法律のいろは

2022年3月25日 更新労働問題のご相談

労災事故で雇用側の賠償責任を肯定する要因とは?

安全配慮義務と健康配慮義務

 業務中の労災認定を受ける事故や病気が生じた場合に,雇用主(一部特別な要因があれば元請けなども)が賠償責任を負う場合とは安全配慮義務違反や健康配慮義務違反があった場合であるとされています。こちらは,雇用契約に基づく雇用主側の義務違反ですが,民事上の不法行為(過失や故意によって権利を侵害し損害を与えたことへの損害回復のための制度)についても同様の義務違反に当たる事柄が必要と考えられています。健康配慮義務は従業員の健康状態の悪化により疾病などに陥らないように配慮する義務であり,職場環境の整備や悪化防止のために措置をとるべき義務へとつながってきます。安全配慮義務も同様に職場環境の整備や運用を行う義務ということができます。

 

 つまり,単に業務に原因がある病気やケガがが生じただけというのではなく,そうした結果につながった事項について少なくとも一般に予測できた・対応策をとっていれば避けることができたといえるだけの事情が必要となります。問題は何を予測し避けることができたのか・どのレベルまでの予測や回避措置が要求されるのかという点です。

義務違反に必要となる要素は?

 損害賠償請求を行う場合に,その原因となる義務とその違反(言い換えると,予測可能であった事柄やその程度・予測可能であった事柄についての回避可能であったかどうかという話)は請求をする側が特定し立証すべき話になります。ここが抽象的でいいという話になるとハードルが下がります。曖昧な内容であっても予測し回避措置をとるべきであったという話になるためです。従業員側の情報が少ない点を考慮してある程度抽象的なものでも足りるという話は一般論では言えるかもしれませんが,あまりに曖昧でいいのかという問題はあります。

 じん肺やアスベスト被害といった容器にわたる大きな健康被害(生命にかかわる可能性も高い)分野については,問題となる点が晴明に関わりかねない健康被害であったという点を踏まえて予測すべき事情は安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧で足りると判断を示している判例があります。

 また,過重な勤務による健康悪化について,健康悪化状況を疾病に至った方の上司など会社側で把握可能であったか・過重勤務を把握可能であった場合には,予測できたものと判断する裁判例が存在します。ただ,この予測できたという内容は過重勤務があれば健康悪化に至ったであろうというもので,業務実態や健康把握義務を会社に強く求めているという理解ができます。実際に予測し避けるべきは,業務が過重であること等の原因が存在し,そのことによって実際に疾病が発症あるいは悪化する点ですので,過重勤務⇒健康悪化に至るだろう程度の把握ができただろうからということで賠償責任が肯定されるほどの義務違反が存在されると評価されると,労災の場合に賠償責任が肯定されるハードルがかなり低くなることになります。

 

 職場環境や従業員の健康状態の把握がポイントとなりえます。負担が大きな内容やぱ話ハラスメントと言えるような状況が生じている場合には健康状況への悪化が大きい可能性がありますので,日常からの職場環境の把握と抱えることができるリスクの把握は重要となってきます。

 もちろん,面接指導が義務付けられるほどの時間外勤務が生じていることや日常の勤務態度や状況に大きな影響が出ているのを職場で把握していたという場合には,そこからうつ病などにつながることやその他の病気リスクがあることは十分に把握はできる場合もあります。就業環境が特に悪化している場合(上司からの無理なノルマ設定や罵声が続く)には会社側で認識や把握ができる時効であることやその内容によっては大きな負担となりうる話ですから,対応がとることができた事項となりえます。いじめの存在についても把握が容易であったといえる場合には,その内容によっては同じ話が当てはまる可能性があります。問題は悪化などが相当早くに進んでいる場合にはそこまでのリスク把握により対応をとることができたとは言いにくい場合も存在します。

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