法律のいろは

2017年4月16日 更新労働問題のご相談

従業員が退職する際に,誓約書を取り交わした競業避止の合意の効力が問題になったケース(その①)

 従業員が退職した後に,在職中の様々な情報をもとに同様の仕事をした場合に,お客さんが取られるのではないかという不安をお持ちの方もおられるかと思われます。一部は別のコラムでも触れましたが,不正競争防止法という法律で禁止されています。ただし,どういう仕事をするかは原則自由ですから,在職中と違って,原則として退職後には制限をかけられません。

 そういった点もあって退職後に「競業」となる事柄についての誓約を設ける合意書を交わすケースもあるでしょう。こう言った合意の効力が問題となる裁判例は様々あるところですが,今回は最近出された裁判例の一つを紹介します。

 

 問題となったケースでは,退職後に元従業員が行った業務に関し,合意の反するからという理由で差し止めと損害賠償請求を会社側が行ったものです。大きな争点として,根拠となる合意の効力が問題となっています。

 前提として,合意の存在自体も問題となる可能性がありますが,このケースでは書面が取り交わされています。一般に,競業しないという合意は有効なのが前提となりますが,無制限に誓約することは許されません。元従業員の地位や制限を加えられる範囲(機関や態様・内容),会社側の利益確保の必要性,元従業員への代償の内容と有無などの事情を考慮して合理的な範囲である必要があります。不合理と判断されると,結局無効になってしまうリスクが出てきます。

 

 問題となったケースでは,ゲームソフト関連の業界で,退職後3年間・地域的制限なく,競合する会社への就職や競合事業を起業すること・元の会社の顧客への接触禁止などの制限がかけられています。こうした制限への代償措置が講じられているかは争点となっていますが,結論として講じられていないと判断をされています。

 裁判所の判断は,大きな制限がそれに見合う代償措置がなく設けられていることを理由に無効であると判断をしています。結論として,会社側の請求は退けられています。制限の内容がどの程度であるのかを検討し,制限の程度が大きい場合にはそれにみあうだけの代償措置が講じられているかを検討しています。代償措置の内容は金銭面など考えられますが,競業禁止の合意書を準備する場合には,こうした制限の内容・程度,代償措置としてどこまで準備できるのかを慎重に考える必要があります。その際には,弁護士などに相談するのも一つの手段でしょう。

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