労災や残業代などの問題で,自営業者と考えている「一人親方」の方などが法律上「労働者」に当たるかどうかが問題になるという話を前回は触れました。前回は,事業者に当たるのか・労働者に当たるのかという法律(主に労働基準法の関係)について判断基準として使われているものを紹介しました。これらは,行政機関で用いられているものですが,ケースごとの考慮で裁判所と異なる点はありますが,大きく参考になるものです。
前回は,「一人親方」等の方について,行政側で補足的に考えている点について,途中まで紹介しました。今回は,その続きと比較的最近の最高裁で問題となったケースを紹介します。
これまで場所や時間の拘束や指示,仕事を事実上断れないのかどうかという点を触れました。このほか,その仕事を他の人に任せられるかどうかも一般には労働者に当たるかどうかのポイントの一つにされています。自営業で請負であれば自由裁量の可能性が高い,という考えから,ほかの人に任せられれば自営業者に近いという点は言えますが,部下などに任せる権限が与えられているケースもあります。こうした点から,他の人に任せられるかどうかは,大きなポイントにはならないでしょう。
注意点として,建築現場度では,出来高あたりの報酬が決められていたり,請求書を出してもらって支払うというケースが多いと思われます。この点は請負を推測させる事情ではありますが,行政の基準の中では,こうした点をもって直ちには「使用されていて」「給料をもらっている」ことを否定する要素にはならないとされています。
同じく,工事に使う工具類も高価なものを,問題となった仕事に使うということがなければ,事業者と考えるかどうかという点に影響しないとされています。同じ会社に継続して仕事をしている点は,労働者と考える方向に働く可能性があるという点も他の要素次第ですが,注意点にはなりえます。
これらは,あくまでも補足する点を述べたものにすぎません。実際の裁判例では,問題となったケースごとの事情を個別に判断しています。比較的最近の最高裁で問題となったケースを触れてみます。詳細は次回に触れますが,問題となったのは自分のトラックを工場に持ち込んで運送業務を行っていた方が,工場内での仕事中にけがをした件で,労災の適用を受けるかどうかが問題となったものです。労災の給付を受けるには,労災保険法や労働基準法上でその方が「労働者」として扱われる必要があります。
少し長くなりましたので,この裁判例の詳細は次回に続きます。