちろん,客先へはアポイントを取った時間等決まった時間に行かないといけなくなりますが,いつ出発するのか・どういったルートを通るか・移動中何をするのかは自由である場合が多くなるでしょう。
先ほど触れましたように,勤務時間といえるかは,その間自由に過ごせるかが大きなポイントとなってきます。今述べたような点があるとすると,「直行直帰」の際の移動時間は勤務時間にはなりにくくなってきます。ただし,ケースごとの事情によります。会社側からいつ・どこに立ち寄るのか・いつ出発したのかなどを管理し,ルートや移動中にするべきこと等の管理がなされているのであれば,勤務時間といいやすくなってきます。
あくまでも,先ほどの考慮する要素を踏まえてのケースごとの判断になってきますから,移動時間であれば必ず勤務時間にはならない(逆の場合にも当てはまる事柄です)とは簡単に考えない方がいいように思われます。
勤務時間がどこまで入るのかというのは,様々な要素を考慮して考えうところであって,残業代の裁判はもとより会社の生産性管理においても重要だけれども感覚的に考えてしまいかねません。必ずしも,始業時間と終業時間の間ではないことを考えていく必要はあるでしょう。