法律のいろは

2021年6月24日 更新労働問題のご相談

カフェなどで店長として,アルバイトなどの管理を行っていた場合でも残業代は生じるのでしょうか?

残業代や勤務時間の規制が及ばない管理監督者とは?

 飲食店やサロンを複数店舗展開している場合,それぞれの店舗には店長・マネージャーなどその店舗の運営を任せている方がいることが多いのではないでしょうか?店長としてアルバイトなどの採用に関わる他シフト決めも行う一方で,店長自らシフトにも入ってサービス提供をしている(特にアルバイト等の勤務する方が少ない日時)場合に,雇用関係の法律上どのような保護が及ぶのかは注意が必要です。

 

 労働関係の法律では,労災に関する規制や安全配慮義務(心身の故障につながらないように勤務内容や時間その他に配慮する仕組みを作る)が及ぶことは言うまでもありません。ここと関係はしますが,稼働時間や休日に関する規制が及ぶのか,残業代の支払い義務が会社側に生じるのかが問題になります。

 2021年5月現在すべての業種ではありませんが,残業代の上限規制がありますが,この違反があったとしても残業代の割増賃金支払い義務は生じます。それとは別に,農業に従事する方や管理監督者など法令で規定されている方は,その勤務形態などから休日や時間規制等を及ぼすことが適当ではないとされています。言い換えれば,残業代も生じないことになるので,ここに該当するのかどうかが問題になります。また,深夜残業の規制は及びます。

 

 ここでは管理監督者というものに触れますが,しばしばマネージャー・店長が該当するのかどうかが残業代請求の裁判や交渉などの中で問題になります。労働条件の決定や労務管理を経営者の分身として行っているかどうかが特に行政側の解釈では重視されてきました。この流れの中で,①労務管理に関する指揮監督権限を持っている②出金と退勤時間を自由に決めることができる③他の方に比べてふさわしいだけの給料や処遇を受けていることが,裁判例の中では重視されてきました。こういう立場の方であれば,勤務時間の規制を及ぼすのは不適当という考慮に基づくものです。

 ごく最近の裁判例の中では,管理者という方は各部門ごとに経営者の分身といえる立場であることを重視するものが存在します。そこでは①ある部門を統括する立場かどうか②部下に対する労務管理に一定の権限を持ち評価などにもかかわっていること③残業代に代わる手当などをもらっていること,等が考慮されています。

 言い換えると,単に名前のみが重視されるわけではなく実態としてどこまでの待遇や権限を持っているのか・立場なのか等が重要になってきます。

 

 

 

どこまでの状況であれば「管理監督者」となるのでしょうか?シフトへ入るなどの事情は同考慮されるのでしょうか?

 以前ファーストフード店の店長やフランチャイズのコンビニの店長について,先ほど述べた話を踏まえつつ,「管理監督者」でないとされたケースがあります。そこでは,アルバイトを含む勤務シフトを決める・採用決定に関わる・自分の勤務スケジュールを決める権限があっても,営業時間などについて本部の指示に従わないといけない点などが考慮されています。

 

 先ほど述べた最近の裁判例の流れの中で,飲食店を営む会社で店舗のカフェ部門の店長を任せている方について「管理監督者」になるのかが問題になった裁判例が存在します(東京地裁令和3年1月13日判決)。問題となったケースでは,残業代請求に対して,会社側が管理監督者にあたるということを理由に反論したというものです。

 結論から言えば,このケースでは管理監督者には当たらないと判断されています。このケースで,裁判所の事実認定と判断によれば,①アルバイト従業員のシフトや評価を行っていたけれども,評価の最終決定は社長が行っていて,それだけでは社長の分身としての役割とはいいがたい②その方自身がシフトに入って稼働していたことが多かった③他のスタッフなどと比べて格段に手当をもらっているわけではなく,残業代を補う待遇を受けていたとは言いにくいということ,が挙げられています。

 

 判決文からは,会社側は,アルバイトスタッフの採用や解雇に至るまで関わる権限があったと主張しているようですが,証拠がないとして採用されていません。これまでの裁判所の判断で考慮されていた点と同様の点が考慮される傾向は続くように思われます。そこでは,権限についてはその部門や店舗で社長の分身といえるだけの権限があるか(本部や社長にどこまで最終権限があるのか)・自らシフトに相当程度は言っているのか・手当も絶対額だけではなく他の従業員と比べてふさわしい待遇といえるだけの理由と違いがあるか,に注意をしておく必要があります。権限はあらかじめ定めておくこともありますし,運用でどうであったのかも重要になってきます。

 いざトラブルになったときに主張するにしても見通しを考えて対応をする必要があります。あらかじめ,その方の処遇を考えて待遇や権限を決めておく等の対応が必要になるでしょう。

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