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法律のいろは

2017年6月13日 更新解雇

妊娠中の退職合意が無効になるリスク(最近の裁判例から)

 マタハラなど女性の妊娠・出産・結婚をめぐる問題点(不利益な扱い)

 近年マタハラ等が問題となっていますが,法律上妊娠中の女性に関して,妊娠を理由とした不利益な取り扱い(結婚や出産についても)を禁止する規定が存在します。こうした事柄については,不利益取り扱いの効力がなくなるという点はもちろん,慰謝料請求にさらされる(裁判になった場合には認められる)リスクが出てきます。

 一方で,妊娠中の業務に関しては別途法律上規制があります。人手不足の時期でもありますが,女性従業員の方の力の活用とともに,妊娠などライフスタイルに応じた活用の仕方と退職に至った場合にはその際のリスク管理をきっちりとしておきたいところですね。今回は,妊娠中における会社と従業員側の退職合意があったか等の点が問題になった最近の裁判例を取り上げます。

 妊娠中における退職の合意の有効性

 問題になったケースは,建築測量や墨出しその他工事などを営む会社に勤める従業員(女性)が妊娠をし,その後会社との間で現場仕事が難しいという理由から,会社側から派遣会社への登録をするよう提案があって従業員側が受け入れたというものです。派遣先での勤務が一日だけであって,特に従業員側から退職届の提出なども行われていませんでした。会社社長から退職扱いになっているという連絡を受けた従業員が離職票などを請求すると,一身上の都合を理由とする退職の手続きが既に取られていたというものです。

 従業員側は退職の合意を否定するとともに,会社側の退職手続き等によって勤務ができなくなったことを理由に,引き続き従業員であること・勤務していない間の給料・慰謝料の請求をしたというものです。会社側の言い分によれば,派遣会社への登録の提案があったころに退職合意があったというもののようです。

 

 争点は複数ありますが,ここでは退職の合意があったのかどうか・勤務していない間に従業員側が得ていた収入をdのように考えるのかという点について触れていきます。

 

 こうした争点のうち,まず退職合意の有無について,裁判所は次の一般論を述べています。それは,先ほど触れた妊娠(結婚と出産も)を理由とした女性への不利益取り扱い(解雇に限りません)を禁止する法律の定め等を踏まえると,退職をするという女性従業員側の意思表示は,自由な意思に基づいて下と合理的に認められる事情が必要であると述べています。つまり,単に意思表示が認められるだけではなく,経緯や周辺の事情を含めて自発的に意思を表明したものと評価できる必要があるという話になります。

 この話からは,退職に意思が示されたかは慎重に判断されることになります。実際,事実関係に争いがあれば証拠によって認定をしていきますが,この点でも慎重に行っています。そうした事柄は,退職を受け入れたと考えられる要素(現場では勤務が難しいという説明を聞いた・その説明を受けて別の派遣会社への登録を決めた等)という点を負考慮しながらも,他の事実経過を考慮している点に現れています。

 しかし,退職合意がなされたとされる時期から数か月間退職扱いになっていると連絡があるまで,全く退職の手続きがなされていない点(退職届の提出や離職票の発行等)を大きく考慮して,退職の意思を自由に示せたとは考え難いと判断をしています。会社からの話を聞いて離職票などを取り寄せて初めて退職を確認するということは,退職の意思を自分から示したにしては考え難い経過であるという点の評価になるものと考えられます。会社からその従業員の産後について話がなかった点も,産休後の復帰がないことを知りえない(退職とは知りえない)という点を補強するとも言及されています。

 

 こうした点からすると,この裁判例の考え方からは,会社としては産後の復帰がないという話であるなら次の対応が必要になると考えられます。それは,妊娠で現場勤務が難しいことの説明と納得を得たうえで退職と派遣の仕事に代わる点の説明,それを踏まえての退職手続き(退職届の提出など)をとることがいえるでしょう。

 

 次に,妊娠とわずかな病気以外に従業員側が勤務できない事情がなく,会社側が退職扱いしたことで仕事ができなくなったことを理由に勤務していない時期の給与の支払いを一部認めています。これは,法律上会社側が従業員の就労をできない原因を作った際に給料の支払い義務を命じるという規定があるためです。このケースでは退職合意が認められない限りは会社側での手続きで勤務ができない以上,こうした結論に至ってきます。

 そのうえで,当該従業員が以前から会社で禁止されている副業を退職扱いされた後もしていたため,この副業の収入を先ほどの給与から差し引けるかも問題となりました。これは法律で二重取り防止のために,勤務ができないことで他の仕事をしていた場合に,そこで得たお金の分は差し引くという趣旨の規定があるためです。

 このケースでは,勤務できないかどうかに関係なく以前から同じ副業をしていたことから,先ほどの二重取りに当たるかが問題になりました。結論から言えば,二重取りにはならないとして勤務時と同じ収入部分までは差し引きを否定しています。

 

 このほか,一部慰謝料支払いも認められています。こうした裁判例の考え方がどこまで一般化するかという問題はありますが,先ほど触れましたように,手順と後で紛争を起こさないようにしっかりと手続きをしてリスク管理をしておきたいところですね。

 

 

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