法律のいろは

2020年9月12日 更新労働問題のご相談

業績や業務評価で給料を減給することに問題はあるのでしょうか?

契約内容の変更は合意が原則

 一度契約内容で決まった給料は,その名の通り契約内容になるのですから,新しく合意がない限りは当然に一方の意向で変えられないのが原則です。給料が上がる場面でトラブルになることは考えにくいので,問題になるのはもっぱら給料を下げる場面,特に会社側から給料引き下げを求める場面です。

 この場面でも引き下げの打診に対してその従業員側が引き下げを了解すれば,そこで合意が成立しますので何ら問題はありません。問題は合意が同意をさせられたものだと後でトラブルになるケースです。通常は合意の有無が問題にならないように書類を作成しておく(書類がない場合にはそもそも合意が存在したのかどうかが問題になる可能性があります)ことが多いでしょうから,この書類だけで大丈夫なのかがここでも問題点になります。

 

 結論から言えば,雇用契約については会社側が優位な立場にあるという点もあり,合意をしたのかどうかはそうするだけの事情があったといえるかどうかも裁判の場では問題になりえます。ここでの合意をしたといえるだけの事情は,きちんと話し合いをして了解したうえでの話であったのかが問題になってきます。話し合いの場を持ったのか・その時間や内容・やりとり等が問題になるでしょう。言った言わないを防ぐなら記録をつけておく方が安全でしょうし,内容面の説明をきちんとしたうえで給料が下がるならば,どういう理由で・どの程度下がるのかは理解してもらう必要があります。

人事評価や降格などに基づく給料の引き下げは可能?

 就業規則で昇給や減給を人事評価に基づき行うと定めている場合には,就業規則の内容に合理性があるなど法律で定めている条件を満たせば契約内容で昇給や減給の話が盛り込まれますので,このルールに基づいて運用がなされている限りは,減給についても有効ではあります。問題はルールに基づいて運用されているかどうかという話です。

 

 人事評価に基づく引き下げも,相応の根拠に基づくもの(評価自体に相当な根拠があり,給与引き下げも賃金テービルなど相当な根拠に基づく範囲のもの)であれば,裁量の範囲となります。役職などが存在しそれに伴う手当などが存在する場合に,人事評価の結果としてその役職からの降格あるいはそれに同等のものがあって,そうした手当などがなくなる場合も原則として,減給は裁量の範囲内と言えます。業務と給与が結びついている場合に,業務内容からの異動に伴って給与が変動するのも裁量の範囲とは言えます。ただし,中途採用など業務内容を限定している場合にその業務内容から本人の同意なく変更をする場合には,それを許容するだけの強い事情が要求されますので,簡単に変更ができるわけではありません。

 こうした範囲に該当しない運用・後で触れます退職勧奨その他不当な目的に基づく運用や減給幅が大きすぎる場合には裁量の幅を超えるために無効になるリスクがあります。

 

 ちなみに,こうした人事権その他の裁量によるほか,非違行為についてのペナルティ(懲戒処分)としての減給もあります。ただし,こちらは事実関係の確認や本人の言い分を聞くこと等が必要なうえ,減給上限がきちんと決まっている点・減給幅も上限以内で自由にできるわけではないこと等注意が必要な点があります。

業績悪化時期の退職勧奨などとの兼ね合いは?

 業績悪化時には給与の減少や人を減らすかなど難しい判断を迫られる場合があります。いわゆる賞与が存在する場合にはこちらを支給できないという話からスタートすることになりますが,給与や雇用については法律や裁判例の規制も存在しますし,何より人の生活に関わり会社の士気にもかかわるため,対応に注意が必要です。

 

 人事評価に基づく場合には,その根拠が重要な意味を持ちますし減額幅や何よりも就業規則その他の根拠がないと問題があるのは先ほど記載した通りです。業績悪化の場合には特に多く給与をもらっている方に減給を一部お願いしたい気も出てくるかもしれませんが,なぜなのか・どの程度なのか・業績回復時はどうなのかなどきちんと説明をして同意をとっていくのが基本的な対応になろうかと思われます。ここがはっきりせず,特定の方のみ減給を求める・退職勧奨も同時に求めるということであれば,実際の認定がどうなのかはともかく,退職勧奨目的で特定の方を狙い撃ちしての確たる理由のない減給ではないのかということでトラブルになりかねません。裁判例の中にも,こうした減給や人事評価が繰り返された・減給幅が大きいケースについて,減給を無効としたケースがあります。

 無理な退職勧奨や過少な仕事しかあえてさせないケースではパワハラを理由とした損害賠償請求を受ける可能性もありますから,対応については慎重にリスクや他の方への影響などを考えていく必要があります。

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