法律のいろは

2022年3月31日 更新労働問題のご相談

出向や派遣事業における労災事故の賠償責任はどうなるのでしょうか?

出向の場合での出向元や出向先の労災関係での義務とは?

 既存の自社の従業員を他社で稼働してもらう場合には,派遣業の許可を有している場合には労働者派遣・出向に関する契約をしている場合には出向という方竟をとることが可能です。このうち,出向には,単に他社での業務に従事してもらう在籍出向と呼ばれるものと他社に転職してもらう転籍出向というものが存在します。転籍出向の場合には,その方は自社の従業員ではなくなります。

 在籍出向であっても従業員が業務に従事するのは他社ということになりますから,出向先の他社での業務指示に従うことになります。この意味で出向元である自社と出向先である他社との間でその従業員の方に対して二重の雇用関係が生じることになります。

 

 したがって,転籍出向の場合はもちろん在籍出向の形であっても,出向先である他社は業務についての安全配慮義務や健康配慮義務といった雇用契約に基づく労災を防ぐための措置をとる義務を負うことになります。これに対して,出向元である自社については,転籍出向の場合には雇用契約が終了して復帰がない場合にはこうした義務を負わないことが多くなろうかと思われます。もちろん,出向にあたっての合意の中で義務や負担の合意をしていればその合意に従うこととなり,それによって不義務や負担が生じる可能性があります。また,一定期間経過後に自社に復帰するそれまでの勤務状況について配慮するとの合意などがあればそちらが優先することになりますから,転籍出向だから何も負担はなくなるというわけではありあせん。出向についての合意をする場合には,こうしたリスクや負担を考えてきちんと合意をしておく必要があります。

 これに対して,在籍出向の場合には,その従業員の方は自社の従業員ですから,雇用契約に基づく安全配慮義務や健康配慮義務は負うことになります。ただし,実際の業務の指揮命令や業務状況の把握などは出向先である他社が行うことになりますので,基本的な義務は出向先が負うことになります。もちろん,過重勤務になっている・健康診断結果に問題がある・パワハラなどの訴えがあるのに放置をしていれば,その改善を出向先に求めるなり,出向の契約を解除して従業員に戻ってきてもらうなりの対応をしていないことになりますから,義務違反となる可能性はあります。この場合の対応や解除などをどうするのかなども出向についての合意できちんと定めておく必要があります。

 

労働者派遣の場合はどうなのでしょうか?

 労働者派遣の場合には,雇用契約は派遣事業主(派遣元)と従業員の間だけにあり,派遣先は派遣事業主の従業員と雇用契約はありません。あくまでも派遣事業主の従業員のままですが,派遣先で業務提供をしており,業務の指示などは派遣先が行うことになります。当然,業務が過重なのかどうか・職場でパワハラなどがあるのかは派遣先が把握をしていることが通常と思われます。また,雇用関係がないとしても,過重な業務やパワハラが存在した場合には,その防止を怠ったといえる事情があれば,損害回復のための不法行為と呼ばれる制度による賠償請求を派遣先は受けることになりますから,健康管理や安全配慮義務と同等の管理義務を負うことにはなります。

 

 厚生労働省が出している指針の中にも派遣先が安全衛生事項(健康管理や事故防止のための措置など)を定めています。これらの違反の有無やその態様も先ほど述べた管理義務の違反があるかどうかに関係してくるものと思われます。したがって,シフトや健康管理・パワハラの有無などは派遣先もきちんと管理や是正を行っていく必要があります。派遣事業主も雇用契約が存在する以上健康配慮義務などを負っています。派遣先での就労状況やパワハラなどの苦情受付や相談・客先である派遣先であっても業務の状況の改善を求めていくことはこれらの義務を果たしているかにかかわる事項です。

 

 労働者派遣については行政上の指針などが様々出されており,どういった点に注意するかの材料となります。

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