法律のいろは

2020年11月3日 更新労働問題のご相談

残業代でのトラブルが生じないように合意をして書類を作成するには?

 従業員のかあの退職時のよくあるトラブルに残業代の請求の問題があります。実際に残業が存在するのか・勤務時間の形態によっては残業がない場合もありますし,勤務管理の仕組みとしてみなし残業制を導入するなど様々なしくも存在するところです。

 他方で,事前に残業代を放棄してもらう書類を書いてもらった・残業について一応の話がついたからということで作成した書類の有効性が問題となることもあります。今回はこうした問題について触れていきます。

○残業代を清算する書類は有効?

結論から言えば,無効になる場合があるというか,無効になるけーしゅが多いのではないのかという印象があります。この理由は,残業の状況や残業代を明らかにすることなく何となく清算する足立が多いと思われるためです。有効になるのか無効になるのかは非常に重要です。無効であれば問題は解決しないどころか,書類作成関する不信感から大きなトラブルになりかねないためです。

 有効性に関する問題となる点はどこにあるのでしょうか?

 

 結論から言えば,残業の状況と残業代を確認したうえで解決を図ったのかどうかという点です。大きな残業代が生じかねないケース(残業時間や休日勤務が多い場合等)では,残業代の清算を行うと多くのお金の支払いが問題になりますから,一定のお金を支払って問題を解決したいという希望が出てくるところですが,支払うお金の取り決めとは別にそもそもいくらあったのかを示さないと自由に判断をしてお金を取り決めたとは見られないということで,解決しなくなります。

 裁判例で,残業時間や残業代を認識したうえでの解決が要求されているために,こちらは大きな問題です。残業時間に上限規制が罰則付きで設けられましたが,今後残業代の事項が2年から5年に変更されたなどの話から,残業代の負担の問題は大きくなりかねません。最近は様々情報がインターネット上に出回っていますので,誤魔化しが利きにくくなっている点にも注意が必要です。

 

 そのため,例えば,単に50万円支払うから最近2年間の残業代の支払いは解決したという書類を作った場合には,一部しか残業代を支払ったことになりませんので,残りの支払い義務は残ります。もちろん,元従業員側がその後請求をしてこなければ問題は残りませんが,そうならないこともあります。こうしたケースでは,遅延損害金(退職後の利率は高めです)の支払いを求められることもあり,インパクトは多くなりかねません。

 

 他の方への波及効果を避けつつ後の問題を防ぐなら,残業時間と残業債の総額を伝えつつ金額交渉をする(残業代がわかっていて減額するのは難しい点があります)形になります。守秘条項入れておく等示談交渉では対応方法はありますが,一定の金額の支払いには至ることになります。ちなみに,残業代も給料の支払いですから源泉徴収義務は生じることになります。

 残業時間と残業代については,いくらの残業代が生じているのか(時間外勤務や深夜勤務,休日勤務の内訳が分からないと計算はできません。それぞれ割増率が異なりますし,中小企業でも2023年4月以降は特に残業時間数で割増率が上がる部分も出てきますぅ)がわかる程度の記載が要りますので,記載内容は単に合計時間を書けばいいわけでありませんから,記載には注意が必要です。

○残業代の事前放棄は可能?

 

 結論から言うと不可能です。残業代は,超過勤務や深夜勤務などを防止する観点から設けられた点もありますので,こうした点を無意味にしかねない合意には有効性を認められません。こうした合意は他の労働基準法令違反を労働基準監督署から疑われ,調査等を受けるリスクが出てきます。そのため,避けたほうが無難です。

○残業の証拠として意味のあるものないもの

 

 基本的には客観的・機械的な記録がなされたものの証拠としての意味合いは大きくなります。例えば,貴快記録のなされるタイムカードやパソコンのタイムログや警備システムの時間などです。このうち,警備システムの時間は事業所全体の開始と解除の時間ですから,個別の方の勤務時間とはなりません。ただし,個人の方の日記などの記録を証拠とされた場合に,こちらと矛盾していれば大きな意味を持つでしょう。自動車の運転の記録や業務で使っているラインやメールの履歴等も同様の意味があります。仕事で夜遅くラインで連絡する場合には残業時間の記録ともなりかねない点に注意をする必要があります。

 

 作業日報や日記などの記録は習慣的に記載されるものなのでそれなりに証拠としての意味は持ちますが,改ざんや付け加えの形跡がある場合(特に日記など個人の持っている資料ではその可能性が高くなります)には信用性が一気になるくなります。個人での記録については,こうした可能性がないのかどうかのチェックが重要になります。

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