法律のいろは

2022年7月27日 更新労働問題のご相談

降格処分やそれに基づく減給を行う際の注意点(有効性を認めた・否定した最近の裁判例を踏まえて)

○業績不良等による考課・や降格と減給の注意点とは?

 

考課を給与に反映させるにせよ,降格させるにしてもその根拠は必要です。降格や考課については裁判例上会社側の裁量がはたらくとされているものですが,終業規則や雇用契約で制限が加えられている場合には,その制限を受けます。また,裁量とはいっても評価制度が存在する場合にはそこに準拠する必要がありますし,評価の根拠となる事実関係が存在しない場合・社長の感覚等による場合が裁量逸脱であることは言うまでもありません。考課による減給も賞与など考課と連動する給与に限られます。

 

 雇用契約については,業務内容や部長など一定のレベルでの仕事と限定されている場合にここから会社側の評価によって降格などをすることはできません。

裁量の逸脱は例えば懲戒処分でも一階では1/10が限界なのでここに匹敵あるいは上回る内容の減給につながるもの(降格によって給与額の変動が定められている場合には,変動がどこまで及ぶかが問題になります)・先ほど触れた評価の前提を欠くものや是正指導を行っておらず能力不足の根拠に欠ける場合その他相当な理由がない場合も該当します。降格になった際には,就業規則やその中にある給与規定によって,職務や立場による給与が定まっている場合には,そこに従っているのかどうかは当然問題になります。その定めよりも言及されているナルト理由のない減給になります。

育児休業その他の取得を理由とする場合には,この不利益取り扱い自体が無効とされる可能性がありえます。退職勧奨に応じない場合に,配置転換・降格⇒給与減額となる場合には,その根拠となる理由や事実関係が大きく問題になります。

 

○最近の裁判例の概要とは?

 

①東京地裁令和4125日判決

 先ほど下げた裁判例のうち,東京地裁令和4125日判決では降格が無効であることと降格による給与が下がった分の請求が認められています(従業員側からの請求は賞与や残業代・いやがらせ行為に対する賠償請求も存在します)。

問題となったのは,ネイルなどの関係の美容商材などを取り扱う会社で勤務する係長から降格や言及を受けた従業員が会社に対し,先ほど触れた請求を行ったもののようです。

 

 判決文からは,このケースでは勤務態度や能力に問題があり上司から指導をしても改善されない等の事情から降格に合理的な理由があるのかどうか(言い換えると,事実関係に異なる部分が存在し不合理なものと言えるのかどうか)が問題となっています。このほか,実際に支給されていない賞与の請求ができるのか・いやがらせ行為の存在があるのかどうかも問題となっています。

 

 このケースでまず問題となっているのは降格の原因となる業務成績不良や素行不良の事実の存在とともに是正指導を行ったのかどうかという事実関係についてです。判決の認定によると,同僚からのクレームや注意は存在したものの上司からの指導は存在しないことから是正指導は行っていないとされています。判決では明確に成績不良などを認定はせずにクレームの存在を認めていることからするとある程度の問題はあることを前提にしているものとは思われます。ただ,是正指導がないことや大きな不良とは言いにくい点はありますし,是正指導なく直ちに降格や減給の不利益を与えることは裁量違反であることを前提に是正指導がないことを根拠に判断を行っています。

 降格や減給につながる評価の裁量逸脱を認めることで降格や言及は無効となります。ただし,同じく事実関係が問題となったいやがらせ行為は認めていません。このことは従業員側の主張するいやがらせ行為の存在を立証できないことを踏まえてのものです。賞与については,当然にもらえるものではなく会社の支給決定があって初めてという賞与の性質を踏まえてのものと思われます。

 

 

②東京地裁令和4131日判決

 このケースでは財団に勤務していた元従業員が人事考課に基づく降格と減給の無効に基づく給与の請求や賞与の請求を行ったものです。結論から言えば,請求は認められていません。

 

 この財産については給与制度の中で降格や昇給の定めや降格の際の減給の内容・人事考課の規定や賞与の規定が存在するようです。内規で降格の要件や人事考課の仕方や評価期間が定められています。したがって,降格や人事考課はこの内規などで定めた方法に従って行う必要があります。この財団での考課の要素はたくさんありますので,ここでは単純化のために詳細は省略します。ただ,このケースでは問題となる降格などの前に労働組合に加入していた元従業員側と財団には別に係争案件があった模様で,この影響の有無などの事実関係も問題となっています。

 

 争点は,就業規則に基づく降格と言えるのかどうか(降格に基づき給与へ減給する制度)・制度に基づくとして濫用的なものと評価できるか・賞与の請求を行うことができるのか等の点です。このうち,就業規則に考課とそれに基づく降格などの制度が存在し,それに基づいて行っている以上は,就業規則に基づかないということは難しく実際に認められていません。

 考課が濫用かどうかという点も結論として否定されています。考課の内規が存在し,その方法や評価形式・評価者が定まっている場合に,勤務制S木不良を裏付ける事実関係が存在する限りは濫用あるいは不合理ということは言いにくく,実際にこのケースでもそのように判断されています。賞与が財団決定まで支給請求を行うことができないのはその性質からも言えることですが,就業規則で規定を入れている場合には,確定額を保障する制度でない限りは同様に請求は困難です。

 これらの理由から,いずれの請求も認めてはいません。

 

③こっれらのケースから注意することは?

 まず,就業規則やその他の内規で考課の方法や考慮要素・時期,降格の要件や減給との連動性を示している場合には,その内容に従って対応をする必要があります。勤務成績不良の場合には,その裏付けとなる事項が存在すれば,勤務不良⇒評価の不合理さを争うのは極めて難しくなります。ただ,勤務成績不良の場合にはその是正指導はきちんと行っておくべきでしょう。

 

 次に,素行不良や職場での問題が指摘されている場合には,きちんと上司から是正指導を行うとともに,その記録をつけておくべきです。就業規則がない場合には一見フリーハンドが存在するように思われますが,大きな不良であれば是正指導がないのは不自然であることや是正の機会を与えずにいきなり降格や減給の不利益を与えるとなると,逸脱の評価を受けるリスクがあります。

 内規や就業規則の定めがある場合には,考課や面談の記録がきちんと存在するはずで,ここを抑えられているとなると降格を争うのはかなり難しくなります。

 

 問題となる方と退職やその他処遇でトラブルが存在する場合には,大きな紛争につながりやすいので,特に運用ルールがきちんとしていない中小企業では記録はきちんと取るとともに社長やその右腕から面談で注意はしておく必要はあります。

 

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