
会社によっては,出退勤の把握や何時から何時まで仕事をしていたのかなど様々な用途で,タイムカードを導入しているところもあるでしょう。出退勤を印鑑を押させるような形や全くそうした仕組みがない会社もあるかもしれません。何時から何時まで勤務をしていたのかは,残業代の請求やその他過労があったのかなど様々な局面で問題になりえますが,こうした点でタイムカードはどのような意味を持つのでしょうか?
タイムカードには,当然打刻された時間がありますので,その時間に打刻されたことは示すことができます。問題はその打刻をいつしていたかという点になりますが,きっちりと出勤と退勤の際に打刻をするように従業員の方に指導をしていれば,ここで問題が起きることはそもそも少ないと思われます。もちろん,従業員の方本人ではなく,全くの第3者に打刻をさせていたということになると,きっちりと正確に打刻されていたのかどうか問題になることも出てきかねません。
タイムカードをもって出退勤の時間の管理も行っていたこと・他に出退勤の把握がないこと・管理はきっちりと行う体制があったことが重要になってきます。このうち,きっちりと管理を行っていたというには,タイムカードの打刻場所をどこにしていたのか・いつ打刻するように指導していたのか等実際の出退勤時間と打刻時間が普通は一致するという仕組みを作っておくことが重要になってきます。
そのためには,実際に打刻が正確になされているのかという,タイムカードに打刻された時間が正確なものかどうかを定期的にチェックすることも必要になってくるでしょう。
通常は,タイムカードは会社側で保管しているでしょうから,多くの時間を働いていたという従業員側(元従業員側のケースが多くなる傾向にはあると思います)に対する会社側の反論として,タイムカードの時間を主張するというケースが多くなるように思われます。そのため,せっかく打刻された時間があっても,それがいい加減な可能性が高ければ意味はありません。
勤務時間がどのくらいであったのかは基本的には,多くの勤務時間があったと主張する側(多くは従業員側でしょう)にありますので,しっかりしたタイムカードでの管理が行われていれば,問題は回避できます。
ちなみに,客観的な証拠の候補としては,会社の事務所のICカードの使用履歴などもあるところですが,あくまでも施設管理のための記録であって,出退勤の記録にはなりません。それまで,労働基準監督署から勤務時間の実態が残業がいいのではないかという指導があり,タイムカードの運用が杜撰であれば,こうした記録も証拠の候補になりかねない点もありますので,注意は必要です。
実際,裁判例ではタイムカードの打刻時間は重視される傾向にはあると思われますが,運用体制が杜撰なのではないかと疑われるケースでは,その信用性に疑問が出てくることもあります。そうした点を問題にした裁判例も近年でも存在はします。こうした点を頭に入れておいた方がいいでしょう。