タイトルのようなことはできないのが原則です。基本的には,その従業員の同意なく勝手に勤務条件など雇用契約の内容を変更することはできません。一応曖昧なまま伝えておいて同意があったかどうかうやむやになっているようなケースでは後でトラブルになるリスクが高くなりかねません。
その後変更した後の勤務条件で働いていたから,暗黙の裡に同意があったはずという言い分は余計なリスクを抱え込むことになりますので,避けておいた方がいいように思われます。
一定の従業員が事業場にいる場合には就業規則を作ることが義務付けられています。就業規則の内容も法律の定める前提を満たせば,雇用契約書にいちいち書かなくても雇用契約の内容とはなります。そのため,就業規則を変更すれば自動的に勤務条件(雇用契約の内容)もかわるのかといえば,そう簡単な話にはなりません。
特に揉めることが多いであろう従業員にとって不利益な内容に勤務条件を変更する場合には,法律で規制がかかっています。ある一定の前提を満たさないと就業規則の変更によって勤務条件が変わったとは扱われないリスクが出てきます。ここでいう不利益な事柄にあたるのかどうか自体が問題になることもありえますが,少なくとも給料が下がる場合には不利益な事柄に該当する可能性が高いと思われます。
この場合には,一般に
①従業員の受ける不利益の程度と内容
②事業者側の変更する必要性の程度と内容
③代償措置の有無と内容や他の勤務条件の改善状況等
④従業員や労働組合との交渉経緯や態度
の他に社会一般の該当する事柄についての状況等多くの要素を考慮したうえで変更が合理的かどうかを判断します。合理的であれば,就業規則を変えることで勤務条件の変更も認めるということになります。以前は裁判例で考えられていた基準が現在は法律で定められています。
実際にどのような考慮をしていくのか等はいずれ触れたいと思います。