法律のいろは

2021年1月20日 更新労働問題のご相談

外国人材の方の社会保険や年金はどのように対応すればよいでしょうか?

労働保険・社会保険とも原則として日本人と同じ条件で加入が必要

 労働保険は労災保険と雇用保険を併せていう場合に使われます。労災保険は業務上または通勤上の災害による傷病に対して支給される補償です。怪我が発生しやすい業務内容の場合はもちろんのこと,通勤時に事故に遭う・業務中あるいは新型コロナウィルスなどに感染する場合もあります。こういった場合に備えて雇用主としては従業員の方の国籍や雇用形態を問わず、加入しなければなりません。

 雇用保険は1週間の所定労働時間が20時間以上で、なおかつ31日以上の雇用継続の見込みがある従業員が加入対象になります。従業員の方が失業した場合、育児休業などで会社を休んだ場合に支給されます。

 また、社会保険とは、健康保険、介護保険・厚生年金保険などをまとめた呼び方で、これらについても加入要件に当たれば、日本人の従業員の方と同じように加入しなければならないとされています。

 もっとも、日本と社会保障協定を結んでいる国から来ている外国人の方については、母国で社会保障制度に加入していることが前提になりますが、さらに日本の社会保険に加入すると保険料が二重払いになることから、加入の必要がないとされます。

 外国人の方の母国が日本と社会保障協定を結んでいるかどうかは日本年金機構のホームページに社会保障協定の発効状況、発効時期・対象となる社会保険制度などが掲載されていますので、それにより確認すると良いでしょう。社会保障協定が発効済みとなっている国でも、健康保険も含めた社会保険のみか、社会保険と雇用保険、年金だけなど対象がばらばらです。実際のところ日本で働くという場合は年金のみが対象になっている国が大半となっています。年金が対象になっているときは、保険料が掛け捨てにならないよう、日本での年金加入期間について協定を締結している国での年金制度に加入していた期間とみなし、その国での年金支給要件を満たせば受け取れるようになります。

 例えば、近時来日数が増えてきているベトナムの場合、社会保障協定は令和31月の段階で締結されていません。

外国人の方が社会保険に加入したくないと言ったときは?

 前述のように社会保険については外国人の方でも加入要件に該当すれば加入しなければならないということになりますが、そうなると受け取る賃金から社会保険料が天引きされることになります。このことについて外国人の方が最終的に受け取れる手取り額が少なくなるので、健康保険や年金などに加入しなくてよいというケースがありえます。こういった場合に雇用主としてはどのように対応すればよいのでしょうか?

 しかし、前述のように加入要件に該当する以上、適用が除外される要件がないのに外国人の方の希望に応じて、個別に社会保険の適用を除外することはできません。

 そのため、雇用主としては、外国人の方を採用する際には、日本国内では会社で働く場合、要件を満たせば外国人の方でも社会保険に加入しなければならないこと、各種保険料を始め給料から控除されるものについては、外国人の方に理解できるように説明しておくことが必要になります。特に健康保険料や年金にいては、病院を利用しない・あるいは老齢年金を受け取れる年齢までまだだいぶ期間がある場合には、自分には必要ないと考えられる外国人の方もおられると思います。

 ただ、健康保険は病気や怪我で病院にかかったときの治療費の3割負担以外にも、病気などで会社を休んだ場合の傷病手当金など、働けなくなったときには所得保障もある点を説明しておく必要があります。また、年金についても老後に受け取る場合だけでなく、病気や事故などで障害が生じたときに受け取れる障害年金の制度や、年金に加入しているときに支払をしている本人が死亡した際、その遺族の方に支払われる遺族年金の制度があることも説明しておくべきでしょう。また、後述のように場合によっては年金保険料の一部返還が求められる制度もある点を伝えておくことも必要と思われます。

外国人の方の希望に応じて社会保険等に加入しなかった場合は?

 外国人の方の希望に応じて請負契約を結び、実際には雇用契約と同様の対応をした場合は、雇用主側が法的責任を問われることになりますので注意が必要です。

 具体的には、雇用保険・健康保険等の加入手続きをしない場合は罰則として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

 また,技能実習の場合は雇用保険等未加入であったということが「労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」に該当するとされかねず,技能実習計画に対する認定取消となるリスクがあります。特定技能の場合でも、適合特定技能雇用契約の適正な履行について、特定技能基準省令に規定される基準への適合が求められており,その中に「労働社会保険及び租税に関する法令の遵守」が求められています。そして特定技能基準省令第2条10号では、事業に関する労災保険法による労災保険に係る保険関係の成立の届け出その他これに類する措置を講じることが必要とされています。これが満たされないと欠格事由に該当することになり、特定技能実習生の受け入れができなくなりますので要注意です。

 

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