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法律のいろは

2016年5月31日 更新残業代・賃金

定年後期間付き再雇用をした場合に,賃金(給料)を下げるのは違法なのでしょうか?(裁判例紹介)

 少し前にニュース報道がされていましたが,いわゆる定年退職後に再雇用をした方が給料等が下がったことを違法であるとして訴えた裁判の第1審の判断が示されました。この裁判が控訴されるのかなどは現時点で,筆者はわかりませんが,今回はこの裁判例と何が問題になったのかを少し紹介したいと思います。

 

 定年後の高年齢者の再雇用は,高齢化が進む中で要請されるようになり,高年齢者雇用安定法という法律で定年後の再雇用が義務付けられるなどの事情があるところです。会社にとっても年功的な給料を維持しつつベテランの知恵を生かすという意味では,こうした制度に意味があると思われるところです。

 

 このケースでは,運送業において,定年退職後に嘱託として再雇用された方(契約期間は定まっています)が会社に対して,収入などが再雇用後に下がる点が法律に反するとして,正社員と同じ収入がもらえるはずだとして差額給料などを請求したものです。実際には,もう少し複雑ですが,ここでは理解しやすくするために相当単純化して記載しておきます。

 

 大きな争点となったのは,労働契約法20条に違反するかどうかという点です。他にも争点がありますが,大きなものはこの点なので,ここに絞って紹介します。そもそも,労働契約法20条とは,勤務期間が定まっている従業員と定まっていない従業員(正社員)との間で,勤務条件が異なる場合に問題となるものです。双方で行っている仕事の内容や仕事に伴う責任,そのほか会社側の都合で変更される仕事の範囲などが同じで,勤務期間の違いだけでこの勤務条件が違っている場合には,その違いが不合理では駄目であるというものです。大雑把にはこのような内容になります。

 

 このケースでは,①この法律の適用があるのか②違いがあっても,それは不合理なものか,といった点が争いになりました。①について,裁判所は定年後再雇用だけの問題としてはとらえず,勤務期間に定めがあるかどうかの違いから,適用があると判断しています。②については,パートタイム労働法で,パートの方と正社員間で同一の仕事や責任などのもとで勤務条件の差を設けてはいけないことを参考に,勤務条件の違いは正当とするだけの事情がない限りは不合理と判断されると述べています。これは,労働契約法20条の対象となった場合には,会社側で正社員と勤務期間が定まっている方に勤務条件で違いがある場合に,積極的に正当化するだけの事情を示さないといけないとするものと思われます。

 

 そのうえで,裁判所はこのケースで,仕事の内容や責任などは再雇用後の方と正社員で同じであり,勤務条件は勤務期間の定めの違いによるものと判断し,正当化するだけの事情があるかどうかを吟味しています。そこでは,定年後再雇用の必要性と年功賃金を維持するために定年後再雇用後に給料を下げることの意味自体は認めています。一方で,仕事内容や責任などが変わらないままで大きく給料などを下げることは一般化しているとは言えない・定年後再雇用の場合の給料引き下げ額は大きく賃金圧縮措置と評価される点があること・定年後に同一仕事や責任等の下での再雇用で給料を下げる必要性が認められないと述べています。特に給料引き下げについては,新入社員である正社員よりも給料を下げる点が考慮されています。

 このほか,会社の反論について判断をしていますが,ここでは省略します。

 

 あくまでも,給料の引き下げ額の程度や現在の情勢,会社の財務状況などを基にした個別の判断にはなりますが,労働契約法20条違反の勤務条件の定めは無効と判断をしており,影響は大きいと思われます。定年後再雇用時における雇用の在り方には影響を相当及ぼす可能性はあります。今後控訴審などに至るかはわかりませんが,インパクトはあるかと思いますので,紹介しておきます。

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