法律のいろは

2019年5月31日 更新売掛金回収

相手からの支払い猶予の要請にどこまで応じたらいいでしょうか?

はじめに

 支払い猶予をすることの意味は,裁判などでの回収が図れなくなるということです。相手方にそこまでは仮差押え等がないという点で意味があります。

 逆にいうとすぐに裁判での回収をしないということになるので、その分一旦支払いを猶予しても、その後確実に支払いをしてもらえるという経済基盤が相手方になければ、結局数回分割で支払ってもらいあとは回収できなかった、ということになってしまいます。

 また、分割払いにした場合、すぐに回収するよりも多く支払いが受けられること、もし支払いが滞った場合でもただちに差し押さえができるようにしておく・保証人や担保の準備をしてもらう、といったリスク回避が必要です。
 

支払猶予とすることの意味は?

 支払い猶予をすることの意味は,裁判などでの回収が図れなくなるということです。相手方にそこまでは仮差押え等がないという点で意味があります。仮差押えは、裁判に先立って財産を処分できなくすることですが、仮差押えされると銀行取引約款で取引停止事由にされていることが多く、相手へのダメージは大きくなります。

 ご自身が応じる意味は,待つことによって回収をはかれる見通しがどこまで出てくるかということになろうかと思われます。その時点まで待つことによって,事業の改善やお金の調達ができるようになるのか・待っている間に破産などに至った場合の対応としての保証人や担保の確保が図れるのかどうかというのも重要な点です。こうした事をもとに,猶予をするのか・どこまで猶予することになるのかを考えていくことになるでしょう。

支払を猶予する場合に確認すべき点・注意すべき点とは?

 支払を猶予するとなると、その後確実に支払いをしてもらえないと意味がないため、相手方の経済状況をしっかりと把握してから、支払い猶予に応じてよいものか検討する必要があります。

 支払い猶予することで、その後より多くの金額を回収できないと意味がないので、その判断材料として、相手方会社の過去の税務申告書の控え(できれば3年分くらい)や今後の事業計画に関する書類、資金繰り予定表の提出を求めましょう。また、資金繰りに関しては、スポンサーがいるのかどうか、金融機関から融資が受けられそうかといった事情を聴きとることが必要です。

 また、実際に支払い猶予をしたところで、確実に支払いを受けられるか定かでないため、分割での支払い合意をするのであれば、保証人や担保を付けてもらう必要があります。不動産や預金口座、売掛の存在などの聞き取りを要します。

 さらに分割払いで合意をするのであれば、必ず公正証書などで書面としておき、仮に支払いを怠ったときは一括での弁済を求められる・担保権の実行ができる・相殺ができるという条項を設ける必要があります。

今後支払いが滞った場合を見据えての準備を

こういった支払い猶予の申し入れがあった場合には、今後の資金繰りに不安面があるため、そういった申し入れがあったときに面談等で事情を聴きとり、もし支払いが滞ったときでも仮差押えや裁判が出来るよう準備をしておくのが無難です。

そのためには、仮差押えするにしても対象となるものについて聞き取る必要があります。不動産や売掛先がどこでどのくらいの金額の取引をしているのかなど確認しておきたいところです。決算期の税務申告書の控えを出してもらえるのであれば、勘定科目内訳明細書がついているので、それが大きな手掛かりになってきます。

また、仮差押えをするのであれば、仮差押えをする必要性(裁判まで待っていると財産がなくなってしまうおそれ)があることを明らかにする書類等の提出が必要です。

それには取引先の資金繰りが分かる資料があればよいですが、請求しても支払いがなかったことが明らかになるよう、相手方に内容証明郵便を送っておくのも一つです。また、取引先に会社の原状や今後の支払い計画等についての書面を作ってもらえれば、あとで仮差押えなどをするときに使える資料となります。

 

 

まとめ

このように支払いを猶予するということは、のちに売掛金等が回収できないリスクをはらんでいるものである以上、慎重に対応する必要があります。

取引先が完全に経営的にも危険な状況になってしまうと、面談はおろか、資産の流出などから一気に回収が困難になりかねません。

できるだけリスクを最小限に抑えられるよう、可能な限り平時のときに取引先から事情を聴きとっておく・必要な資料を提出してもらうよう求め、対応を取っておくことが、御社の経営にとっても重要といえます。

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