法律のいろは

2020年12月15日 更新労働問題のご相談

外国人材を活用する場合の注意点(在留資格「特定技能」その2)

雇用契約に関する規制の内容とは?

 在留資格「特定技能」については,雇用契約の内容や雇用主自体に,法律上一定のハードルのクリアを要求されています。契約である以上は,内容は原則自由(雇用関係は一定の規制がかかります)のはずですが,プラスアルファの規制がかかっています。

 

 規制の内容に入る前に,特定技能1号の場合は在留資格の更新(当初は長くても1年)などを含めても通算で5年という制限があり(5年を経過すると帰国するよう最初に制約するという性質があります),期間の定めのない雇用は想定されないという点に特徴があります。契約期間を更新するか・終了するか,終了する場合の無期転換の問題がある一方で,日本での就労には他の在留資格変更がない限り限界があるというのが特徴となります。併せて,有期雇用ということですので,法律上の雇用契約の上限が存在すること(3年,もごく一部で例外あり),契約途中での雇用主からの契約解除(解雇)には極めて大きなハードルがある(やむを得ない事情を要求)点は注意が必要です。仮に退職勧奨を行い合意解除となっていても,裁判例上合意をしただけの事情が要求されています。

 規制の一つ目は各種労働法令の規制に合致したものであることです。労働法令は,例えば,強制貯蓄や天引きが禁止(後者は例外あり)されており,36協定の締結があっても残業の時間規制や最低賃金などの規制が存在します。契約の終了についても規制が存在します。そのうえで,関連して二つの規制が存在します。一つ目は所定労働時間についてです。これは日本人(日本国籍)と比べて所定労働時間が長くないことが要求されます。雇用契約の内容から見て不平等な長時間労働となっていないかの規制がなされることになります。二つ目は,同一の技術水準や経験と業務,同一の権限や責任を持つ日本人と同等以上の報酬であることです。

 後者については,最近言われる「同一労働同一賃金」が日本人同士を念頭に(外国人材についても適用はされます),パート勤務(所定労働時間が短い)・有期雇用(契約期間が決まっている方)と正社員(厳密な定義はないものの,パートではなく,契約期間の定めのない方)の間での均等待遇や均衡待遇を問題にしている点を捕捉する形となっています。もちろん違いもあり,均等待遇は少なくとも「特定技能」の在留資格では想定されません。これは,正社員と同視される方でかつ,仕事の内容や責任・異動範囲が同じなら給料面などで差が出てはいけないという均等待遇は,勤務期間の違いにより異動範囲などに違いが出るためです。

 これに対して,均衡待遇については,当てはまる可能性があります。よく言われる「同一労働同一賃金」の話や裁判例はこちらの話で,仕事や権限が同じで・異動範囲も同じ場合にはその他の事情も考慮したうえで,待遇ごとの趣旨から異なることが不合理となってはいけない,というものです。この話とは別に,国籍の違いで,業務や権限が同じならば給料の違いをなくす必要があるというものです。他の待遇でも差別を禁止しており,給与制度などの制度設計と運用には注意が必要です。

 

 規制の二つ目は,雇用契約の内容(最低限必要なのは業務と給与)の中核である業務内容についての規制です。技能の熟練度を実際の業務ごとに判断するために,業務が指定されているため,対象として指定されている業務以外の業務を対象とした雇用契約は不可能であるという点です。特定技能の場合には,そもそも受け入れるためのハードル(厳密には受け入れ後も満たす必要がある)が存在し,こちらもその一つとなります。業務分野によっては,例えば,介護については訪問介護をさせることはできません。製造業分野などでは事業所ごとでの用件が存在しますし,建設業では従事させることができる業務が限定されている等,業種ごとの制限も存在します。

 三つめは,年次有給休暇の特別な定めで,外国人材が途中で帰国する際には年次有給休暇(残っていることが前提)を付与しないといけないというものです(厳密には有給の休暇であれば年次有給休暇とは限られませんが,使い切っている際には追加で当たる義務はないとされています。制度上休暇与えるのが無給休暇となる場合もありえます)。働き方改革の改正の中で,年次有給休暇が1年に10日以上ある方について,5日は休んでもらうようにする義務が雇用主には出ていますが,この義務とは別にあるものです。雇用主の業務に特に影響がある場合(その外国人材による勤務がどうしても必要といえる場合,のちに行政側からの確認の可能性があります)には,例外的な扱いは可能です。

 四つ目は,外国人材の健康面や生活面を雇用主が把握するための措置を講じる項目が存在することと外国人材が帰国をする際の円滑に協力する義務(旅費が外国人材にない場合には負担する必要が出てきます)を設ける必要があります。

 

