法律のいろは

2020年4月17日 更新労働問題のご相談

会社の指示で休業にする場合の問題点とは?災害等がある場合は?

○会社の指示による休みの場合に給与はどうなるのでしょうか?

 結論から言えば,給料分の60%の支払い義務が残ります。これは,労働基準法という法律で,会社の都合による休業を命じる場合には,給料分の60%の支払いを命じているためです。後で触れます解雇かどうかが問題になる場合とは異なり,この60%を支払わなくても済むようにすることは無理になります。

 

 会社の指示で年次有給休暇の取得を求めることができるのか(この場合には,給与は全額支払う必要があります)という点がありますが,指示をすることは法律上はできません。これは,年次有給休暇はあくまでも従業員に休んでもらうための制度ですので,従業員に申請をしてもらうというのが形であるためです。もちろん,取得するように促すこともできますが,指示か促すかは程度の違いにはなります。福利厚生のために年次有給休暇を活用するならば,自主的に取得できるようにしておいた方がいいとは思われます。
 ちなみに,10日間以上の年次有給休暇を取得できる方について,年間5日の年次有給休暇の取得義務の話がありますが,こちらはあくまでも年次有給休暇を消化してもらう制度ですから,促すのはともかく従業員側の義務ではない点には注意が必要です。

 

 こうした休業補償も,会社に原因があるとは言えない天変地異などのやむを得ない事情がある場合には,支払いの必要性はなくなります。災害や病気が広まっている事での休業ということもありえますが,実際に会社が被災をするなどの事業で業務を行うことができない・伝染病,感染症が社内で流行をして勤務自体ができない(あるいは,伝染病,感染症にり患し隔離により出金ができない場合)以外は,やむを得ない事情によるとは簡単には言えません。そのため,休業手当の支払いの必要性が出てくる場合は十分にありうるでしょう。微妙なケースとして,2020年現在で問題となっているコロナウイルスなどの病気による場合は,感染の疑いがあるその他の原因で会社判断で自宅待機を命じるようなケースでは,会社の原因(判断)によるものと言えますから,休業補償は必要になるものと言えます。真に従業員側の申し出で休む場合以外はそう簡単には,会社判断ではないとは言いにくくなります。

  こうした場合でも助成金などで支払ったお金について,国から給付を受けられる場合があります。ただし,国の政策的な意向が反映されますので,状況によってもらえる・もらえないに影響する可能性があります。

 

 ちなみに,被災で出社に面倒な事情がある・感染などの疑いで出社を見合わせたほうがいい場合に業務命令として休業を命じることは可能です。逆に,特に感染症についてですが,現在いわれている濃厚接触が続くような制度が存在しているのに対応せず感染が広がった場合には,安全配慮義務違反という損害賠償請求を受ける可能性もありえます。もっとも,あくまでもこうした感染が広がる人や働き方の制度を取り除けばいいだけで,実際に感染の原因が特定できない・感染が広がったことへの結果責任というわけではありません。

 

 少し話題がそれますが,時差出勤を使うのであれば勤務形態(フレックスタイム制や変形労働時間制の活用等)を変える必要があり,鵜業員側と協議や就業規則の変更などが必要になることがあります。テレワークについても,同じように勤務形態の制度設計を行う,勤務時間管理や情報漏れの対応をする必要が出てくるでしょう。

 

○給料の全額支払う義務が生じる場合とは?

 先ほどの60%との兼ね合いで実は全額を支払う義務が生じてくる場合があります。これは,会社側の命令あるいは強い原因があり,従業員に勤務をさせない・できない事情がある場合です。先ほどの60%の場合は,会社側に何かしらの原因がある場合と緩やかに考えられているのに対し,こちらは明確な落ち度が必要とされています。
 無効な解雇かどうかが問題になる場面(簡単に言えば,明日から来るなという話をした場合にその後の給与の支払い義務が生じるのかという話になります)
出は特に問題になる話です。そのため,病気の流行を避けるための話とは別になりますが,便宜上ここで触れておきます。

 

こうした場面で,従業員側が勤務する意思を示す限りは,会社側に給与全額を支払う義務が生じます。ただし,お金の二重取りはできませんので,他でお金を得ていた場合(失業給付は除きます)には差し引き清算となります。
 この期間は特に限定されていませんので,解雇かどうかが問題になる場面など注意が必要になってきます。ちなみに,現在国で議論されている解雇についての金銭解決を制度として設けるのかという話で,こうした制度をどうするのかも話し合われています。

 こうなると,とんでもない制度があるという風にお考えになるかもしれませんが,実はこの制度の適用を排除すること自体はできます。理由は,多くの雇用契約や就業規則で規定されていませんが,この制度は契約で定めることで実は排除可能になります。そうすることで,60%の支払いは残るものの,40%分の支払い義務の可能性自体は排除できます。
 とはいえ,従業員側にとって不利益となりかねない事項ですので,可能であれば雇用契約を書面でかわす際に書面上設けるべきことであり,こういう条項があること自体は簡単に説明をしておく必要があります。

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