法律のいろは

2018年12月17日 更新残業代・賃金

エステや美容業界での労務問題?最近の流れ

 昨年(2017年)ころ大手のエステサロン運営会社の社長が労務問題の際に話をしていた内容が,ユニオン(いわゆる合同労組)側の公表で明らかになっていました。各業界の処遇改善のための活動とのことですが,なかなか経営者の考えていること・法令で現在定められていること・商売をうまくしていくためにはどうすればいいのか,といった点で齟齬が生じる場合もあります。
 少し前置きが長いですが,今回はこうした合同労組が関わったケースを念頭に対応などどうするのがいいか等を触れていきます。

ユニオン(合同労組)とは?どう対応すればいいのでしょうか?

 日本で会社に労働組合が存在するのはごくわずか(20%を切って久しいです)ですから,労働組合との団体交渉と言われてもピンとこない方の方が多いのではないでしょうか?
 自社に労働組合がなくとも団体交渉に応じる義務が出てくる場合があります。それが,このユニオンからの団体交渉の申し入れがあった際の話です。

 細かな話は置いておきますが,法令上の一定の条件をクリアした労働組合に対しては,組合員に自社の社員(重要なのは解雇や実質解雇が問題になるケースでは,経営者はもう従業員ではないと考えている方が組合員になったという話から団体交渉の申し入れがあるという点です)がなった場合には団体交渉に応じる義務が出てきます。こうした合同労組は広島にもいくつか存在します。

 団体交渉の申入れ(実際には組合員になった従業員の処遇問題,解雇ではないかという話や未払給料を支払ってほしいという話,その他の待遇の話もありえます)があった場合,どう対応すればいいのかまず問題となります。

 ここで全く無視をした場合には,合同労組側から「不当労働行為」ということで最終的には損害賠償請求を受ける(中間で「救済命令」の申立てを県の労働委員会にされます)可能性があります。
 ですから,全く無視はできず話し合い(交渉)自体はする必要があります。とはいえ,先ほど触れましたように,一定の条件をクリアしているところである必要がありますから,よくわからない場合には規約などの提示を求める必要が出てきます。
 ちなみに,こうした合同労組には地域的なもの(広島ではこちらの方が多いというか筆者の知る限りはこちらしかないような気がします)のほかに,エステユニオンのような特定の業界の処遇の改善を目的とした,その業界では働く方なら入れるというものもあります。

 ついでの話ですが,エステ業界や美容業界では業務委託という形をとっている場合も多いかと思われますが,形はこちらでも法律上は「労働者」扱いの場合もありえます。こうした方が組合員になったという場合に交渉の必要がないと構えると先ほど述べた面倒が発生することもありえます。

 先ほどから話し合いに応じないことは問題と言いましたが,相手方の言い分を飲まないといけないわけではありません。組合によっては無理な言い分を言ってくる可能性もあり,場合によっては毅然とした対応が必要になるケースもありえます。もちろん,法律に応じた言い分を言ってくるケースの方が多いかと存じます(もっとも,事実関係が争いになっている場合には,法律に応じたといってもその前提の事実が正しいとは限りません)。
 事実関係はどうであったか・証拠や法律的に見てどうかを事前に吟味したうえで,自社の今後(交渉の際の発言内容などは録音されている可能性が十分にありますので,それを後日公表されることでの風評リスクがあります。また,職場環境の整備と人の確保につなげていく点と現在金銭面などで折れる点のうち将来的に見て得策なのは何かなどの検討もあります)を考えての対応が必要になります。
 ちなみに,交渉の日時や場所についての提示が合同労組側からされる場合もありますが,都合が悪い場合などは変更を申し入れる点には問題はありません。また,特に中小企業では社長が出席したほうが話が早いという点はありますが,感情的な発言をしそうなどという場合には幹部社員や弁護士(依頼が必要です)に出席を依頼するのも意味はあります。

 ちなみに,一部社会保険労務士の方が団体交渉に出席をして交渉をしたという話を見かけたことがありますが,これは法令で禁止されている行為(簡単に言うとやってはダメな行為)ですから,顧問の社会保険労務士がいる場合でも関与の仕方は注意が必要です。

 このほか,一回の交渉で無理に解決をしないといけないわけではありませんから,次回までの課題を決めてその日は打ち切ることも可能ですし,どうしても折り合いがつかない場合には話の打ち切りをすることもあるでしょう。後者の場合に相手方がどうするかは相手方で検討をすることになりますが,裁判所の手続きに移る場合にはそこでの見通しを考えておく必要があります。

最近問題になったケース(固定残業代の有効性が問題となったもの)

 エステ業界や美容業界は,残業その他給与面・女性についてマタニティハラスメントがあるのではないか・産休や育休が取れない・美容器具などの自腹購入(いずれも大手の会社で問題になったこともあるものです)ということで,団体交渉や裁判になったものも全国的に見るとそこそこあるようです。

 実際に交渉を申し入れられた場合の対応は先に触れましたが,ここでは今年(2018年)判決のあったもので,固定残業代の導入の合意が問題になったものを触れておきます。

 固定残業代の細かい話は別途触れますので,ここでは簡単に触れておきます。固定残業代とは,残業がある程度予定される職場(理美容の業界では「練習」等,法律上は勤務時間とされる残業が相当程度あります)で残業代をあらかじめある程度支払うというものです。

 勤務する際の給与の一部になりますから,勤務の際の説明と合意あるいは就業規則にある必要があります。このほか,固定残業代にはハードルが高い有効であるかどうかという問題があります。今年問題になったケースでは,全国的に店舗を展開するエステティックサロンを運営する会社について未払い給与(残業代など)があったかどうかが問題になったものです。
 ちなみに,こうしたケースでは,合意あるいは就業規則の定めがないと残業代の先払いもないため,支払額は増えます。

 このケースでは,役職手当や技術手当という一見残業代と関係なさそうな手当に固定残業代が含まれていると会社側が主張したものの,求人説明会での説明の際にはそうしたものもない⇒合意はない,就業規則も従業員が見たケースもなく見れるようにしていたともいえない(この通りだと就業規則があっても雇用契約の内容とはならない⇒手当が無意味となる),と従業員側が主張をしていました。
 結論としていずれも会社側の言い分が認められないという結論でした。今後に役立つ点としては,複数の店舗がある場合には,各店舗の従業員に対して就業規則の内容が見れるような仕組み(制度を作っておくこと,説明資料を配布しておくこと)が必要でしょう。また,求人説明会で配布資料に説明の話が入っていない場合には,出席者の言った言わないの話になりますから,資料に入れておく必要があります。

 特に後者の点について,会社に現にいる従業員の話の信用性はあまりなく,求職活動のため出席していた方のメモにそうした重要な手当に関する記載がないことを重視した点が,事実関係が争いになった場合に意味を持つように思われます。

 この話は難しい点を含みますが,団体交渉で解決しない場合には,合同労組と関係のある弁護士から裁判などの手続きに至る場合もあります。先ほど裁判になった場合の話についても触れたところですが,業務負担になる一方・そう簡単に妥協できないという考えもありますから,こうした事態に立ち至った場合には専門家にも相談をして対応を決める必要があるでしょう。

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