 雇用契約面での規制や実施とともに問題になりますので,理解できる言語での説明とその記録の作成,特に途中で雇用契約の内容を変更する場合にはその説明経緯などを議事録にしておくことは重要になります。

雇用主についての規制

 雇用契約をして外国人材を導入する側にも規制が存在します。このうち,特定技能1号という在留資格で要求される支援計画(日本での仕事や社会生活営む上での支援改革)を適切に実施するための体制を設けるという規制は,登録支援機関に対してすべて委託する場合は規制クリアとして扱われます。費用も相当掛かる可能性がありますが,自社で賄うことができるのかどうか・自社不安のリスクを判断する必要があります。

 

 規制は主には二つで,一つ目は先ほど挙げた支援計画の適正な実施体制を作っているかどうかです。二つ目は,規制の及んでいる雇用契約の内容の規制クリアをきちんと行うことができる体制を作っているかどうかという話です。後者の話から触れますが,雇用契約を定めるという段階だけではなく,その後のことまで見越して規制がされています。これとは別に届け出義務を課すことでその後の実施状況まで規制はされています。

 この中身自体複数の内容がありますが,簡単に言えば,法令の順守ができていることと一定の欠格事由に当てはまらないこと・その他になります。このうち,法令の順守とは,各種労働法令や社会保険や労災保険の手続き(保険料を納めることも含む)や内容を遵守することその他税金関係でも違反がないことです。保険や労災関係,給料支払いなど問題になることが多いと思われる個所ですが,その点のクリアを要求しています。ここでのクリアには例えば未納がある場合は解消を起因と行ったというものも含まれます。

 欠格事由とは,いわゆる暴排の話のほかに一定の犯罪で罰金以上などになってから5年以上の経過していない・技能実習における計画認定を取り消されてから5年経過していない(抜け道をふさぐ内容もあり)・技能実習法でも禁止されている在留カードの取り合えなどを行ってから5年経過していない等です。

 その他については,①入管法で要求される届け出をしない・嘘の届出をする②実際上雇用契約についての違約金として機能する契約が存在しないこと(外交人材の近親者に対してのものを含む)③受け入れ1年前から,自己都合退職や定年などを除き,非自発的な退職を発生させていないこと④雇い主側の労働関係法令違反などで行方不明者を発生させていないこと,などです。

 その他はこれ以外にも複数の項目がありますが,代表的なものとして①の内容によって法令を守っているのかどうかなどの報告を守れるようにしています。②や④や技能実習生に関してこれまで生じてきた問題を踏まえてのものと言えます。③は人手不足の業種に外国人材まで応援で呼ぶという性質上設けられています。ここでの退職には日本人も含まれ,対象範囲は業務的に見て退職によりほかの方に置き換え可能な範囲となります。解雇は広く許容されない可能性がある点で注意が必要です。これは,従業員側の重大な原因による解雇のみが「非自発的な退職」としてカウントされないとされているためです。解雇には法令上・裁判例上大きなハードルが存在していますが,仮に有効となっても,従業員側の重大な原因による場合のみしか許容されない点に注意が必要です。雇用保険における「重責解雇」(こちらもハードルはかなり高い)の基準で似た文言があるので同じなのかが問題になりますが,いずれにしてもハードルは高くなります。そのため,外国人材を特定技能で受け入れる場合には受け入れ時も受け入れ後も解雇に関する注意が特に重要になります。契約期間の定めがある場合には更新拒絶が法令上有効に行えば問題ないとされている点とも対比が必要です。ちなみに,人員整理のための退職勧奨や退職勧奨でも違法と評価される場合も「非自発的な退職」に含まれるのでこちらも注意が必要です。

 ④についても,日本人の従業員に対する労働法令違反があった場合を含むということですので,特定技能の在留資格での外国人材の従業員だけではないところから,労務管理の点で注意すべきでしょう。

 これ以外にも,給料を銀行振り込みにする点(こちらは外国人材の同意が必要)・外国人材の仕事などに関する書面の作成と保存(契約終了後1年間は保存)・支援に関する費用を外交人材に負担させない等のものがあります。このうち,書類については届け出義務との関係でも重要です。業種によってはここでは詳しくは触れませんが,他にも要求される点があります。

 

 以上のほかに支援計画を適切に実施することができる体制を作っているという点があります。ここでは簡単に触れておきます。簡単には外国人材の理解できる言語での面談ができるようにする・これまでの外国人材受け入れ実績に基づく支援体制を作る(人材面でちょくせうの上司以外の方を確保する必要があります・定期的な面談を行う・面談その他の記録を作成して届け出などを行う,といったものです。これまでの外国人材の受け入れ実績その他に鑑みて内生化するか・外部委託をするかなどをきちんと決めておく必要があるでしょう。

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