
従業員となる方を採用する際には,求人情報をハローワークその他に出す・履歴書を提出してもらう・面接をする・テストをするなど様々な手間とお金がかかります。最近は,求人なんですので,いかに求めるタイプの方に来ていただくかは大きな問題です。会社としては,必要とする仕事を行ってもらえるだけのスキルや経験(職歴や経歴を含むもの)を求めますので,この点が事実と異なると大きな問題です。
特に,中途採用であれば,職歴や経歴,スキルといった点は大きな問題となります。
それでは,こうした経歴や職歴に事実と異なる点があった場合に,仕事などに支障が出かねません。そうした場合,多くは退職勧奨を会社がすると思われますが,解雇を通知することもあるかもしれません。法律・裁判例上,解雇の有効性には大きなハードルがありますが,このような場合に解雇は有効と判断されるのでしょうか。有効性が問題となるのは,当然相手から争われた場合になります。
比較的最近のケース(中途採用における職歴などの詐称があったかどうか・詐称があった場合に解雇が有効になるか等が争点となった裁判例)を紹介します。
まず,一般論として,職歴やスキル(たとえば,車の運転ができるといったものやパソコンの基本的な使い方ができる,特殊なプログラミング能力や免許を持っているといったものまで,仕事によって様々でしょう)は,中途採用をするかどうか・給料をどこまで払うのかなど多くの点で大きなポイントとなります。問題となったケースでは,事実関係も相当争われていますが,裁判所の判断では詐称についてはおおむね事実を認めています。
そのうえで,会社は人を雇用し,能力に応じた配属や管理などによって業務目標を図るのだから,そうした評価などの基本となる事柄の申告を一定の範囲では求めることができると述べています。裏返して言うと,採用を希望する方は実態を回答する義務が出てくることになります。ここで注意する点は,なんでも回答する義務があるというわけではなく,評価等の基本となる事柄について一定の範囲で尋ねられた場合に,会社側の判断を誤らせないように事実を語る義務があるという点です。
こうした点を踏まえて,解雇の事由に当たるのかどうかは,採用に当たっての経歴などの重視の程度や実際に詐称された内容や程度,会社全体への影響などを考慮して判断するとしています。そのうえで,事実判断をし,これらの要素(スキルや職歴等)について,会社が求めていた能力などを知ったうえで詐称していたと判断し,重大な意味を持つとともに,採用によって会社に起きた影響の程度なども考慮したうえで,解雇事由がある+解雇の相当性があると判断しています。
実際に多くの裁判例でこうした評価基準が採用されるかは不透明な点がありますが,多くの要素を慎重に考慮しており,参考になるものと思われます。