法律上,年次有給休暇は勤務年数にもよりますが,少なくとも法律で定められた日数は与える義務があると定められています。休暇取得の申請について,会社の法律上の対応方法も定められていますが,実際には取得の申請がないという企業もあることと思われます。
年次有給休暇は関係するところの多い点ではありますが,今回は年次有給休暇の申請に関する会社側の妨害行為があったのかどうか等が問題となった裁判例を紹介します。
判決で認めた事実関係からは,会社側から年次有給休暇の取得は慶弔関係以外は年6日までしか認めず,その他の休みは欠勤扱いにするという通知がなされていました。実際には私用での休みにも皆勤手当が出ていました。有給休暇の申請はしていないけれども,先ほどの通知などで有給休暇の取得が妨害されたとして,慰謝料その他の損害賠償を請求されたケースになります。
年次有給休暇関係以外にも争点はありますが,今回は省略します。この関係では,取得を妨害したかどうか・損害の内容等が争点となりました。
裁判所の判断では,先ほどの会社側が出した通知を,総務関係部署から出して従業員に回覧させた点も踏まえて,妨害行為であるとしています。そのうえで,法律上発生する年次有給休暇はどう使うのかは従業員の事由である点に干渉することを述べています。
年次有給休暇は法律上発生し,取得の請求があった場合は法律上のルールによって会社が時期・時季をずらす以外には取得を認める義務があると判断しています。この義務に会社が反したことを理由に慰藉料の支払いを命じています。
いかに多忙かつ人が少ないからといって,年次有給休暇の妨害を会社として行う点にはリスクが伴うことを示したケースと思われます。ルールをふまえてどうすることが会社・従業員のためにいいのかを考える一つのポイントと思われます。年次有給休暇は重要な点ですので,いずれまた触れたいと思います。