法律のいろは

2021年4月19日 更新労働問題のご相談

社員がフリーランスで働く場合のメリットと「フリーランスガイドライン」を踏まえての対応の注意点

 ここ最近は一部の社員に個人事業主・フリーランスとなってもらうケースが見られるようになりました。後述のように社員からフリーランスになることで、働き方などのメリットが出て来る一方、雇用形態での就労でなくなることから保護が及ばなくなるものもあります。この度、フリーランスについては「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、「フリーランスガイドライン」といいます。)が公表されたこともあり、こういったフリーランスとして働いてもらうことについての注意点も含めて取り上げます。

社員にフリーランスで働いてもらうメリットは?

 近時、大手の企業で優秀な人材が自らの意志をもって成し遂げていけるよう支援し、それに報いることを目指し、フリーランス化することが増えてきました。契約の切り替えを希望する従業員が、会社と協議の上、雇用契約を修了し、個人事業主(フリーランス)としてあらたに請負契約や業務委託契約を結ぶことになります。

 こういった従業員から個人事業主(フリーランス)となることの一番のメリットは、元勤めていた会社以外の会社や個人の仕事も請け負って行うことができるようになることでしょう。最近コロナ禍もあって、副業が解禁されることも増えてきているようですが、それでも事前に届け出や許可が必要であること、場合によって認められないこともありうることからすると、より個人ごとの興味に応じた仕事にも取り組めることになるでしょう。また、従業員でなくなることから、朝の朝礼や会議などの拘束がなくなり、時間や場所の誓約なく、自分で自由に仕事を進めることができるようになります。

 会社としても、その分フリーランスになった方々が主体性を持って仕事に取り組むことでモチベーションの向上・人材が他に流出することを防ぐことが出来ると言われています。また、賃金や賞与・退職金などの人件費削減にもつながることもあるとされています。

 

フリーランスになった場合の対応の注意点とは?

 もっとも、フリーランスに変更したからといっても、名ばかりで、結局従業員とさほど変わらない形での勤務状況を続けさせている、といった場合には、雇用契約のときと同じく、労働基準法の制約が及ぶ場合がありますので、注意が必要になります。現行法上、「雇用」に該当する場合の判断基準については、あとから触れます「フリーランスガイドライン」でも規程されていますが、一番は「使用従属性」、つまり事業者の指揮監督の下における労働で、その対価として報酬をもらっていると評価できるかによって判断していきます。また、その判断を補強するものとして、事業に必要な機材等を発注者である事業主と、受注を受けたフリーランスのどちらが負担しているか・特定の発注者への専属性が高いといえるかどうかなどを見ていくことになります。

 ですから、契約を切り替えるときに特に事業者の方で、雇用の場合と業務委託・請負の違いを意識した対応をしていないと、結局雇用と同一とみなされてしまう可能性が出て来ることになるのです。「雇用」でないとされると、残業代や解雇の規制、有給休暇や労働時間の規制、労災等労働法制で定める土労働者保護の法制度の保護が及ばなくなりますが,あいまいな対応をしているとこれらの規制が及ぶ場合が出て来るようになります。

 したがって、従業員のときに担当してもらった職務と同じような内容を引き続きフリーランスになったあともしてもらう場合であっても、従業員のときのように仕事を行う場所や時間の拘束をすることはできませんし、仕事の進め方への指示もできません。こういった点が切替できずに以前と同じような仕事の進め方になると上記のように労働法の適用を受けることになりますので、注意が必要になります。

 また、最近ではコロナ禍に関連して、休業手当や感染症対応休業支援金・給付金の支払を免れることもあり、遡って雇用契約から業務委託契約に切り替えるケースも見られるようですが、これについても切り替え時にきちんと従業員の方に説明しないと後でトラブルとなりかねません。

 

この度公表された「フリーランスガイドライン」の内容は?

「フリーランスガイドライン」には、上記で触れました労働関係法のほか、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」といいます。)も含めた適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性あるものとして策定されています。

 この中では、「フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項」として、フリーランスとの取引に係る優越的地位の濫用規制についての基本的な考え方や、発注する際には取引条件を明確にする書面交付が必要であること(下請法3条)、独占禁止法・下請法で問題になる行為類型など定めています。そのほか、仲介事業者が間に貼って取引を行う場合の注意点なども定めています。

 

 フリーランスでの形態で取引を行う場合は今後自社においても、また取引相手との間でも増えていく可能性がありますので、今後はこれまでの各法における規制の他、今回の「フリーランスガイドライン」の定めも踏まえて法にのっとり適正な取引を行うよう意識すべきでしょう。

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