法律のいろは

2019年2月8日 更新労働問題のご相談

労働審判とはどのようなもので,どのような活用の仕方があるのでしょうか?

労働審判とは?

 従業員との間にトラブルがないのはもちろん重要ですが,状況によってはトラブルが生じることもありえます。そうした場合は無理に辞めさせられようとしている・給料(残業代)が支払われていない等様々ありえます。こうした場合に,本人・親族などとの話し合いの他に外部の組合(合同労働組合・ユニオンと呼ばれるところです)が交渉に乗り出してくる場合・弁護士からの通知が来て話し合いをする場合,都道府県の労働局の斡旋等様々な形があります。その中で裁判所を使った手続きとして「労働審判」というものがあります。

 

 簡単に言えば,迅速な解決を目指し,話し合いがつかない場合には裁判所の一応の判断があるものの,話し合いを促す制度ということができます。裁判所での手続きですし最終的には判断に至ることがありますので,言い分や証拠は出す必要があります。この手続きは裁判官の他に労働者側・使用者側一人ずつの合計三人の方が間に入り,言い分や証拠を整理しつつ話し合い解決を目指す(話し合いがつかない場合には判断を示す)もので,3回以内の日程で決着を目指すというものです。決着がつかず判断が示された場合でも,一定の期間内に裁判を求める申し立てをすれば裁判での決着を図ることになります。

 

 一般には従業員(元従業員のケースも多々ありえます)側から申し立てを受けるというイメージが強いですが,会社側から申し立ててこの手続きを使うこともありえます。例えば,会社側からも早期に金銭解決を念頭に話し合いを求めようとするものの場の設定がうまくいかない場合に話し合いの場を求める場合が考えられます。外部からの介入があって話し合いがうまくいかない場合には話し合いの場を設定する・労働基準監督署への訴えがあった場合に問題の拡大を防ぐ必要がある場合に話の調整役を置くという意味では有効性はあるものと思われます。

 ただし,金銭解決を念頭に話し合いによる早期の問題解決を図る場ですので,例えば,解雇が問題となっていて,その従業員の方が職場復帰に固執していて話し合いが進む可能性がない場合等,話し合い解決の見通しがつかないことが強く予想される場合には有効性が低くなります。

事業者としてはどのように臨めばいいのでしょうか?

 仮に申立てがされたので出頭を求められた場合に,まずはどのような態度で臨むのかをきちんと整理しておく必要があります。裁判所での手続きでは提出された言い分や証拠に基づき話し合い等が進められ,会社側としては金銭解決(残業代や給料の支払いなどでは支払いを求められることがあります)を求められる可能性が十分にあります。

 こうした中で,そのような解決を図ってもいいのかどうか等大きな方針を決める必要があります。話し合い解決が難しいのであれば裁判所の一応の判断の後に異議を申し立てて,裁判での解決を図ることになります。裁判では厳密に言い分と証拠を提出して判断を求めることになりますので,時間は相当程度はかかります。判断の見通しや時間面の問題・その他経営判断としての要素を踏まえて結論を出していく必要があります。

 

 また,話し合い解決の方向性を選んだとしても,対応の方向性とそのための言い分や理屈の整理・提出する証拠の整理などを行う必要があります。残業代の請求であれば,勤務時間がどの程度であるか(圧縮が可能であるか)・残業代の支払いを受ける立場かどうか・その他等を検討し準備をしておく必要があります。そうした点を踏まえて解決の案なども含めての準備が必要です。

 事前の書類の準備の他に,裁判所の手続きの中では事実関係を聞かれることがありますので,こうした質問への対応なども考えておいた方がいいでしょう。

 

 このようによく準備をする必要があります。

団体交渉の申し入れ・その他の話し合いの場合は?

 労働審判のような裁判所を使った手続き以外の話し合いの手続きとしては,都道府県の労働局におけるあっせん手続きがあります。こちらは,労働審判と異なり話し合いに応じないことでの拘束力を持った判断などにつながるということはありません。また,こうした労働審判やあっせん手続きの前の個別の話し合いというのもありえます。

 

 そうした申し入れには,個別の話というものもありますし,弁護士から依頼を受けたことでの通知という場合も特に退職後ではありえます。このほかに,退職の前後を問わず労働組合からの団体交渉の申し入れもありえます。ほとんどの会社や事業者の方は自社には労働組合はないはずというお考えをお持ちかもしれません。イメージとして会社ごとにあるのが労働組合という点が強いかもしれませんが,地域ごとの組合や業種ごとの組合というものも法律上の要件を満たしていれば存在します。「合同労組」「コミュニテイーユニオン」と呼ばれるものです。言い換えると,外部の組織ではと思っていても団体交渉の相手となる労働組合はありうるという話になります。

 団体交渉の申し入れがあった場合には,話し合いのテーブルについて誠実に話し合いをする義務があります。まったく話し合いをしないということであれば,不当労働行為と呼ばれるものに該当し,簡単に言えばその労働組合への損害賠償の支払いになりかねないという問題が生じます。あくまでも誠実に話し合いをするということですので,要求に応じるのかは要求内容や事実関係・証拠その他の事情によって決めていくべき話になるでしょう。個別の方の待遇の話等になることも十分ありうるところですが,自社の担当者や代表者・交渉依頼をする弁護士が出席しての話し合いをすることになるでしょう。

 注意点は社会保険労務士の方は交渉をする権限がないので,任せることには問題が出てくるという点です。

 

 実際にどのように対応するのかは経営判断を含めてきちんとしておく必要があるでしょう。話し合いがつかない場合には,労働審判やその他裁判所の手続きへと移る可能性があります。

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