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法律のいろは

2018年12月26日 更新残業代・賃金

スタッフについて,残業代先払い(固定残業代)を設ける際のメリットと注意点は?

残業代先払い(固定残業代)とは?そのメリットは?

 一時期,「名ばかり店長」ということで,店長について残業代の支払いを命じる判決が出ていました。特に,複数店舗やチェーンを作っている場合に,店長には経営上の権限がなく,残業代(注意点は,夜10時から午前5時の間の深夜残業代は支払い義務を会社は負います)の支払い義務を会社が負わないというのは難しいという点があります。

 こうした点を踏まえて,予め一定部分について残業代の先払いをしておこうというのが「固定残業代」です。

 

 いくつかのタイプがあります。

 ・基本給に組み込んだタイプ   例えば,月給〇〇万円(ただし,残業代〇万円含む,残業●時間に対応)というタイプ

 ・手当型            例えば,〇〇手当月〇万円(残業代の先払いの意味を持ち,●時間に対応)というタイプ

 

 手当の名前は特に問題になりませんが,トラブル防止を考えるならばはっきりとさせておいた方がいいでしょう。こうした制度のメリットして

 

・予め残業代を支払うことで給与計算が楽になる(想定残業時間の範囲なら別に計算は不要)

・想定の時間までなら,早く仕事を終えるほど,時間に比べて給料が確保できるので,仕事の能率を上げる方向に進められる

(ただし,これは少ない場合には返還不要という前提があります。また,能率アップは他の方法もありえます)

・見た目の給与が高まるので,採用の際に訴求力が高くなる

 

という点が考えられます。ただし,最後の点は,採用の前の説明が不十分であると,実際の給与が低いのに錯覚させるためにこうした制度を使った等トラブルに至る可能性も高くなります。そのため,注意が必要です。

残業代先払い(固定残業代)を導入運用する際の注意点は?

 別のコラムでも触れていますが,固定残業代が問題になった裁判は多数存在します。こうした制度が問題になるのは,この制度が有効で残業代を支払ったといえるかどうかが問題になる場合です。そのため,注意点は有効性を後で問題にさせないという話になってきます。これは制度の作り方や運用の面で問題となります。

 

〇制度を作る際にどんな問題点が?

 制度を作る際には,従業員と個別に合意をするか・就業規則で制度を設ける必要があります。

 合意をする場合には,単に書面に同意をするだけでは不十分というのだ最近の裁判例の傾向です。特に問題になるのは既存の従業員に新しくこうした制度を設ける場合でかつ従業員の給与が全体として実質減る場合です。こうした場合には,合意(署名)だけでなく,様々な事情から見てその方が自分の意志で合意をしたというだけの事情が必要となります。代償的なもの・その他の事情をよく考えておく必要があります。

 実は就業規則の場合も同じようなことが問題となります。不利益な制度変更の場合にはその程度や必要性など様々な事情から合理性を認められる必要があります。このように,制度を設ける場合でも注意点はあります。

 

 また,合意については一応したと言えても無効となる可能性もあります。一部の裁判例では過労死基準等相当な時間の残業を想定したこうした合意を公の秩序に反するということで無効と判断したものがあります。飲食店や美容以外にも・IT関連・営業でこうした点が争われることもありえます。今後働き方改革の一環で上限規制が残業に設けられますので,こうした点も意味を持ってくるでしょう。

 

 このほか,制度を設けるうえでは,例えば,基本給組み込みのタイプではどこからが残業代で・どこからが基本給かをはっきりさせておく必要があります。ここがはっきりしないと結局固定残業代としての意味をなさないという点もあります。裁判例や考え方の中には,〇〇時間の残業代〇万円と時間と金額の対応を要求すると思われるものと,そこまでは不要(残業代がどこまでで,別にどの時間に対応できるかはっきりしていればいい)というものがあります。紛争予防という意味でいえば,前者の方が安全ではありますし,職場でのトラブルを防ぐことができます。

 ちなみに,比較的最近の裁判例の中には,飲食業で〇万円という手当のみが契約書にあるけれども,〇〇時間に対応という記載がなくても,固定残業代としては有効という判断をしたものがあります。これは,手当性の場合には時間の特定がなくても,どこまでが残業代かはっきりしているし,どの時間に対応するかも計算はできるからという理由によるものです。基本給タイプでも残業代〇万円と書かれていれば問題ないという裁判例もあります。

 また,●時間の残業代が給与に入っているというタイプは有効性を否定する(どこまでは残業代かはっきりしないという理由)裁判例があります。

 

〇運用上の注意点は?

 運用上の注意点として,実際の勤務時間が想定していた残業時間を超えた場合にどうするのかという話があります。当然想定時間を超えた残業があれば,その部分の残業代を支払う必要があります。問題は運用上,そうしたことが固定残業制が無効になってしまうことにつながるかという点です。

 

 問題になるのは,どれだけ働いても追加支給がない場合です。こうした場合に,裁判例の中には,無効にはならないと判断するものがあります。ただし,特に手当の名前が残業に対応するものではない場合には,この手当てが残業代といえるのかどうかという点で否定をする要素となりかねません。一部の裁判例の中では,追加支給・清算ができるように,●時間残業をしたというのが給与明細などで分かるようにしておくべきとしたものもあり,実際に有効性があるかどうかでこうした点を問題にするものがあります。

 

 そのため,余計なトラブルを防いで導入運用をする場合には,清算ができる仕組みを作っておく(たとえは,どれだけ残業をしたのか分かるようにする・清算の仕組みがあることを周知する)ことは意味があると思われます。

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