従業金を採用する際に,特に期間を定めない方のほかに,期間を限定した(たとえば,平成29年6月1日から平成30年5月31日まで)従業員の採用の仕方も業務の運営方針との関係ではよく出てくるところです。こうした従業員を採用した場合に,途中で会社にとって継続が好ましくない(求めていた方と違っていたなど)場合や曖昧なまま契約を続けていくことへのリスク管理は,特に小さな会社を中心に甘いところが多いように思われます。途中でやめる場合にお互いに納得したうえでやめる場合はともかく,当初から何となく不満を言っていて後で無理に辞めさせられたといわれる可能性もあります。
今回は,こうした契約継続の話や途中での契約終了にどういったリスクがあるのかについて,簡単に触れていきます。次回は,最近でもこうした点が問題になった裁判例がありますので,そのケースについて触れていきます。
まず,契約の継続については,法律上定めがあります。それは,契約期間を定めた雇用契約に関しては,期間が満了した(先ほどのケースでは,平成30年5月31日)以降も従業員の方が働き続けた状況が存在して・会社側も特に異論を出さなかった場合には,契約を継続したという扱いを受けるというものです。この場合に,延長扱いになる雇用契約の期間は以前と同じ(先ほどのケースでは平成29年6月1日から平成30年5月31日までの1年間ですから,1年間)になります。給料などの待遇面も引き続き同じということになります。
こうしたこともありますので,雇用契約を続けるにしても給料や期間を変えていくのであれば,別途合意をする必要があります。明確にしておき後でトラブルになるのを防ぐのであれば,契約書をきちんと作って取り交わしておいた方がいいでしょう。
先ほどの話を裏返して言えば,会社側が引き続きの勤務について異論を出していた場合には,契約の継続が法律で認められる場合にならない(継続の合意が必要)になりますが,紛争が起きてから異論を言っていたという話をしても説得力が低くなる・紛争が大きくなるということにつながりかねません。異論を述べていたといのであれば,予め証拠に残る形にしておく(書面で伝える等)必要があるでしょう。
また,既に何度も契約更新がなされている場合には,これまでの裁判例及び法律の定めによって,契約の継続をしたものとして扱われる場合があります。ちなみに,前提として当該従業員側からの契約継続の申し入れが契約期間か終了後遅滞なくなされていることが前提となります。要は,会社が拒んだとしても契約更新の扱いを受ける場合があるということになります。
この話は期間雇用の雇止めの話(来年から無期転換の問題が現実化する話もあります)に関わる点でもあります。いずれ再度詳しく触れますが,
①それまで期間満了と更新が繰り返されてきたことで,今回更新せず終了することが,期間の定めのない従業員への解雇の通知と同等と考えられる事情が存在すること
②それまでのやり取りなどの事情から,従業員側に契約更新を期待してもやむを得ない合理的な事情がある
場合に,契約の更新をしたものと扱う内容になります。更新が問題になった場合には,①か②にあてはまる事情(①・②は抽象的なもののため)があるのかどうかが評価とともに問題となります。
こうした①や②にあてはまるケースがどのようなものかは,法律で定まられる以前以後を含めて裁判例で様々判断がなされているところです(有名や判断や最近の判断はいずれ触れる予定です)。
次回に続きます。