法律のいろは

2021年10月3日 更新労働問題のご相談

労働組合・合同労組との交渉での注意点と最近の裁判例

○「労働組合」との交渉とは?

 多くの中小企業では会社別の労働組合はないものの,地域ごとのコミュニテイユニオンと呼ばれる合同労働組合や最近では退職代行の関係で労働組合を名乗る「団体」が交渉を求めてくることもあるようです。後者2つは会社に労働組合がなくても,法律上の労働組合の要件を満たしていれば,「労働組合」として対応する必要が出てきます。

 

 

労働組合法という法律での「労働組合」の要件を満たした「労働組合」に対しては,いかに自社の組合でなくても従業員がそこに加入すれば,労働組合として対応をする必要が出てきます。

 

 労働組合は,現在今後の労働条件等の交渉をする権限を持っています(過去の未払い残業代など過去の権利関係には当然及びません。別途の委任が必要になります)。また,労働組合法という法律で,「誠実に交渉をすること」や「組合活動」の妨害が禁止されています。違反には,労働員会への救済申し立て⇒救済命令を出すかどうかの審理と判断⇒命令が確定すると会社側は従う義務を負います。ここで裁判でさらに争うことはできます。

 救済命令には,お金の支払いを命じるもの・職場復帰を命じるもの・査定などのやり直しの他に一定の行為をしないこと・違反を認めて謝罪すること(ポストノーテイス命令)などといったものがあります。場面によって出される命令の内容は異なります。この命令は従う義務があるのみならず,先ほどの違反(不当労働行為と呼ばれます)は損害賠償の根拠になるという点が無視できません(争いがある場合には裁判所への提訴が必要になります)。

 不当労働行為があったと報道されることによる風評リスクを含め無視はできません。

○「誠実な交渉」とは?

 

 誠実な交渉とは文字通り情報交換を行い話し合いをきちんと行うことを意味します。法律上は団体交渉拒否が「不当労働行為」にあたるとされ,情報提供や説明を十分行うこと,自らの立場に固執し全く譲歩の余地を見せないことが該当すると考えられています。

 

 言い換えると,相手の言い分にした側寝ればいけないわけでもありませんし,詰問行為に回答を余儀なくされる場でもありません。社長の同席説明をもとめられても必ず応じないといけないわけではないでしょう。もちろん,説明を尽くす・話し合いを円滑に進めるために応じるという選択もありえます。説明をする際には何かしらの資料の準備が必要になることもありえます。

 

 ごく最近,公立大学法人が労働組合との交渉で,一定年齢上以上の方の給与抑制をするかどうかで団体交渉を行った件で,交渉拒否にあたるかどうか・その際の救済命令の内容が問題になったケースがあります(仙台高裁令和3323日判決)。

 交渉拒否になるかどうかは,説明やそのための資料を提供しない・大学側が自らの態度に固執をしていたという事実の有無と事実がある場合に交渉拒否あたるかどうかです。労働委員会及び裁判所の判断では,事実の存在と団体交渉拒否にあたるとしたうえで,労働委員会の認めた団体交渉に応じよという命令を裁判所が取り消しています。

 

 補足しますと,救済命令を出すかどうかは労働委員会(都道府県ごとの行政機関です)の判断ですが,裁判所への提訴で争うことができます。このケースでは交渉をしても話が進まないうえに時間が1年以上経過し,給与の抑制措置を大学側が実施した・その後での救済命令を認めるかどうかとその内容が問題となっています。

 裁判所の判断では,団体交渉拒否が存在しても,既に処遇内容が変更した後に余ぐう内容変更をするかどうかの交渉を行ったとして,団体交渉を行っても意味がないから団体交渉に応じるよう強制できないというものです。このほかに,先ほどの「ポストノーテイス命令」により違反の事実と謝罪をしてもらうことで十分だろうという判断があります。

 

 簡単に言えば,交渉内容であった処遇の変更を既成事実化されると,変更するかどうかの交渉は意味がないから強制できないという話になります。この裁判所の判断は高等裁判所レベルの判断ですが,確定した判断ではないということ・結局風評面でのリスクは残すという点には注意が必要です。また,就業規則の変更を伴っての場合には結局事後で裁判を抱えるリスク(団体交渉拒否したと評価される点の影響する可能性はあります)があります。もちろん,個別の方が提訴などしないといけないので,そうしたことが事実上難しいということはあるでしょう。

 また,合同労働組合などで問題となる個別の方の解雇・退職問題や残業代などの話は話を打ち切る場合には,別途個別の裁判あるいは労働審判への意向になる可能性があります。その際の見極めをする必要があり,単に既成事実がどうという話とは異なってくるものと思われます。

○「正当な組合活動の妨害」とは?

 小さな会社での団体交渉では,解雇なのかどうか・給与面の問題が個別の従業員について問題になるケースが多いと思われます。その方がまだ勤務をしている際には,証拠を集めようしている行動その他をとがめていいのかなどが問題になることもあるかもしれません。他の従業員や職場への影響も場合によってはあるためです。

 

 法律上,「正当な組合活動への妨害」「不利益取り扱い」は不当労働行為とされています。ここで「正当な組合活動」は広く取られており,例えば,パワハラ等の証拠をとる(自らの身を守る)ための証拠収集は該当する可能性が高いです。とはいえ,他の従業員も業務していてパワハラの可能性のない場面や更衣室の様子を撮影する・録音することまでは該当しません。

 例えば,パワハラであればその方と接触しないようにする・面談の場での問題であれば,その記録を作り開示請求には応じるということを伝えることで対応は可能です。

 

 安易に不利益な扱いをすると,不当労働行為ということで相手に武器を与えかねませんので,注意をして対応をする必要があります。

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