法律のいろは

2020年4月25日 更新労働問題のご相談

外国籍の方を雇用する際の注意点(技能実習と労務トラブルその1)

技能実習制度とは?

 一部農林水産業や製造業等において,外国人技能実習生の方を雇用して業務についてもらっているところがあると思われますが,これまで労務関係を含めたトラブルが残念ながら生じてきたところがあります。そういったこともあり,数年前にトラブルなども踏まえた法改正もされているところです。今更ながらではありますが,簡単に触れておきます。

 

 技能実習生は雇用による従業員確保を目的とするものではなく,本来的には御社における業務に係る技術を技能実習を受けられる方が国籍を持つ国に移転する国際協力を目的としています。

 企業型と団体監理型と呼ばれるものに分けられますが,特に中小企業では大半が団体監理型と呼ばれるタイプ(現地国の送り出し機関という現地での求人申込みを日本にある管理団体に取り次ぐところから,実習の管理事業を行う日本における監理団体に送り出し,監理団体に加入している各社が実習生になろうとする方と雇用契約をする)になります。字にすると分かりにくいですが,現地の機関と日本での取りまとめの機関が存在し,また本来の目的や技能実習生の保護のために様々な規制があります。

 技能実習自体は,1号から3号までが存在し,最初の1年(トータルで5年,2号と3号は2年ずつで,2号技能実習終了後に1か月以上一度出国する必要があります)である技能実習1号のうち入国後講習の際には自社の業務につかせることはできません。この期間の諸費用の負担義務も出てきます。技能実習2号と3号については,対象業種や人数枠の制限(人数枠は1号技能実習にも存在します)があります。また,3号については,団体管理型の場合には優良な一般管理団体の実習管理を受ける必要があります。

 

  技能実習を行うにあたり,定める必要のある技能実習計画の認定を求めるには,技能実習の内容や目的その他法令で定められている基準を満たすだけの状況であることを示す資料をつける必要があり,その中には雇用契約書の添付も要求されています。認定を受けたうえで在留資格やその更新などの申請をすることを要し,在留期間と技能実習の期間が必ずしも一致しない(更新が必要)など,注意点があります。先ほど触れた人数の制限や技能実習制度を使って受け入れができる業務の制限があることなど,規制内容やそこをクリアして受け入れができるのかどうかを事前にきちんと検討しておくことや受け入れ後の運用で問題が出ないようにしておく必要があります。支払う給料も規制が及び同様の責任や業務を行う日本人と同等以上の給料であることや実費負担についても規制や説明を行う必要があります。監理団体に支払う費用を実習生に負担させてはならない等費用負担面の規制にも注意が必要です。

 ここ数年,トラブルが多かった分野を踏まえて,監禁行為やパスポート取り上げ・強制貯蓄にあたる行為・業務につかないことについて違約金をとる(こちらは家族も含めて・現地の送り出し機関との間の契約も含めてと規制が強化されています)は禁止行為の対象(一部の態様には罰則もあります)になっています。これらの事情があると,罰則だけでなく今後技能実習を行うことが難しくなりかねませんので,注意が必要でしょう。ちなみに,うまくいかない場合に実習生の意に反した帰国を求めることはできませんし,同様に問題となってきた実習生の行方不明についても届け出が要求されています。こちらは,仮に今後特定技能1号への移行を予定している場合には,雇用主の労働法令違反による行方不明ということになると,移行が難しくなる可能性があります。

 

 

トラブルと対応の注意点

 先ほども触れましたように,トラブルが発生している事例があります。残業代を含む給料の未払いや技能実習計画として認定された内容とは異なる業務を行ってもらうこと,その他問題となる事柄を隠蔽する(この過程で虚偽の書類を提出する等もこともありえます)等複数の種類があります。

 

 これらの行為については,法律の改正により先ほど述べた刑罰の対象や技能実習を行う上で足かせになるようにする,法令の改正が行われております。そのため,今後技能実習を行えなくなる可能性が出てきかねませんし,トラブルが発生しかねません。その中には,労務関連の紛争も含まれます。別のコラムでも触れていますが,外国籍の方でも雇用関係の規制は及びますので,最低賃金や給料の不払いその他規制の違反はトラブルになる可能性があります。雇用関係の法令違反が存在する場合に,明らかになるきっかけの一つに実習生による労働基準監督署への報告などがあり得ます。こうしたことに対して報復的な対応をとることも禁止されています。対応を間違えることが自らに跳ね返ってくる可能性もありますので,問題が生じた際の初動対応は重要になってきます。

 これまでも,給料の未払い(残業代を含む)・長時間勤務や労災に関する問題,違約金などの定めや問題を外部に伝えることでの帰国を余儀なくさせることなどでトラブルが生じていたと一般には言われているところです。

 

 労働基準監督署など行政側の動きとは別に,労働トラブルの解決のための話し合いの申入れ(ここには弁護士からの通知等や団体交渉の申入れも含まれます)や裁判所での労働審判なり裁判の申立てもあり,対応の負担も出てきかねません。金銭の支払いなどを命じられると結局支払負担が出てきかねませんし,5年間技能実習生の受け入れをできない等のペナルティや刑罰によるペナルティの負担もありえます。

 技能実習に関する法規制は民事(お金の問題)・刑罰・行政処分(技能実習計画の取消しや改善命令,このほか欠格事由として受け入れができなくなること等にもつながりかねません)等様々ある点には注意が必要です。特に,認定を受けた技能実習計画と雇用契約の内容が実際には異なる・必要とされる報告が事実と異なるということで技能実習計画の認定取り消しや罰則の対象になります。

 

 継続的に技能実習生を受け入れていくには,本来のこの制度の目的や不正行為として禁止されている行為の内容やペナルティの内容,雇用関係の法令等をきちんと把握して,トラブル防止に努めていく必要があるでしょう。また,新設された特定技能1号の業務内容と熟練度について技能実習2号の良好な終了というものがあり,両制度の接続もありうるところです。特定技能1号では技能実習計画の取り消し→欠格事由は外国人材受け入れができないところになりますから,人材活用の在り方の検討も必要になります。

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