
試用期間の意味
そもそも,一度採用した以上は能力をきちんと発揮して仕事をしてもらうのが一番ですし,足りない点があれば改善を求めるのが基本であるのは言うまでもありません。とはいえ,採用面接などでその方の全てを見抜けるわけでもありませんし,採用してみて周りとの協調性などが問題となることもありえます。そうした場合には,途中で辞めてもらうことを考える場合も最悪ありうるでしょう。
多くの会社で中途採用であれ・新卒採用であれ,本採用前の試用期間を設けているかと思われます。この試用期間は,一度採用することにした方の適性や能力などを実際に見極め,業務に適さないというのであれば本採用を拒否する,言い換えると雇用契約を解約するための制度といえます。解約権を会社側にとどめておくというのがポイントとなります。解約権を行使する場合には会社側の一方的な判断になりますから,解雇に似た状況に見えます。実際,裁判例でもこうした点を前提にはしていますが,解約する権利を会社側にとどめていたという点を踏まえて,通常の解雇の場合に会社側が越えるべきハードルよりは低く設定しているということはできます。ただし,だからといって,何の理由もなく解約権を行使して本採用を拒否できるわけではない点には注意が必要でしょう。
多くの会社で就業規則や雇用契約の中で名前はともかく定めている場合が多いと思われます。いずれもない場合には,雇用契約の内容の解釈でどのように考えられるかが問題となってきます。
ちなみに,試用期間を長く定めておいて何かしら問題を感じれば辞めてもらいやすくするというのはリスクがありえます。そもそも,試用期間はその方の適性などを見極める期間で,もちろん短期間で見極められるわけではありませんが,一通りの判断ができるであろう期間である必要があります。数か月というケースが多いと思われますが,この期間でないといけないというわけではありません。あまりに長いと試用期間の定めが無効になる可能性がありえます。同じことは試用期間を延長する場合にも言えます。特に延長しないと見極められらないという事情や期間の明確化は必要かと思われます。就業規則などで期間を含めきちんと定めておく必要があるでしょう。
本採用を拒むことができる場合とは?
先ほど触れましたように,何でもかんでも本採用拒否ができるわけではなく,通常の解雇よりは会社側の裁量が広い程度で,本採用を拒否できるだけの事情は必要となります。こうした事情は一般的に見てどうかという点としっかり吟味期間を置いたうえでの判断である必要があります。そのため,素行や成績不良というのが明確でない場合やかなり短い期間での判断ということであれば,こうした解約権の行使が無効になる(本採用拒否はできない)ということになります。
指示に従わない・ミスなどが多い場合で改善が見られない場合・欠勤が多い場合等にはこうした居飛彪港とされています。先ほども触れましたが,曖昧な態度や成績の不良では勤務に適さないとは言いにくいため,難しくなるように思われます。
また,パート勤務の方を正社員に転換する場合は通常は転換までに適性などは吟味しているはずですから,こうした場合に試用期間を設けることは難しいですし,実際に正社員では難しいということの判断もまた難しいでしょう。ちなみに,短期間勤務のパートタイマーにも試用期間を設けることはできますが,長期勤務ゆえに慎重な吟味が求められる正社員と比べると期間は短くなるでしょうし,本採用拒否ができる場合も限られてくるように思われます。