法律のいろは

2020年4月24日 更新解雇

業務の内容や態度その他に問題のある従業員に対応するときの注意点は?

対応方法にはどのようなものがあるでしょうか?

 業務成績や態度,周りへの影響などを改善してほしいと思う従業員の方は,会社によっておられることと思います。このほか,不正なキックバック行為・その他預かっている金銭の横領行為などいわゆる不正行為を行っている方に対してはきちんとした対応を行う必要も出てきます。不正行為のあった場合の調査等の対応は別のコラムに記載をしますが,ここではその他の問題がある従業員への対応についての注意点などを触れておきます。

 

 当然ですが,一度採用した従業員について可能な限り継続して勤務をしてほしいと思う・改善策を講じていきたいということになるでしょう。改善策を講じてうまくいくのであれば問題はありませんが,行き違いや改善の意志がないこと等様々な原因からうまくいかないことがあります。その際には退職してほしいという意向を会社側が持つこともありえます。もちろん,従業員側からやる気を失い退職の申し出が出てくることもあります。

 こうした意向を会社側がもった場合には,退職をしてもらうよう促す「退職勧奨」と,会社側から一方的に退職をしてもらう「解雇」という方法が考えられます。もちろん,自社内での他の仕事に代わってもらう「配置転換」(転勤)等の対応もありえます。

 

 解雇と退職勧奨は,従業員側に退職を決断してもらうのかどうかで違いがありますが,境界が不明確になる場合もありえます。説得の程度を強めれば,無理にでも退職に至ったようにもなるためです。この際の言動や仕事が能力に見合わない部署への異動(や仕事をさせること)がパワハラの一つ(過小な仕事しかさせない)ということで,後に損害賠償請求を含めてトラブルになる可能性があります。

退職してほしいと思った際の注意点

 先ほども触れましたが,退職勧奨の場合にはその際の言動や内容が後にトラブルになる可能性がありますので,注意が必要です。面談の際のやり取りについて録音がされている可能性もありますし,言った言わないの話になりかねません。また,解雇という手段を選ぶことについては,ハードルが高いことも注意をしておく必要があります。ちなみに,「明日から来なくていい」という話が出てきた・退職を促す言動が強い場合には,解雇の通知書がなくても「解雇」があったということを前提にした話を後で受けることがあります。この場合には「解雇」があったかどうかも問題になります。

 

 解雇の際のハードルについてですが,解雇については「普通解雇」と「懲戒解雇」があります(このほかに,経営不振の際の「整理解雇」というものが存在しますが,ここでは省略します)。後者の方がハードルが高くなります。後者については,会社の秩序を乱したことに対するペナルティの側面があり,かつペナルティの中で一番重いものであるためです。前者の場合であっても,法律・裁判例上①客観的に解雇をする自由が存在し当てはまること②ほかの手段を尽くしてみてもやむを得ないといえる事情があることを要求されています。

 このうち,①は就業規則に「普通解雇」にあたると定められた事情が必要になります。能力不足や会社の指示に従わないなど,該当する候補になりますが,定め方は通常は抽象的になりますから,該当するのかどうかでトラブルになることもありえます。仮に解雇を考えるのであれば,ケースごとの事情が実際に当てはまるのか,きちんと精査しておく必要があります。

 ②については,解雇という手段以外の取れる方法があるのかどうかという話になります。こちらで重要になるのは,例えば,能力不足の場合には改善のためにきちんと指導をしてその結果をチェックするなどしたのか・協調性などの問題の場合には同じ職場の人間も含めて話し合いをするなどしてきちんと改善の対応をしてきたのか等の点です。業務指導書や始末書を書いてもらうことも改善のための手段ではありますが,単に指導をした見かけを残すためだけであればあまり意味がない点もあります。もちろん,先ほど述べた改善のための取り組みをした点はきちんと記録に残しておく必要があります。

 

 これに対して,不正行為があった場合には,「懲戒解雇」などの対応を考えておく必要があります。懲戒解雇を含む懲戒処分をする場合には,ペナルティという面がありますので,就業規則に定めた事情に該当すること(横領などの不正行為は多くの場合に当てはまるでしょう)が必要です。このほかに,ペナルティという面がありますから,きちんとした調査も必要ですし,弁解をする機会を与えることややったこととペナルティのバランスや前例とのバランスも問題になります。

 調査をきちんと行って確認できたことを前提にした場合,例えば,横領のときには被害弁償ができるのかどうかも踏まえて,懲戒解雇の対応をするのか,通常の退職とするのか等の選択を行う必要があります。ここは,「懲戒解雇」を選んだ際の要件を満たすかどうかという話や外部に内部の不正が漏れる可能性をどう考えるのか等を考えておく必要があるでしょう。

 

 解雇の効力を争われる場合には,事後に先ほど述べた有効性を満たすのかどうかを争われることになります。そのため,事前の検討や記録を残しておくことは重要となります。解雇無効が問題になる際には,仕事をできない期間の給与の請求(勤務をする気はあるが会社側のせいで仕事をできないということで給料全額分のお金を請求されることもあります)もありますから,重要になってきます。

 また,退職金の規定を就業規則で設け,不正行為その他がある場合には支給しない等の規定を設けておられることも多いでしょう。こうした場合に支給を求めて争いが生じる可能性もあります。ここでは,以前の功労もなくすほどの不正等があったといえるのかどうかが問題となります。

 

 こういった問題点等も考えて対応を考えていく必要があるでしょう。

 

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