法律のいろは

2020年4月24日 更新残業代・賃金

残業が生じる時間とは?

残業が生じる時間とは?

  残業が生じる時間は,フレックス制や変形労働時間制・裁量労働制等の適用がある場合を除けば,1日8時間勤務を超えた部分と1週間の勤務が40時間を超えた部分で生じます。休憩時間については,実際に業務を休んで自由に時間を使うことができるのであれば,業務時間ではなく残業が生じるのかどうかから外れることになります。仕事の依頼があれば動くという待機時間についても,その時間を自由に使うことができないのであれば業務時間になる=その分残業時間が増えかねない点には注意が必要です。

 

 意外に勘違いが多いと思われるのが後者の部分です。どこから1週間とカウントするのかという問題があります。1週間に1回という休日が何曜日か定まっていれば問題は少ないですが,例えば,4週4休等としている場合(休日が何曜日か不明な場合)にはその特定の問題が出てきます。給与の締め日から考えていくことになるでしょうが,これでは計算が面倒になる可能性もあります。
 1日8時間ということで1週間の義務休日が1日となると,1週間48時間は働くことになりますら,6日目にあたる部分は全て時間外の勤務(残業)になりかねません。ここを無視して計算をしていくと,後で思わぬ残業が生じるので注意が必要です。

 ちなみに,これは法定の話ですので,例えば,就業規則の中で勤務時間を決めそこからはみ出た時間での勤務には残業代が生じると定めているとなると,1日8時間の勤務の中でも残業代が出てきますので注意が必要です。筆者が誤解があると考えているのは,こうしたことだけでなく,例えば,深夜残業(午後10時から午前5時)までとなると割増率が大きくなる(通常残業を合わせれば50%以上,休日の場合となると60%以上)点についても誤解がある点です。

 小さな事業主の方はいわゆる36協定を作らずに残業をしている場合もあるでしょうが,この場合には残業代の支払いはもちろんご自身が刑罰などのペナルティを受ける可能性がある点に注意が必要です。ちなみに,36協定については中小企業での残業代の上限規制に合わせて新たに作り直すことが求められており,特に1か月45時間・年間360時間までの残業を命じることができる等,場合を具体的に記載するよう求められています。施行1年以内(中小企業については2021年4月からとなります)に作成している36協定はそのまましばらくは適用できる見通しですが,いずれにしても新たな規定の作成が必要になっている点に注意が必要でしょう。

 

 さらに言えば,管理職といっても休日や深夜残業がありえますし,外回りの営業の方等についての「みなし労働時間」の適用なども同様の話は当てはまります。これらは,適用されるのかどうかについて大きなハードルがありますが,それだけではなく残業部分が生じる可能性がある点に注意が必要です。

 残業については,残業代の遅延損害金が退職後は原則14.6%の年率で発生する点や現在法改正で3年分は請求できる方向になった(以前は2年)点等人のやりくりとともに経営にダメージとなりかねませんので,注意しておく必要があります。

 従業員が退職をする場面で請求をされることは多く,遅延損害金が大きくなる可能性が出てくるとともに,従業員側に自信があれば裁判を起こすこともありえますので(この場合には,付加金という一種のペナルティが会社側に生じることがありえるためです),放っておいていいということにはならないでしょう。
 ちなみに,今後も受けられる上限規制違反部分の残業代については発生しますし,2023年4月1日以降は月60時間を超える残業についての残業代の割増率は60%になりますから,なおさら注意が必要になります。

働き方改革による変更(その概要)

 中小企業(どの会社が該当するのかは業種と資本金・従業員により決まってきます)は2020年4月から・大企業は2019年4月から,勤務時間の上限規制が始まりまっています。

 これは,これまで特別な事情がないとできなかったはずの残業について,実際の規制が緩くなってしまっていたことから,罰則付きで上限規制を設けるものです。2020年3月時点で一部業種(建設業・自動車運送業・医師等,2024年4月まで猶予され規制内容も少し異なります)では導入が先になるものがあります。以下では,一般的な業種について規制の概要を記載しておきます

 関連して,残業させること自体はいわゆる36協定の取り決めが必要であること・法改正前の36協定については経過期間を設けられているものの,改正に対応したものに変更する必要が出てきます。

 

 まず,月あたりの残業時間の原則は45時間・年では360時間となります。これに対しては例外があります。「臨時特別な事情」がある場合になりますが,この事情も具体的な記載が求められるようになります。例外にあたる場合でも

 ①時間外・深夜・休日勤務の上限合計は年720時間以内であること

 ②月あたりの休日と時間外,深夜勤務の合計が100時間以内であること(③もあるため偏って上限越えは難しくなります)

 ③2か月・3か月・4カ月・5カ月・6か月あたりの休日と時間外・深夜勤務の合計が全て1カ月当たり80時間以内であること

 ④1カ月当たりの上限45時間を超えての時間外は6か月以下であること

の範囲で例外的に残業時間を多くすることは可能となります。

だらだら残業をなくすには?

 現在タイムカードやパソコンのソフトあるいはアプリを使って出退勤と時間管理をしているところが多いのではないかと思われます。こうした客観的に測ることができるツールについては信用性が高いため,記録された時間に出退勤がされたものと一般的には考えられていますし,仮に裁判などになったとしても,そうした傾向にあります。
 ただし,不自然に全ての従業員の記録時間が一致している場合や他の記録(電話記録やSNS等の投稿時間との矛盾・メールのやり取りの時間などとの矛盾)との不整合がある場合には話が変わってきます。

 よくある話と思われるのが,毎月そこまで気にはしていなかったけれども,いわゆるだらだら残業が生じている・理由は不明だが異様に早めに出勤しているという場合も,特に注意をせずに放っておくと会社側が了解あるいは黙示で指示をしていたものと評価をされる可能性が高くなります。通常,給与計算などの際に会社側が見ていないことは考え難く,把握しているものに基づいて指示などをしているはずと考えられるためです。
 客観的な記録は証拠としての信用性に優れている反面,あくまでこうした資料は記録のためのものであって,そこに対してどのような指示や対応をするのかは会社ごとに把握と判断をきちんとしていく必要があります。

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