パワハラとは?どういったケースが想定されるのでしょうか?
ここ何年も労働問題での相談件数で一番多いのは職場でのいじめやパワーハラスメントであるとされています。法令などでは,職場での優越的な地位に基づ,業務上の必要性や相当性を逸脱した,言動によって職場環境が害されることとされています。言動のタイプは,①過大な業務要求②過少な業務要求③私生活への介入④暴行⑤暴言⑥いじめ行為,が挙げられています。特に女性がいる職場では,この内容以外にセクシャルハラスメントやマタニティハラスメントが問題にこともありえます。
パワーハラスメントは,言動の内容自体でダメであるものも多いですが,ミスの多い方に割と厳しい注意をしても直ちにはパワーハラスメントには該当しないと考えられる一方,業務経験のない新人の方に長く業界経験を持つことを前提とした要求がその態様を伴ってパワーハラスメントに該当する等,ケースバイケース・状況に応じてという面があります。また,上司部下の関係だけでなく,ベテランの同僚からの言動であっても・職場上有利な地位を持っている場合には,その言動がパワーハラスメントになることもありえます。特に,私生活の事項への介入や職場での人間関係で孤立させるような行為は,同僚等の関係でも問題になあることがあります。ベテランの方が割と介入などを行う場合には,注意が必要です。管理者と職員だけでなく,職員間でもこの問題が起きる可能性があるというところです。
職場での人員が足りないなどの理由で産休などが取りにくい環境であること・産休を取った後に降格などの不利益な扱いをすることは,マタニティハラスメントといわれるものに該当します。実際には,具体的なケースで,一定の扱いや言動に出産・妊娠・育休・産休を理由とする以外に合理的な理由がないならば,該当の可能性があります。最高裁まで問題となったケースは医療業界でのケースに関するものがあります。
利用者からの性的な嫌がらせや無理な要求などは最近カスタマーハラスメントと呼ばれるもので,この対応も問題にはなります。逆方向の話は虐待などの話が出てきますが,実際の事実関係や要求内容がどうなのか・業務提供内容その他も踏まえて,実際にハラスメントなのか,どう至った事情が必要なのかを考えていくことになります。いずれのハラスメント(上記でセクシャルハラスメントの問題は触れていませんが,この問題もありえます)も,対応をせず放っておくことで,精神的な負担から出てきた症状が労災に該当する・賠償請求その他の請求の原因になる可能性が出てきます。
管理者その他からのパワハラがあるという訴えがあった場合には?
管理者その他からのパワーハラスメントがあるという訴えがあった場合に,問題となるのはまずは事実関係です。訴えがあった時点で,離職を考えている・休みたいその他悩みがあっての場面かと思われます。実際にどこまでの悩みがあるのか・その方の状況がどうなのかは,その方次第の状況によります。
業界の経験やそれまでいた職場状況などから,当然と思っている事項が特に他の業界からの転職の方などには,当然ではないことはままあります。業務多忙である・人手不足である場合には,手取り足取り指導できない・厳しい言動になることはありえますが,ここに対する個人の捉え方はその方により異なります。利用者の方にとっての安全にかかわる事項は厳しく指導することにはやむをえない面もありますし,ミスが繰り返される場合には相当に厳しくなることもやむをえない面もあります。ただ,人格を否定する内容や注意内容が一方的にしつこく叱責する等の態様によっては,それだけでアウトになるものもあります。
また,何かしらの問題を抱えた従業員の場合などその方の特性を踏まえると,同じものでもハラスメントに該当しやすくなります。そのため,事後にはどういった言動があったのかを時系列を含め確認するとともに,被害を訴えた方の特性についても検討が必要になっていきます。確認の際には,どういった場面での言動なのか・その態様・そこまでするだけの必要性(それまでのミスの内容や回数など)も確認は必要です。聞き取りはご当人以外に,客観的な資料や他の方からの確認も必要です。小規模な事業所では,第三者的な方からの確認は難しいかもしれませんが,いずれにしても,偏りのない確認は必要になります。
一定の事実が確認できた場合には,パワーハラスメント行為に該当するかどうかの判断とそれに対してどこまでの対応が必要なのかの判断が必要になります。管理者に注意やその他処分が必要なのかどうか・事実としてハラスメントと呼べるほどのことはなかったかという点の確認になります。中途半端な対応は,管理者・訴えた方それぞれから不審を買いトラブルになる可能性はあります。
今までは事後の話でしたが,研修でハラスメント関連の話(実際にどういった言動がハラスメントになるのか等)はされているかと思われます。人の流動性が大きな業界(大学などで福祉を勉強した方以外に途中から他の業界から入ってきた方では経験その他で差があります)の場合には,経験その他を踏まえて注意などしていかないと,法的な問題(ハラスメント等)以外に離職が続く,職場環境が悪くなる(このこともハラスメントの要件とされています)ことも生じます。